色素に酢(酢酸)を混ぜ、胃がん部位を浮き上がらせる検診技術を岡山大学病院光学医療診療部の河原祥朗助教らが発見、日本消化器内視鏡学会の英文誌「Digestive Endoscopy(消化器内視鏡)」に発表した。胃がんの正確な診断や早期発見につながる手法として期待されている。
胃がんの治療は近年、患者の負担が少ない内視鏡手術が発達。患部の根元に薬剤を注入し、がんを持ち上げて切り取る「内視鏡的粘膜下層剥離術」が普及し、内視鏡で切除可能な胃がんは直径約2センチから10センチ以上になった。
一方、通常胃がんの診断には、インジゴカルミンという青色の着色料で胃内部を染め、凸状になった患部を浮き上がらせる手法が用いられる。しかし、胃壁は元々起伏があるためがんと見分けがつきにくく、正診率は約70%という。取り残しは再発につながるため、がん部位を正確に把握するための検出技術が求められていた。
河原助教らは胃の細胞は粘液で胃酸から身を守り、がん細胞は粘液をつくる力を失う点に着目。内視鏡検診時は胃の中が空で胃酸、胃粘液とも分泌されないため、検診時にインジゴカルミン溶液に0・6〜0・8%の酢酸を混ぜることで胃を刺激、粘液を分泌させた。結果、着色料は正常組織の粘液と結合して青く染まって胃がん部分だけが浮き上がり、正診率は90%以上に向上したという。
河原助教らは既に日本の特許を取得し、科学技術振興機構の支援を受けて海外でも特許を出願する予定。河原助教は「特殊な機器が不要で、低コストで正確な診断ができるようになった」と話している。
おお、見事。
からっぽで何も分泌されない胃の状態で検診するのが当たり前のようになっていましたが、酢を用いてわざと分泌させてやることで違いをはっきり際立たせる技術。この手法を導入するのとしないとでは成績も大きく異なりそうです。
ちょっとした違いが大きな前進に。
医学処:胃癌検診の裏側〜異常を拾い上げる能力〜
医学処:がん検診の質は、市によって格差が生じている可能性も
医学処:がんの発見の遅れを医療ミスとして1000万円を払う。