北大や北海道曹達(苫小牧)などでつくる研究グループ(代表・井上農夫男北大大学院歯学研究科教授)は、カニに含まれる物質を使い、歯の周囲の骨(歯槽骨)を再生する技術を開発した。歯周病でかみこなす能力の落ちた患者や歯以外の骨のがん治療にも有効で、十八日に北大で開かれるシンポジウムで発表する。
グループリーダーの柏崎晴彦・同助教によると、道産カニの甲羅から抽出したキトサンと、人間の骨の主成分ハイドロキシアパタイト結晶を合成。この物質に骨の再生を促すタンパク質を加えて三十匹のラットの皮膚に与えたところ、四週間後、皮膚に骨が形成されたという。
歯周病などで歯を失うと歯槽骨が細くなる。放置すると義歯やインプラントを埋め込むことが難しくなり、かみこなす能力も低下する。治療は自分の他の部位の骨を、歯槽骨に埋め込み再生を促す自家骨移植しかない。同グループの技術を使えば、骨移植が不要になるうえ、合成した物質には細胞の働きを制御する機能もあるため、がん細胞を抑える効果も期待できる。
柏崎助教は「抗がん剤と組み合わせることで、骨にできたがんを攻撃し、再発を防いで骨を再生させる治療技術につながる。二〇一〇年をメドに実用化を目指したい」と話している。
思わぬところに、ヒントが転がっているものですね。
まさかカニの甲羅とは。目の付け所が北海道。
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