2009年01月16日

島根大学医学部の地域枠に志の高い医学生が集まる

「地域枠」医学生 高い意欲

 「将来は医師になってこの島に戻ってきます」

 島根大医学部3年の高梨俊洋さん(20)が力強く語ると、拍手が巻き起こった。島根県隠岐の島町で昨年10月に開かれた「地域医療教育シンポジウム」。パネリストの一人、高梨さんは地元出身だ。町で授産施設を運営する斎藤矗一さん(67)は「島に帰ってきてくれれば本当にうれしい。崩壊寸前の離島の医療を支えてほしい」と期待する。

 人口約1万6300人の町では、昨年4月から四つの診療所のうち一つが医師不在になった。町のテコ入れで半年後に確保したものの、今春には別の診療所の医師がいなくなる。中核病院・隠岐病院の産科医は一人で、危険を伴うお産はできない。

 高梨さんは、そんな大変さをよく知るだけに、「一日でも早く貢献したい」と意欲を見せる。県内唯一の医師養成機関である同大医学部が、2006年度から導入した「地域枠」入試の1期生。受験には、へき地の医療機関などでの研修と、出身地の首長の推薦が必要だ。受験できるのは、松江市と出雲市の都市部などを除く県内出身者。導入から3年がたち、学士入学を含めて32人が学んでいる。

 地域枠の学生に将来、へき地の医療機関に勤務する義務はない。だが「思いは伝わっている。受験段階で地域医療の実情の厳しさを見ており、地元からの期待も感じている。地域に貢献したいという意欲はとても高い」と木下芳一医学部長(53)。

 授業内容は一般学生と変わらないが、春夏の長期休暇中に、県内の医療機関で行う医療体験実習への参加を強く勧めている。数日間、来院患者の案内や補助、診察の様子を観察し、勤務医から話を聞く内容で、実際に地域枠の学生の参加率は高い。

 県中央部、大田市出身の岡田祐介さん(20)(2年)は昨夏、隠岐諸島・西ノ島の病院で実習した。「古里が好きだし、古里に貢献したいと改めて思った。実習を通して、勉強の意欲も高まった」

 ただ、地域にとどまらず、高度な医療を学んで能力を高めたいという声があるのも事実だ。「島根で働きたい気持ちは変わらないが、理想の医師像はまだ見えない。他県の先進地域にも行って、様々なことを身につけたい」と3年の山口祐貴さん(21)。

 地域枠の学生を担当する地域医療教育学講座の熊倉俊一教授(48)は「医師が高度な医療技術を身につけることは、地域住民にも大切なことだ」と見る。島根県では、県内のへき地に一定期間勤務した後、大学病院や都市部の基幹病院に一時的に移り、大学での研究に従事できる仕組み作りも始まっている。

 全国的な問題になっている都市部とへき地の医療格差。「医師不足の地域で働く医師を育てるモデルを作るには、10年、20年先を見越す必要がある」(木下医学部長)。息の長い取り組みが続く。



 実際に地域枠で入った学生たちは、入学の段階で地域医療を意識しているという貴重な存在です。

 そんな若い卵たちが、この街で医療を行いたい!と思ってくれるような地域にしていくことも、住人の務めだと思います。双方の協力で、はじめて成り立つものもあるのです。

医学処:医学部全体に、僻地などへの地域勤務枠を設け、授業料を免除する
医学処:弘前大学医学部の県定着枠、10人に増員する
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posted by さじ at 19:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 大学
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