「大学時代は、今以上に頑固な肩こりに悩まされた」と語るのは、自由形やバタフライを専門としていた元鹿屋体育大水泳部主将の須藤明治・国士舘大准教授(運動処方学)だ。
激しい運動で筋肉に過度の疲労が蓄積したのが原因。逆に、運動不足でも血行不良となって肩こりになる。最近はパソコンを使う時間が増え、長時間同じ姿勢を強いられる。その結果、肩の筋肉が緊張して硬くなり血行不良になっているという。
東京ガス都市生活研究所が7月、インターネットを使って首都圏に暮らす20〜60代の750人に聞いたところ、女性では20〜40代で8割、男性では20〜50代の過半数が肩こりを感じていた。
須藤准教授が自分の肩こりを緩和したいと考え、注目したのがお風呂やプールだ。水中では浮力によって体にかかる負荷が3分の1程度になる。筋肉は弛緩し、血管が広がり血行が促進される。静脈は水圧を受けて心臓に戻る血流量が増え、心臓の負担も軽くなる。
須藤准教授が胸下まで15分間、35度前後のお湯につかった約10人で測定したところ、血圧が10〜30ミリHg下がった。また、肩周辺の血流量が10〜20%増えることも確認できた。
一方、東京ガスは11人を対象に、入浴の仕方(全身浴か半身浴)、湯温(38〜40度)、入浴時間(10〜15分)を変えて、肩の張りを「筋硬度」という指標で測定した。すると、肩こり解消の効果が最も高かった組み合わせは40度、10分間の全身浴で、風呂を出てから少なくとも30分間、肩の筋肉が柔らかくなっていた。入浴が難しければ、ひじから指先までを42度の湯に20分間つけても筋硬度は6%程度下がったという。
須藤准教授は入浴のついでにストレッチを勧める。入浴中の筋活動はリラックスしているため少ない負担で関節を動かすことができ、筋肉や関節の痛みをほとんど感じることがない。さらに、関節の周りを取り巻くように付いている体の内側の筋肉を使うことで関節の可動範囲が広がり、腰痛や肩こりの予防になるという。
◇入浴効果を高めるコツ
<1>脱衣場と風呂場の気温差をなくす
脱衣場で服を脱いだとき、冷たい空気にさらされると血管が収縮し、そのまま入浴すると体に負担がかかる。脱衣場と風呂場の間のドアを開けておく。
<2>入浴前にコップ1杯の水を飲む
入浴中は200〜300ミリリットルの汗をかく。水分が失われると血液が濃縮して流れが悪くなり、血栓ができる恐れがある。
<3>湯温に注意
42度以上の熱い風呂では血圧が上がるので40度以下のややぬるめが好ましい。ストレッチをするときには入浴時間がやや延びるので35度前後に。
静脈と水圧との関係などは、「なぜ温泉が体に良いか」という概念と同じです。
日本人が大好きな風呂をもっと活用していきましょう。ただ長く入ればいいというものではなく、適度な時間だけ入浴するようにしたほうが、体には良いです。