脳の一部を切除する実験的治療を受けて新たな記憶ができなくなったあと、脳機能の研究に積極的に協力し、学習や記憶の仕組みの解明に多大な貢献をした米国の男性患者が82歳で亡くなった。ニューヨーク・タイムズなど米主要メディアが5日、報じた。
この男性はヘンリー・モレゾンさん。米コネティカット州の老人ホームで2日、呼吸不全のため亡くなった。研究論文などではプライバシー保護のために「H・M」という名前で呼ばれ、脳研究分野では世界的に知られていた。
モレゾンさんは9歳のときに自転車とぶつかって頭を強く打ち、原因不明のけいれん発作に悩まされるようになった。18年後の1953年、脳の「海馬」などを切除する手術を受けたあと、昔のことは鮮明に覚えているのに、新たな記憶がほとんどできなくなる「超記憶喪失」になった。
その後認知科学や脳科学の研究に進んで協力。当時はほとんどわかっていなかった脳機能の解明に貢献した。現在、海馬は学習や記憶で重要な役割を担っていることがわかっている。
アメリカ的だなぁという感じですね。
海馬を切除するという実験的手術を行ったのも凄いですが、その後実験に積極的に協力した点もなかなかできることではありません。
しかしおかげで研究が進んだわけですから。ありがたいことです。
そういえば胃のもつ作用を初めて解明したのも、銃が暴発して腹部に穴が開いた人を観察したのが初めてだったとか何とかいう話がありますね。胃が外側に貼り付いて、外からでも胃の仕組みが見えるようになったとか。まぁその人は度重なる実験を苦痛に感じて最後は逃げてしまったらしいですけれど。
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