食料価格高騰が、福祉や医療の現場も直撃している。コスト増を施設の入所者や入院患者の負担に上乗せするのは制度上難しく、献立のやりくりでしのぐのも限界にきている。「国が決めている食費の額を引き上げないと、やっていけない」との声も上がっている。
東京都羽村市の特別養護老人ホーム「羽村園」。5月ごろから揚げ物を減らし、いため物や焼き物を増やした。「小麦粉も油もガス代も値上げ。なるべくそれらを使わず調理時間を短くするしかない」と経営する社会福祉法人の幹部(46)は話す。今は何とか食費を前年並みに抑えているが、気がかりは調味料値上げの動き。「食事が楽しみという入所者は多く、味付けは変えられない。保存期間が長い調味料は買い置きが必要かも」
今年7月の土用の丑の日。都内のある特別養護老人ホームの食卓には、「ウナギちらし」が並んだ。
昨年はかば焼きだった。だが今年は高騰でやりくりが難しく、サイズが小さいウナギを刻んでご飯の上に散らして出した。栄養士の女性は「何だか申し訳なかった」と声を落とす。月に数回は出していた果物も、最近は月1回ペースだ。
厚生労働省によると、介護保険施設の利用者1人当たりの食費は1日1380円と定められている。収入が比較的多い利用者は全額自己負担のため上乗せすることができるが、それ以外の人は、自己負担の限度額と保険からの給付額が決まっており、食費の上乗せは事実上できない。同省老健局には「今の金額ではやっていけない」「施設側の持ち出しで値上げ分を補っている」との声が全国の施設から届いており、担当者は「このまま高騰が続くなら、額の引き上げ検討が必要かも」と話す。
事情は病院も同じ。東京都立川市の立川病院では、中国製冷凍ギョーザ事件などを受け、野菜を安価な中国産から国内産などに切り替えていたところに高騰が襲った。肉も魚も仕入れ額は上がっており、鳥肉は昨年同時期の1・35倍、タラはほぼ倍だ。「栄養バランスが重要な病院の食事は、献立を大きく変えられない。小麦も高いままだが、めん類は食欲のない人にも好まれるので簡単に減らせない」と谷島義治栄養科長(58)は頭を抱える。
栄養管理面などで一定要件を満たした病院に入る患者1人あたりの食事療養費は1食640円で、健康保険と患者の自己負担で賄っている。同省によると1日あたりの金額は10年以上前からほぼ変わっていない。谷島科長は「あまりに物価を反映していない。このまま高騰が続けば経営問題になる。国は引き上げを検討してほしい」と話した。
病院の栄養士さんも、苦悩するご時世か。
病院の食事ってマズイマズイって言われてますけど、最近はそんなでもないような気がします。まぁ健常者の外食のようなボリューム、味付けにはなりませんけれど、完璧な栄養、理想的なカロリーですからね。それをできるだけ美味しく、しかも低コストで、更に飲んでいる薬や病気によって制限が加わる、というかなりシビアな条件の下、毎日の献立が決められるわけです。
食欲がある患者さんにとっては、食事が何よりの楽しみだったりしますし、何とかしたいところですが。
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