医師はがん患者よりも死への恐怖感を強く抱いていることなどが、東大医学部附属病院のアンケート調査で分かった。同病院緩和ケア診療部の中川恵一部長らが1月14日、記者会見して明らかにした。中川部長は「医師は死を哲学的ではなく、科学的にとらえる傾向があることなどが分かった。医療者はがん患者の生き方に学び、歩み寄る必要がある」と話している。
同病院放射線科、緩和ケア診療部は昨年1月から1年間かけて、「死生観」と「望ましい死」についてアンケート調査を行った。対象は、同病院放射線科の受診歴がある患者312人と同病院の医師106人、看護師366人、無作為抽出した一般の東京都民353人の計1137人。患者は75%が治療済みで、治療中の人は20%だった。
アンケートでは、各質問項目に対し「当てはまる」(「当てはまる」「かなり当てはまる」「やや当てはまる」)と回答した割合を集計した。
「死への恐怖」の項目で、「死がこわい」が当てはまると回答したのは、がん患者51%、一般市民56%に対し、医師は64%。「死は恐ろしい」というよく似た設問もあったが、こちらでも、がん患者、一般市民とも37%に対し、医師は48%と、医師の方が多かった。
「苦痛と死」の項目で、「死は苦しみからの解放」が当てはまると答えたのは、がん患者24%、一般市民18%に対し、医師は16%。「死は痛みからの解放」というよく似た設問もあったが、こちらでも、がん患者35%、一般市民26%に対し、医師は15%と、がん患者の方が多かった。
■「死後の世界」看護師は「ある」、医師は「ない」
「死後の世界に対する見方」の項目では、がん患者と一般市民に比べ、看護師は死後の世界を肯定し、逆に医師は否定する傾向が見られた。「死後の世界はある」の質問では、がん患者28%、一般市民35%に対し、看護師は48%と高く、医師は19%と低かった。「霊やたたりはある」も同様に、がん患者26%、一般市民33%に対し、看護師は44%、医師は21%。「また生まれ変わる」も、がん患者21%、一般市民30%に対し、看護師は44%、医師は18%だった。
中川部長は、がん患者の死生観について「『伝統的死生観』には頼らず、死を思い、死を恐れず、充実した今を生きている、と言えるのではないだろうか」と指摘。医師の死生観については「医師は科学的死生観を持っている。未来を希望する一方で、死を思うことは少なく、死への恐怖も強い」と語った。
医師という職業上、宗教的なことを心の拠り所にするより、医学という学問に専念しているため、死後の世界を想像しにくく、ゆえに死という漠然としたものを怖いと感じるのではないでしょうか。
まあでも医師に限っていえばそれでもいいんじゃないですかね。患者の宗教観を大事にして、患者とともに死を受け入れていくためには、自身が何かに傾倒していては見えてこないものもあるかと思います。
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