長年、地域医療に貢献してきた人に贈られる「第37回医療功労賞」(読売新聞社主催、厚生労働省など後援、エーザイ協賛)に、県内から天草市本町、医療法人啓正会「酒井病院」理事長で精神科医の酒井保之さん(66)が選ばれた。
幼い頃から、父が開業していた精神科の診療所で患者と接する機会が多かった。その中で患者の優しさに触れ、「将来、力になりたい」と精神科医を志した。
診療所は1959年に「酒井病院」となり、酒井さんは75年から同病院に勤務している。「患者と触れ合うことが精神疾患への正しい理解につながる」を信条に、病院を開放するイベントを次々に企画。文化祭や体育祭のほか、夏祭りは約800人の住民でにぎわい、地域のイベントとして定着している。
病院を開放した治療を行うには、病院職員の理解が欠かせない。「患者に何かあったら」と不安を感じる職員に対しては、「責任は私が取る」と根気強く説得した。約20年前には、日常的に住民と交流できるように体育館を建設。入院病棟の鉄格子も撤去した。
こうした取り組みが、地域に開かれた精神科病院を築き上げたとして評価された。受賞について、「地域住民や関係者の支えのおかげ。私一人の力ではない」と謙虚に喜ぶ。
今後は、訪問診療や気軽に悩み相談ができる環境を整え、より地域に根差した病院づくりを進める考え。天草郡市医師会長でもあり、深刻化する医師不足への対応にも力を注ぐ。
酒井さんは「病院を開放することで、精神疾患への偏見をなくし、病気の再発防止にもつながる。これからも患者の立場に立った地域医療に率先して取り組みたい」と意欲を語った。
立派ですねぇ。精神科の病院というのは、地域の住人との確執が出たりするものです。
その地域の人とどう接していくか、という問題を、時間とアイディアで解決してしまった、と。
日本ではいまだに精神科に対する偏見が強く残っています。地域でもいまだに、精神科の病院を設立するのに反対が起こる始末です。病院をよりオープンにするということは、患者のためにもなり、地域のかたがたに理解してもらうきっかけにもなります。
こういう1つの病院をきっかけに、地域全体を変えることができるというのは、すごいことだと思います。
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