自閉症などの広汎性発達障害を抱える幼児に対する治療教育(療育)は、グループで行うとコミュニケーション能力の発達が大きく、個別指導では着替えや片付けといった基本的な生活技能の向上が大きいことが、東大病院こころの発達診療部の調査で明らかになった。
調査は、広汎性発達障害の幼児38人(3〜6歳)とその母親が対象。療育の指導は、同診療部の心理士や言語聴覚士が担当した。
まず6か月間、年齢や発達水準が近い3〜5人がひと組になり、毎月2回、2時間程度、グループでの運動やカードを使った学習などに参加。その後6か月間、2か月に1度、子供の生活技能に応じた課題に取り組んだり、母親の相談に乗ったりする個別指導を1時間半行った。
各6か月間の前後で、能力、技能の伸びを評価。コミュニケーション能力は、▽名前を呼ばれればわかる▽他人の動作をまねる▽誘われれば遊び仲間に入れる――などの項目を調べ、平均的な発達年齢に換算。生活技能は、▽手が汚れたら、きれいにしてほしがる▽着替えができる▽食事の後片付けができる――などの項目を調べ、同様に換算する。
その結果、コミュニケーションに関係する集団参加(集団で遊べるなど)の能力は、グループ療育前後で約6か月分の伸びをみせた。個別指導前後での伸びは約2か月分。個別指導と比較してグループ療育の伸びが3倍だった。生活技能は、グループ療育前後でほとんど変わらなかったのに対し、個別指導後には約5か月分と大幅な伸びを示した。
調査をまとめた同診療部の心理士、蓑和巌さんは「療育の方法により、伸びる能力が異なることがわかった」と分析する。
発達障害の療育は、就学前は発達障害者支援センターなどの公的機関や民間の療育機関などで、学校教育は、知的水準などに応じ特別支援学校や特別支援学級などで行われている。
しかし、年齢や発達水準が同じぐらいの子供をそろえるのは手間がかかって難しく、現状では、グループ療育の方が手薄になりがちだという。効果を検証したデータも乏しく、必ずしも重要性が十分に認識されていない面もある。蓑和さんは「一人ひとりの子供の課題や発達段階を踏まえて、療育の方法を考えるのが望ましい」と話す。
結構差がでるものですねぇ。やりづらいグループ療育をうまく行うことがどうやら課題っぽいですね。
子供のことを中心に考えるのなら、発達水準ごとにデータベース化して大規模な運営を行うのが手っ取り早いんでしょうけれど、それもなかなか難しそうですしねぇ。より向上するように療育していきたいものではありますが。
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