独立行政法人 産業技術総合研究所、脳神経情報研究部門、構造生理研究グループ、研究グループ長 佐藤主税、主任研究員 小椋俊彦と、日本電子株式会社クレアプロジェクトリーダー 須賀三雄、副主任研究員 西山英利は共同で、山形県工業技術センター電子情報技術部 渡部善幸博士の協力のもと、大気圧のまま湿った試料や溶液中の試料を観察できる大気圧走査電子顕微鏡(Atmospheric Scanning Electron Microscope:ASEM)を開発した。
これまでの電子顕微鏡は真空中で試料を観察するため、湿った試料や溶液中の試料を観察することはできなかった。今回、試料を載せる特殊な皿「薄膜ディッシュ」を開発することにより、湿った試料や溶液中の試料を観察することが可能となった。薄膜ディッシュの底部には電子線を透過する耐圧薄膜を備えた窓が開いており、電子線は下方から入射する。薄膜ディッシュの上方は開放されており、光学顕微鏡を配置して同一視野の光学顕微鏡観察と、走査電子顕微鏡(SEM)による10nmレベルの高分解能観察が交互にできる。大気圧のまま湿った試料や溶液中の試料を観察できるため、従来必要であった1〜数日以上におよぶ試料の脱水・乾燥等の前処理は不要となり、飛躍的に観察効率を向上できる。また、乾燥による試料の変形も回避できる。
開放型試料室で電子顕微鏡観察ができるというこの技術は日本独自の技術であり、基礎生物学だけでなく、将来は創薬や湿潤試料を扱う医療現場等にも活用でき、大きな発展が期待される。
こういう技術革命は日本のお家芸ですね。
溶液中の試料をそのまま観察できるようになる、それだけで医療の目覚しい進歩が期待できそうな技術です。