生物の遺伝情報が集まる染色体の一部を操作し、異常な構造の染色体を人為的に作り出すことに、久留米大学分子生命科学研究所(福岡県久留米市)の高橋考太教授(分子生物学)の研究チームが成功し、22日付の米科学誌サイエンスに発表した。染色体異常が一因とされる、がんや不妊の原因解明に役立つ可能性があるという。
通常、染色体は細胞分裂の際に均等に分かれ、同じ性質の新しい細胞を形成する。均等に分かつ役割を担うのが染色体の一部「セントロメア」で、これが機能不全を起こすと分裂後の細胞のほとんどが死滅する。しかし数千分の一程度の確率で生き残った場合、染色体異常を起こした異型の細胞が形成されるという。
研究チームは、人間と似た染色体構造をもつ単細胞生物「分裂酵母」を用い、人為的にセントロメアを破壊、染色体異常がある細胞を自在に作り出す方法を確立した。高橋教授は「これにより染色体異常に伴う、がんや不妊の原因メカニズムを遺伝子レベルで解明できる可能性が出てきた」としている。
まず異常な細胞を人為的に作り出すことから、メカニズムの解明が始まるわけですな。遺伝子操作が可能になった分、治療法の確立も以前ほど「絶望視』されていないかもしれません。まぁ臨床応用するにはまだまだ乗り越えなければいけない壁はあるでしょうけれども。
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