補助人工心臓のバッテリーなどを手に笑顔を見せる南元子さん(26日午前、大阪府吹田市の大阪大病院で)=里見研撮影 重症の心臓病で、体内埋め込み型の補助人工心臓を装着した高齢女性が26日、歩行できるまで回復し、入院先の大阪大病院で記者会見した。
補助人工心臓を移植までのつなぎではなく、永久使用目的で装着するのは国内初。心臓移植の適応外の患者の在宅治療などに道を開く医療として注目される。
退院するのは、奈良県の主婦南元子さん(74)。昨年7月に心筋梗塞の後遺症で、血液が逆流して心不全を起こすなど重い虚血性心筋症になった。ほとんどベッドに寝たきりの状態だった。
国内の心臓移植の適応基準は60歳未満とされているため、南さんは国内で治験中の補助人工心臓(ジャービック2000)の装着を決めた。今年8月、スクリューが回転して血液の流れを補強する親指大のポンプ式の人工心臓を左心室に埋め込む手術を受けた。現在は、500メートルほど歩けるまで回復した。
記者会見した南さんは「半分死んだ状態から助けてもらい世の中が開けた感じで、希望が出てきた。退院したら演奏会や演劇にも行きたい」と喜びを語った。
補助人工心臓を装着すれば機能回復可能な患者は日本でも年間1000人程度いると推定される。澤芳樹教授(心臓血管外科)は「移植だけに頼らない治療が世界的に必要とされている。ほとんど治療法のなかった高齢患者に新しい可能性が期待できる」と話している。
補助人工心臓は、装着することで心臓の負担が軽くなり、心機能そのものが回復する場合もある。南さんが装着した人工心臓を埋め込んだ例は欧州を中心に数百例ある。
おおお。これは凄い。
確かに移植によって助かる人はいますが、高齢者であったりすると、移植の適応から外れてしまうんですよね。そうすると高齢者は寝たきりにならなきゃいけないのか、ということにも。ですが人工心臓をつけることで歩けるようになるまで改善するとは。凄いですねぇ。
日本は移植が進んでいませんし、人工心臓の技術がより発達してくれればいいと思うのですが・・・。残念ながらお金が足りていない。小児用の補助人工心臓とかもっと発達してくれればいいと思うんですけどね。移植数を増やせないのならば、そちらの方面に資金を与えても良いような・・・。変な道路だとか公共施設だとか、何の意味も成さない天下り先の委員会とかなくして。
参考:補助人工心臓
全置換型人工心臓
全置換型人工心臓は、空気圧駆動型のジャービック7が1980年代にアメリカで臨床応用されたが脳卒中などの合併症で使われなくなった。最近、電磁駆動のアビオコアの臨床も行われたが現在は中断している。 症例数から計算すると、補助人工心臓だけで救命できる症例数のほうが多く、全置換型人工心臓は開発しても採算が取れないと言う試算もあり、現在地球上には、開発プロジェクト自体があまりないのが現状である。その中において日本は、東京大学などの研究チームは科学研究費を元に全置換型を目指して開発を進めている。
補助人工心臓
補助人工心臓は、心臓の働きの一部を助けるもので、空気圧駆動型のものでは、日本ゼオンと東洋紡の補助人工心臓が臨床応用されている。心臓移植までの患者の生命を維持するためにはどうしても必要な人工臓器である。 日本では、世界に先駆けて、空気圧駆動型の補助人工心臓の製品化が許可されたこともあったが、保険収載の認可が圧倒的に遅れ、埋め込み型の補助心臓への企業のアプローチに対し、行政が結果として、認可審査の世界的に見ても非常識なまでの遅滞を行ってきた。これにより、厚生省の認可が、日本の補助人工心臓開発を叩き潰したという定説が、現在日本人工臓器学会の一大問題になっている。
埋め込み型の補助人工心臓も開発されており、2006年、ロータリーポンプを応用したサンメディカルのエバハートの臨床が開始され良好な成績を収めている。エバハートはモックの耐久性試験や慢性動物実験で良好な成績を収め、特に動物実験では世界記録レベルの耐久性を持ち、欧米であれば、既に臨床で市販されるだけのデータを持っているが、日本では認可が遅れている。
同じくロータリーポンプを応用したテルモのデュラハートは、欧米でのみ、臨床が行われている。
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