2008年09月12日

ヘルパーT細胞とキラーT細胞に分かれるメカニズムを解明

 独立行政法人理化学研究所は、免疫反応の司令塔として働くヘルパーT細胞が胸腺内で分化誘導される仕組みを解明しました。ヘルパーT細胞への分化誘導を促進するマスター転写因子のTh-POKタンパク質が、サイレンサーに直接結合してその働きを抑制することでTh-POK遺伝子の発現を増幅する分子機構を明らかにしました。

 これは、免疫・アレルギー科学総合研究センター、免疫転写制御研究チームの谷内一郎チームリーダーらによる研究成果です。

 免疫細胞であるT細胞は、異なる機能を持つヘルパーT細胞とキラーT細胞に大きく分類できます。ヘルパーT細胞とキラーT細胞は、胸腔内の胸腺と呼ばれる臓器で共通の前駆細胞から作られます。

 これまで、前駆細胞がキラーT細胞にならずにヘルパーT細胞に分化するには、Th-POKタンパク質の発現が必須であり、CD4という糖タンパク質が細胞表面上に発現し続けることが重要であることがわかっていました。

 しかし、ヘルパーT細胞への分化過程で、どのようにしてこの2つのタンパク質の発現が調節されているのか、よくわかっていませんでした。

 遺伝子の発現を調節するDNA配列には、遺伝子発現を促進するエンハンサーと、抑制するサイレンサーがあります。研究チームは、遺伝子操作を用いてTh-POK遺伝子のエンハンサーを欠損することでTh-POK遺伝子の発現が上昇しないマウスを作製しました。

 このマウスでは、いったんヘルパーT細胞になりかかった細胞が、キラーT細胞になることを発見しました。さらに、Th-POK遺伝子の発現を増幅し、上昇させるメカニズムを調べたところ、Th-POKタンパク質はCD4遺伝子とTh-POK遺伝子のサイレンサーに直接結合することでサイレンサーが働かないように作用し、CD4やTh-POK遺伝子の発現を維持してヘルパーT細胞へと分化することを突き止めました。

 この発見により、Th-POKタンパク質のサイレンサーに対する抑制作用が正のフィードバックとなり、Th-POK遺伝子の発現が増幅され、維持される機構が明らかとなりました。

 この成果は、細胞分化を誘導する信号が増幅されていく仕組みを解明したものです。ヘルパーT細胞の分化制御の理解は、がん、臓器移植における拒絶反応、アレルギーや自己免疫疾患などを人為的に制御する上でも大変重要であり、人工的にヘルパーT細胞を誘導する技術の開発により、再生医療への応用も期待されます。



 免疫系統を自在に操れるようになった日には、世界の医療が劇的に変わるかもしれません。自己免疫疾患がなくなり、臓器移植も容易になるという夢のような世界。

 しかし難しいんですよねぇ、これが。免疫抑制剤が開発されてから、移植もやりやすくなりはしましたが、副作用が強烈というデメリットもありますし。

 免疫システムが解明される日まで、少しずつ進んでいってほしいと思います。


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posted by さじ at 01:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 生理
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