肺がん遺伝子が作る酵素の働きを抑える化合物で、マウスの肺がんを消失させることに、自治医科大などの研究チームが成功した。肺がんの新たな治療薬として期待される。25日、米科学アカデミー紀要(電子版)に掲載された。
チームは昨年、肺がん男性患者から、がん化にかかわる遺伝子「EML4−ALK」を発見。肺がん患者の約5%がこの遺伝子を持っていることが分かっている。
この遺伝子が肺がんを起こすことを確かめるため、肺だけで遺伝子が働くように操作したマウスを作ったところ、生後1〜2週間で両肺にがんができた。
さらに、この遺伝子が作る酵素の働きを阻害する化合物を作り、肺がんマウス10匹に1日1回経口投与した。投与開始から25日ですべてのマウスのがんが消失した。投与しなかった肺がんマウス10匹は、がんが両肺に広がり、9匹が1カ月以内に死んだ。
肺がんの治療薬としては「イレッサ」があるが、副作用がある上、効く患者が限られる。この化合物は別のタイプの肺がんへの効果が期待できるといい、既に複数の製薬会社が治療薬開発に着手している。間野博行・自治医科大教授は「投与したマウスの臓器や血液を調べたが、副作用はみられない」と話している。
さすがに副作用がない、ということはないのでしょうけれど、イレッサのように重篤な副作用が出なければ大きな治療法になりそうです。
遺伝子の作る酵素を選択的にブロックする化合物ということは、これも分子標的薬のくくりになるのでしょうか。分子標的治療薬は、特定の分子を狙い撃ちして、腫瘍が増殖するシグナルを抑制したりすることのできる薬です。慢性骨髄性白血病に対するイマチニブ(グリベック)などが有名ですが、分子標的治療薬は劇的な効果をもたらすものが多いので、この薬も期待できそうですね。
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