「新型万能細胞(iPS細胞)を使った再生医療はずいぶん先」――京都大は山中伸弥教授が世界に先駆けて開発したiPS細胞の研究について、患者らの過剰な期待や誤解を解消するため、専属の広報スタッフを配置することを決めた。
昨年11月、人のiPS細胞作製成功の発表以来、患者や家族からの問い合わせが山中教授のもとに数百件寄せられている。iPS細胞を利用した再生医療がすぐにでも受けられると誤解している人も少なくない。だが、iPS細胞は研究途上で、安全性などの観点から、医療応用の見通しは立っていない。
京大では「国費を使った研究で、社会への説明責任がある」として、iPS細胞研究の広報戦略を練るスタッフを全国から1人公募。今年10月以降、広報誌を年4回作成したりして、研究成果を正しく普及させる。
2004年の国立大の法人化以降、広報機能を強化する国立大が増えているが、特定の研究分野に限った体制整備は極めて珍しい。
iPS細胞は、可能性を秘めた研究です。
数十年後には、どんな疾患でも治してしまうのではないか?特に神経の欠落や内分泌異常など、iPS細胞でその部位を再生してやれば治るんじゃないのか?といった期待があります。
今現在病気で苦しんでいる患者さんやそのご家族が、その研究に飛びつきたい気持ちは大変良く分かります。
しかし医療は、確実性を重視されるのです。治るかもしれない、というだけで、段階を踏まずにバンバン臨床応用してしまえば、失敗もその分出るでしょうし、場合によっては取り返しのつかないことになるかもしれません。
昔だったら、試しにやったかもしれません。しかし今は倫理を重視するのです。
もし私が、現在の医療では治療不可能な疾患を患って、iPS細胞を応用すれば治る可能性が数パーセントあるとします。正直、私だったら、倫理なんてクソ食らえ、先生にご迷惑は絶対におかけしませんから、どうぞ私で実験して下さい、と申し出たくなります。
しかし、いくら申し出ても、出来ないのです。人体実験は、絶対にしてはいけないのです。(一部例外的な人体実験として、医者自らやる、というものがあります。例えば心臓カテーテルの技術を確立したヴェルナーは、当時の医学会が全く取り合わなかったために、自分自身の心臓カテーテルを入れて、安全・確実であることを証明しました。後にノーベル賞を受賞しています。種痘によって天然痘の予防に成功したジェンナーは、「自分の息子に牛痘を植え付けた」ことで大変有名ですが、実際には自分の子供ではなく、自分の家で働いていたジェームズ・フィップスという8歳の少年に植え付けました。こちらはまさしく人体実験ですので、評価はできません)
待ちましょう。山中教授と全世界のiPS細胞研究者が、誰にも煩わされることなく研究に専念し、動物実験を終えて、万全の状態で臨床研究を行うその時まで。
関連
医学処:iPS細胞を用いた網膜再生にはまだまだ時間が必要です。
医学処:iPS細胞の品質の安定化に成功したアメリカMIT