舛添要一・厚生労働大臣は7月10日、自治医科大学を視察し、「総合医」を創設するとともに、学会等による認定医制の導入に前向きな姿勢を示した。
これは自治医大学長の高久史麿氏の発言を受けたものだ。高久氏は、1次医療機関は総合医(総合的な診療能力を持ったかかりつけ医)、2次医療機関には総合医よりは専門性が高いが、専門医よりは幅広く診る医師、3次医療は大学病院などの専門医が担うという3層構造で医療を担うべきとした。
その上で、日本医師会、日本プライマリ・ケア学会、日本家庭医療学会、日本総合診療医学会の4団体が共同で、「かかりつけ医〔総合(診療)医〕認定制」を創設すべきだとした。その際、現在は専門医資格しか広告できないが、この認定医も広告を可能にするよう求めた。
高久氏は、「約20年前、家庭医構想が打ち出されたときには、“人頭割り”につながる懸念から、日医が反対して頓挫した。あのときに、家庭医を創設していれば、今のような患者が病院に殺到して病院がパンクするような状況は生じていなかった」と述べ、患者を総合的に診る医師の必要性を強調。
昨春、厚生労働省が「総合科」「総合科医」構想を打ち出したときにも、同様に日医などが反対した経緯がある。しかし、この時、反対意見が多かったのは、「学会ではなく国が審査・認定する」といった形で検討されていると見られていたため。これに対して、高久氏の提言は、あくまで学会が主導で進める「総合医」であり、その基準なども学会が作るべきという点で異なる。
高久氏は、自らが座長を務めた日本医師会の第4次学術推進会報告「かかりつけ医の質の担保について―日医認定かかりつけ医(仮)の検討―」を踏まえ、「日医の生涯教育を総合医教育に改めて、今、開業している人にインターネットなども活用して勉強してもらい、認定医を取得できるようにしてはどうか」と提案。後期研修で学んだ医師も、総合医として認定すべきとした。
これからの日本の医療がどうなっていくかというと、まず総合診療科、総合科、総合診療内科、といった肩書の医師が増えていくだろうということです。
彼らは今まででいうところの「開業している内科の医者」のような感じなんですが、特徴的なのは「患者を診る際に必要な能力を全て兼ね備えるための訓練を積んでいる」という点でしょうか。
要するに今までの分け方だと、内科にしても呼吸器内科や消化器内科などがあって、それぞれ大学病院や総合病院で修行を積んで、でも開業したくなって内科で開業する、というわけです。勿論認定医を持っていても消化器とか呼吸器とかだけ。それでも、自分の得意分野以外の疾患も診る。
しかし「家庭医療」の凄い所は、最初から科ごとの専門性を要求しておらず、ほぼ全ての疾患を担えるだけの知識と能力と兼ね備え、どんな人にでも対応できるわけです。まさしく全身を診れる医者。「ジェネラリスト」のスペシャリストです。
彼らが地域ごとに配属され、不調を訴える患者を診る。自分たちの手に負えないような専門性の高い疾患は、大学病院や総合病院の「専門家」に送る。これが理想的な医療の形の1つともいえるでしょう。
まあはっきり言ってしまえば、将来開業するんだったら、家庭医の資格を取るべく修行を積んだほうがいいだろうということです。1つの科に絞って、専門性の高い医療を行いたいなら、それはそれでいいんですが、年とってから開業しようとしても、その頃には「家庭医」のほうが圧倒的有利になっていると思いますから。
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