長年、献身的に地域医療にかかわり、功績をあげた医療従事者をたたえる「第37回医療功労賞」(読売新聞社主催、厚生労働省など後援、エーザイ協賛)に、県内から川崎医科大付属川崎病院(岡山市中山下)顧問の小児科医、梶谷喬さん(74)が選ばれた。休日や夜間に子どもが病気やけがをした時、保護者が電話で医師らの助言を受けられる「小児救急医療電話相談」の導入などへの尽力が評価された。
梶谷さんは「人の命を救う手助けができ、ほかの職業とは違う生きがいがあった」と振り返る。子ども時代、小児科の開業医だった父は、往診に走り回っていた。はしかや水ぼうそうでも、一歩間違えば命を落とす時代。父と一緒に晩ご飯を食べることはほとんどなかった。いつの間にか、父と同じ道を選択していた。
どんな病気でも必ず、体に直接触れて診る。てんかんの少女を診療していた時だった。腹部に固い物を感じた。卵巣内に液体がたまる卵巣嚢腫だった。「小児科医でも最近は検査データに頼り、電子カルテばかり見ている医師がいる。しかし、子どもや保護者の顔を見ながらコミュニケーションを取ることは大切。パソコン画面からは、人が無意識に示そうとしているメッセージをくみ取れない」と話す。
小児救急医療電話相談は2004年に始まり、昨年までに延べ約7000人が利用した。開設のきっかけは、軽症でもコンビニエンスストアを利用するような感覚で救急外来に駆け込む<コンビニ受診>が増えたこと。実現すれば、医師の負担も減るため、県小児科医会の会合などで協力を呼びかけた。今は軌道に乗り「電話の向こうでほっとする保護者の顔が見えるよう」と話す。
県内どの市町村でも、住んでいる市町村と同じ負担で予防接種を受けられる「相互乗り入れ制度」の導入にも力を入れた。わが子の先天性疾患などを診てもらっている主治医が住民票のある市町村におらず、困惑する保護者たちから多くの要望が出ていた。手続きの煩雑さに難色を示す関係者もいたが、根強く交渉して実現させた。
今は県北部に常駐する医師が少ないことが課題。「できるだけ質の高い小児医療が確保できるよう、今後もシステム作りに貢献したい」と話し、受賞後も、子どもの健やかな成長を思う強い気持ちに変わりはない。
素晴らしい。おめでとうございます。
小児科の特徴としては、子供の問題もさることながら、お母さんたちの心配というのはあります。子供のことなんで仕方ないことなんですけど、それで外来がパンクしてしまって本当に重症の患者を診れなくなるという問題もありますしね。
電話で相談し、親御さんが安心するというのは最良に近い解決策だと思います。この電話相談もうまく医療の形として全国で導入することができれば。そのための費用や人材確保など必要なことはかなり多いですけどね。
医学処:スポーツ医科学賞に東大名誉教授の宮下充正氏
医学処:第37回医療功労賞に酒井病院の精神科医、酒井保之さん