2012年11月26日

全国医師ユニオン実施アンケート「モンスター患者への不満」が多い。

「過労死する」と悲鳴 モンスター患者に不満も

 「このままでは過労死する」。全国医師ユニオンなどが実施したアンケートには、医師の悲痛な声が寄せられた。一方で、軽症なのに時間外に来院する「コンビニ受診」や、理不尽な要求をする「モンスター患者」への不満もあった。

 アンケートには「ストレスで寿命が縮まっています。自殺してもおかしくない状況」(岩手、30代男性)、「このままでは過労死する」(香川、20代男性)、「友人の研修医が過労で鬱病に」(東京、20代男性)といった回答も。「当直明けは必ず休める体制を」などと改善を求める声が相次いだ。

 また、「深夜のコンビニ受診、暴言など患者側の態度を見ていると、何のために自分の健康を犠牲にしてまで勤務するのかとむなしさを覚える」「コンビニ受診やモンスター患者が多く、ストレスが大いに増大している」との回答もあった。



 昔と違って、医師にみてもらうのが当たり前というか、「どんな時間でも診るもんだ」と思ってる人が多いのか、「昼に来いよ」っていう人も夜間に来て、待たされることに激昂することもあります。心配なのは分かりますが、昼間にガマンして、夜に治らんから来るってのが、妙ですよね。正直言って夜間に受診するメリットなんてほとんどないんですけれども。専門医に十分な検査をしてもらうことが出来ない訳ですから。

 こういうことになってしまったのは、数十年前より始まった、マスコミの医者バッシングによる影響も少なからずあるような気がしますけれども。

 最高の医療を提供するためには医師にも適切な休息が必要なんですよね、そのことを忘れないでほしいです。
posted by さじ at 02:22 | Comment(0) | 救急

ビールのホップに含まれるキサントフモールに動脈硬化を予防する効果

ビール原料「ホップ」の成分に動脈硬化予防効果 - サッポロと北大が確認

 サッポロビールと北海道大学(北大)は11月19日、ビール原料のホップに含まれる「キサントフモール」に、動脈硬化予防効果があることを発見したと発表した。

 同成果は同社と同大大学院保健科学研究院の千葉仁志教授、同医学研究科の伊敏助教が、「さっぽろバイオクラスター"BIO-S"」を通じて行った共同研究による成果。詳細は米科学誌「PLoS ONE」電子版に掲載された。

 近年、総コレステロールの低下だけでなく、「HDLコレステロール(善玉コレステロール)」の上昇が動脈硬化を防ぎ、さらには心筋梗塞や脳卒中の危険性を低くすることが報告されるようになってきた。研究分野においては、「Cholesteryl Ester Transfer Protein(CETP:コレステリルエステル転送タンパク質)」と呼ばれるタンパク質の活性が阻害されると、HDLコレステロールが上昇することが知られており、そうしたCETP阻害薬の開発が進められている。

 また、こうした作用による動脈硬化予防に効果がある成分を持つ食品成分や天然物は、これまで報告されていなかった。今回の研究で、初めて天然物として、ビール原料のホップに含まれる「キサントフモール」が、CETP活性を阻害することにより、HDLコレステロールを上昇させる効果があることが発見された。



 ある意味ご当地モノなのか。酒関連は「飲み過ぎなければ良い」んですけどね、飲む言い訳にならなければ。
posted by さじ at 02:17 | Comment(0) | 循環

繊毛の長さを決定するたんぱく質KIF19Aを東大が発見する。

水頭症や不妊症リスクの予測/予防に期待 - 東大、新たなタンパク質を発見

 東京大学(東大)は、モーター分子としてタンパク質「KIF19A」を新たに発見し、それが繊毛を切りそろえて長さを決めるハサミの役割をすることを発見したと発表した。

 同成果は同大 大学院医学系研究科細胞生物学・解剖学講座/分子構造・動態学講座の廣川信隆 特任教授、同 丹羽伸介 特任研究員らの研究グループによるもので、詳細は米国科学雑誌「Developmental Cell」電子版に掲載された。

 哺乳類の卵管や脳室などの細胞には、繊毛と呼ばれる長さ5〜10μmほどの微細な動く毛が存在しており、例えば卵管では卵管上皮細胞の繊毛の運動により卵子が卵巣から子宮に輸送され、脳室では脳室上皮細胞の繊毛の運動により脳脊髄液の循環が起こり、脳圧が一定に保たれている。こうした効果から、もし繊毛に異常が起これば卵管閉塞による不妊症、脳圧の上昇による水頭症などのさまざまな病気が生じることとなる

 動く繊毛が卵管内部で卵子を輸送したり、脳脊髄液の流れを作り出したりするためには、長すぎても短すぎても繊毛の運動には支障が出て、不妊症や水頭症といった病気が起こることから、繊毛の長さが適切に保たれている必要がある。

 そのため、哺乳類では何らかのメカニズムによって繊毛の長さが一定に保たれていることが50年以上前から予測されていたが、その実体はこれまで不明のままであった。

 今回、研究グループは、繊毛の先端にKIF19Aが集積することを発見し、そのタンパク質に着目して機能の解析を行った。繊毛の内部は微小管と呼ばれる微小なチューブが束になって構成されていることが知られているが、試験管内で精製したKIF19Aとこの微小管を混ぜたところ、微小管が先端から徐々に壊されることが確認された。

 これらの結果からKIF19Aは繊毛の先端を切りそろえるハサミの役割をしているとの結論が得られたほか、KIF19Aノックアウトマウスの長すぎる繊毛には運動に支障が生じ、卵管閉塞による女性不妊や水頭症といったヒトの病気とよく似た症状が起こっていることも確認された。

 卵管閉塞による女性不妊や水頭症の正確な原因は不明なことが多いが、今回の発見はこれらの病気の正確な遺伝子診断や遺伝子治療、リスクの予測や予防などに役立つ可能性があり、将来的には水頭症や不妊症のリスクの予測や予防、正確な遺伝子診断や遺伝子治療に結びつく可能性があると研究グループではコメントしている。



 繊毛の異常は結構ありますね。記事中でだいたい書かれているように、遺伝性の疾患が多いです。これ以外には、肺でも、繊毛の先天的な異常がありますね。ミクロレベルでのこういったものが治療出来ると、難治だった疾患にも光がみえるでしょう。
posted by さじ at 02:09 | Comment(0) | 生理

2時間ゲームをする若者は、外科医と同じスキルを養える

ゲーマーは外科医と同レベル!米で驚愕の研究結果

 長時間ジョイスティックを操ってゲームをすることで培われる優れた手と目の連係スキルは、世界最先端のロボット手術ツールを使いこなすのに必要な能力と同じであることが、テキサス大学医学部(UTMB)の最新研究によって明らかになった。

 研究論文の主執筆者であるサミ・キリクは、UTMBで低侵襲性婦人科学を教える准教授だ。同氏は、医師の学会に出席したときに、自分の息子がロボット手術シミュレーターを簡単に使いこなすのを目撃して、この研究を思い立ったという。「最近はロボット手術が普及し始めているが、ほとんどの医師はその訓練を受けていない。どのように訓練するのがよいか検討する必要がある」

 テストに参加した高校生は、TVゲームを1日平均2時間プレイしており、大学生の中には1日4時間という人もいた。彼らの手術スキルはUTMBの研修医たちと同レベルであり、場合によっては上回るケースもあった。ただし、ロボットを使わない腹腔鏡手術のシミュレーションでは、当然ながらUTMBの医師チームに軍配が上がり、ここでは医師が面目を保った。

「学生たちは、ハイテクな世界に浸ることで、視覚空間経験や、手と目の連係を高めている。われわれはこの世代を訓練する方法を考え直すべきだと思われる」とキリク氏は語る。

 なお、大学生たちは高校生より2時間長くゲームをプレイしていたが、ロボット外科手術のシミュレーターの操作スキルに関して、この時間差は特に大学生に有利な結果をもたらさなかったようだという。

 若いゲーマーたちは、ゲームによって役に立つ(少なくともロボット手術には役に立つ)能力を養っていると主張できるかもしれないが、2時間を超えるゲームプレイについては、そうした主張もできないのかもしれない。



 使うもの同じですもんね。テレビゲームに慣れていると、あの画面をみての操作も案外楽に出来るようになるもんです。私もシミュレーターでやったことありますが、少しの練習で感覚つかめたので、外科医を志望する若者はやっておいて損はないかも。
posted by さじ at 02:03 | Comment(0) | 移植

ダチョウの長い首から人工血管を開発することに成功

国循がダチョウから人工血管開発 細くて長い、世界初

 ダチョウの長い首の血管を加工し、穴の直径約2ミリ、長さ約30センチの血管を作ることに成功したと国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)が21日、発表した。

 この人工血管をミニブタに移植し、詰まることなく使用できることを確かめた。センターの山岡哲二生体医工学部長は「ヒトの治療に使えるような細くて長い人工血管の開発は世界初。3年後の臨床応用を目指したい」としている。

 山岡部長らは、食用ダチョウの首の動脈に、1万気圧の高い圧力をかけ細胞や雑菌を除去し、コラーゲンなどでできた管を作った。管の穴の表面には血管の細胞がくっつく物質を付けた。



 目のつけどころがシャープですね。誰がダチョウに目をつけたんだろうか。
posted by さじ at 01:59 | Comment(0) | 循環

生活保護受給者の夜間外来受診率が高いらしい。

内科医「生保患者のおかげで、辞めたい」

 厚生労働省がまとめたところによると、生活保護受給者数は213万人(8月末時点)となった。医療費でも補助を受けることができるために、医療現場では勘違いした生活保護患者の存在を聞くことがある。そうした様子を現場の医師は辟易としているが、はてなブログにも医師と名乗る人物が「辞めたい」という心情を吐露している。

 ブログによると、「生保患者診たくないんで、内科医辞める」「問題は彼らの受診行動。病院でみる生保患者の素行は、とにかく目に余る」と本音から書き出し、かなり手を持て余していることはわかる。

 「生保患者は時間外に来る」として、先月の3連休時の夜間の来院割合が36分の5、29分の2、25分の3だったという。その市の生保受給者は人口の1.5%程度だが、夜間の来院数が多いのがわかる。また、時間外に救急車で来る割合も高いそうだ。

 また、来院回数も週に3回などはふつうで、1日に2回ということもあるという。1日に複数施設をハシゴする場合もあるそうだ。 

 「最近、悪質生保の受診行動を福祉事務所や民生委員に通報すべく、資料集めを開始したところ」

 ゆかしメディアでも過去に、生活保護でホテルと化した病院として取り上げたことがある。

 今後も現場の医師からは、様々な告発、意見が出てくるだろう。



 まぁ、一部だとは思うんですが、人間ですからね、もし皆さんが、「医療費完全無料」だとしたら、多分普通よりも頻回に、医療機関を利用するのではないでしょうかね。生活保護はそういうところがあります。無意識のうちに甘えてしまうのかもしれません。やはり完全無料を謳い続けることは、全体としてはマイナス側面が多いような気はします。勿論、貧困が理由で受診できない、ということはあってはならないことですが。
posted by さじ at 01:57 | Comment(0) | 救急

ニプロ、iPS細胞の大量培養装置を開発する。

iPS細胞などの大量培養装置開発 ニプロや京大

 ニプロや京都大学などは22日、様々な細胞に成長するiPS細胞などを再生医療向けに培養する装置を開発したと発表した。特殊な容器を使い他の培養装置に比べ大きさを3分の1とし大量培養しやすくした。密閉した中で安全性を保ち移植治療に必要な分だけ細胞を増やす。再生医療を手掛ける医療機関や大学の利用をにらみ2年後の実用化を目指す。

 再生医療ではウイルスや菌への感染を防ぐため、安全性の高い特殊な無菌室で細胞を作る。設備費に1億円以上かかることが普及への課題となっている。ニプロは特殊な無菌室でなくても利用できるように安全性を高める改良をして実用化する考え。価格は2000万円程度。年5億円の売り上げを目指す。国内外の医療機関や研究機関の需要を見込む。

 将来の再生医療を見込んで、細胞培養装置を手がける企業は増えている。川崎重工業やパナソニック子会社のパナソニックヘルスケア、カネカなども販売している。再生医療関連市場は2020年に1兆円超になるといわれている。



 実用したらドル箱市場なのは間違いないですからね。これ成功したら、もうこりゃ数十年は安泰でしょう。軌道に乗るまでが大変ですが、頑張ってほしいです。
posted by さじ at 01:53 | Comment(1) | 移植

歯科医師国家試験に、歯からの身元鑑定能力を出題へ。

「歯から身元」鑑定力強化、歯科医試験に出題へ

 厚生労働省は2014年の歯科医師国家試験から、身元確認に関する問題を出題対象にする方針を固めた。

 来年4月には身元確認への歯科医の関与を明文化した死因・身元調査法も施行されるため、日本歯科医師会は、年1回の専門研修の回数を増やし、全国的に実施する。

 歯科医による鑑定(歯牙鑑定)は、遺体の歯科所見を専用の用紙に記録し、生前のカルテなどと照合する作業。形状や治療痕などを1本ずつ、写真やレントゲンも用いて比較すれば、高い精度で身元を特定できる。

 東日本大震災では、今年8月末までに身元が特定された1万5576人(全遺体の98・6%)のうち、1割近い1213人は歯牙鑑定が決め手となった。歯牙鑑定などを行わず、遺族による外見での確認に頼ったケースでは、少なくとも13件の取り違えが判明している。



 東日本大震災では、この歯から鑑定するスキルが大活躍でした。歯科医の知られざる一面の1つです。医師が法医学の知識が必須とされているように、歯科医の鑑定技術も必須とされる時代。
posted by さじ at 01:49 | Comment(1) | 歯科

持ち運び可能なDNA解析装置をNECが開発する。

DNAを短時間で解析 NEC、犯罪捜査に活用

 NECは22日、持ち運びができ短時間でDNAを解析できる装置を開発したと発表した。警察の捜査ではDNAなどを利用した科学的手法の重要性が高まっており、迅速な事件解決につながると期待されている。

 警察庁の付属機関の科学警察研究所と共同で性能評価をしており、2014年度の商品化を目指している。

 警察では現在、口の粘膜や血痕から採取したDNAを解析する場合、専門の研究所に試料を持ち込み、2〜3日かけて調べている。NECの装置はスーツケースのような形で、重さは約30キロ。犯罪の現場に持ち込み、その場でDNAを抽出して解析できる。



 ここまで簡易的に出来るようになったとは。迅速な捜査に役立ちそう。

 なんか本格的に悪い事ができない時代になってきましたねー。犯罪が少しでも減りゃいいんですが。
posted by さじ at 01:46 | Comment(0) | 皮膚

日本の岩国市で漢方薬の甘草を栽培する。

漢方薬カンゾウ栽培 岩国

 岩国市の山間部で、漢方薬などの原料となるカンゾウの栽培研究が進められている。漢方薬だけでなく甘味料や化粧品など用途は広いが、本来は中国などの乾燥地帯に分布する植物だけに国内生産は困難と思われてきた。しかし、日本でも育つことを新日本医薬岩国本郷研究所(岩国市本郷町)が確認。試験栽培に本格的に乗り出し、今秋初めて収穫にこぎ着けた。

 岩国市北部の山間部に位置する美和町西畑地区。約40アールの畑に園芸用ポットに入ったカンゾウの苗が並ぶ。吉岡達文所長(56)たちがスコップでポットの下を掘り返すと、地中から長いもので約1メートル、親指ほどの太さの根が出てきた。この根に含まれる甘味成分グリチルリチンがみそやしょうゆ、スナック菓子、たばこ、シャンプーなどの原料になる。

 この畑はもともと雑草が生い茂る休耕地。同研究所が借り受け、雑草を伐採。土地を耕してカンゾウの苗を植えた。その後は水も肥料も一切やらず、伸びた雑草だけを刈って管理している。吉岡所長は「管理は楽。量産も可能なはず」と手応えを感じている。

 研究所は2年前から試験栽培に本格着手。美和町と本郷町の計約1ヘクタールに約2千株を植えたほか、島根県奥出雲町や熊本県合志市など5県で計2万株の育成に取り組んだ。ことし9月から収穫を始め、根の直径が5ミリ以上に太るなど順調な生育が確認できたという。



 お、これは素晴らしい。

 わたくし、「カンブリア宮殿」という番組が一番好きでして、毎回観ているんですが、その中でとある集落で「価値のあるものを作る」ことに注目している公務員がいらっしゃって。凄いなーと。それを実現してしまうのが凄い。この甘草栽培も、結構いい具合に、まちを発展させることに繋がるかもしれません。
posted by さじ at 01:41 | Comment(0) | 薬理

2型糖尿病の要因として重要なGタンパク質共役受容体を発見する。

理研、肥満による2型糖尿病の要因としてGPCRの1種「GPRC5B」が重要と確認

 理化学研究所(理研)は11月21日、「脂肪細胞」表面に局在するGタンパク質共役受容体(GPCR)の1種「GPRC5B」が、肥満による2型糖尿病の発症において重要な役割を果たすことを発見したと発表した。

 生体エネルギーの元となる脂肪は、食物から摂取したり体内で炭水化物から合成したりして主に脂肪組織に蓄積されている仕組みだ。蓄積された脂肪は、さまざまな分解経路を経てエネルギーに変換され、生物はそれを利用して生命を維持している。脂肪の蓄積と消費のバランスを制御することは、ヒトも含め生命体の健全性を維持する上で重要だ。食物の過剰な摂取や枯渇による蓄積-消費バランスの破綻は、さまざまな病気の発症につながってしまう。

 特に近年になって、糖尿病、高脂血症、高血圧症などの疾病リスクを高める肥満は増加の一途をたどっており、早急な予防対策が求められている。肥満の分子メカニズムを理解するためには、組織間で制御されているエネルギー代謝を調節する仕組みを調べることが重要だ。しかし、この仕組みは複雑で容易に明らかにすることは困難である。

 最近の研究により、細胞膜上の構造がエネルギー代謝制御に深く関係していることがわかってきた。2008年に研究グループは、ヒトからショウジョウバエまで共通して保存されているGPCRの1種「BOSS/GPRC5B」を発見し、その機能を詳細に解析。この結果、BOSS/GPRC5B遺伝子は、ショウジョウバエでは複眼形成過程に関わる「Svenless遺伝子」に関連する因子として中枢神経細胞に発現していたが、それだけではなく脂肪体(脂肪組織)にも発現していて、体全体のエネルギーバランスの維持に関わる「膜機能分子」であることが発見されたのである。

 研究グループは今回、GPRC5Bが関わる詳細なエネルギー代謝制御機構の理解を目指して、その機能やそれに関わる因子など解明に挑んだ。具体的には、ヒト胎児腎細胞由来の培養細胞を用いて、GPRC5Bと結合する因子を含んだタンパク質複合体を分離精製し、「分子ふるいクロマトグラフィー」で解析した。

 その結果、GPRC5Bは、細胞膜上で細胞内外シグナル発信の基地となる領域の「脂質ラフト」に存在するタンパク質「カベオリン‐1」と一緒に脂質ラフトに局在することがわかったのである。脂質ラフトは、細胞外との情報伝達に使われる受容体や酵素が密集している通路だ。



 1つ1つのこまかーいたんぱく質の役割が、徐々に解明されつつあります。そこが原因で起こる病気の発見や、たんぱく質に特異的に作用する薬などが誕生すると、これまで以上に「治療対象」となる疾患が増えてくるでしょう。1歩1歩の積み重ねで今の医療があることを再認識させられます。
posted by さじ at 00:00 | Comment(0) | 循環

2012年11月25日

アナフィラキシーショックへの対応にはドクターヘリが最も有効

アナフィラキシー対応、ドクターヘリが有用−和歌山県立医大専門医が検証

 ハチ毒アレルギーによるアナフィラキシーショックに対して、初期治療までの時間が短縮できるドクターヘリが有用であることが、和歌山県立医科大救急集中治療部の田中真生医師らの調査・研究で分かった。ハチに刺された心肺停止症例では、受傷後10‐20分が心肺停止のピークであることから、田中医師は「山間部など救助隊の現場到着に時間を要する場合は、覚知時でのヘリ要請も積極的に啓蒙していく必要がある」としている。

 すべてドクターヘリで対応したこの30例のうち22例で、血圧低下や失禁、呼吸困難、喘鳴、意識消失・障害といった症状が見られた。中には、現場所見で血圧測定・脈拍触知ができず、呼吸なしの事例もあったという。現場で行った処置は、アドレナリンの投与が25例、ステロイド点滴のみが2例、抗ヒスタミン剤投与のみが2例、輸液のみが1例で、CPR(心肺蘇生法)の実施も1例あった。

 現場から直近の救命センターまでの陸路搬送の推定時間は平均41分54秒だが、ドクターヘリ要請から初療開始までの平均時間は、その半分以下の16分30秒だった。田中医師は、「アドレナリンを投与しても心肺停止になる例もあり、山間部などでは積極的なドクターヘリの運用が望ましい。初期治療までの時間が短縮され、ドクターヘリは山間部でのアナフィラキシーへの対応に有用だ」と話している。



 ドクターヘリには、コストという大敵が存在しますが、救命には欠かせません。国が手厚く保障して、より手軽な導入を強く薦めるべきでしょう。アナフィラキシーのように迅速な対応が欠かせないケースにはまさにもってこい。
posted by さじ at 15:00 | Comment(0) | 皮膚

ミトコンドリア病の卵子から染色体を他者の卵子に移し替える技術

染色体移しミトコンドリア予防 遺伝性難病、米の日本人発表

 全身の臓器の働きが損なわれる遺伝性の難病ミトコンドリア病の女性の卵子から染色体を抜き出し、他人から提供された卵子に移し替え、子どもに病気が伝わるのを防ぐ方法を開発したと、米オレゴン健康科学大の立花真仁研究員らが25日付英科学誌ネイチャー電子版に発表した。

 卵子の細胞質に含まれる異常なミトコンドリアを正常なものと“交換”する狙い。実際に使うには技術・倫理面の課題があるが、立花さんは「子どもに病気が伝わるのを恐れて出産に踏み切れない女性の助けとなる可能性がある」と話している。



 素晴らしい。明らかに遺伝する病気だと分かっている場合、そのまま出産を決意させるのが倫理だとするなら、それは第三者のエゴ以外の何者でもないと思うのです。この技術で笑える親子が出来るならそれにこしたことはない。
posted by さじ at 09:46 | Comment(0) | 生殖

読売新聞の「精神医療ルネサンス-言葉を奪われた青年-」が凄い。

言葉を奪われた青年(1) 治療するたび状態悪化

 2012年10月30日、関東地方の大学病院。精神科病棟に入院中のタクヤさん(仮名)と対面した時、私はここ数年の精神科取材で何度も体験した憤りとやり切れなさに再び襲われた。

 タクヤさんは26歳。言葉を話せない。先天的な障害ではなく、深刻な頭部外傷を負ったわけでもない。以前は家族や友人ともふつうに話していた。精神科病院で「統合失調症」と診断され、多剤大量投薬と電気ショック(電気けいれん療法)23回を受けるまでは。

 2008年暮れ、私は朝刊連載・医療ルネサンスで統合失調症の深刻な誤診問題を取り上げた。以来、精神科で治療を受ければ受けるほど、状態が悪化した若者たちを数多く取材した。なぜこんなことになるのか。主治医たちの言い分は決まっている。「統合失調症が進み、重症化した」。すべて「患者の症状」のせいなのだ。こうした主治医が、自らの診断や治療を見直すことはない。患者や家族が疑問をぶつけると、意地になって自分の方針に固執したり、逆切れや開き直りを始めたりする。そして最後は、こうオチをつける。「嫌なら出て行け!」

 精神科の無責任でいいかげんな「治療」が、重度の障害者を次々と作り出しているのではないか。そうした疑念は強まるばかりだ。そしてまた、タクヤさんという新たなケースに出会ってしまった。

 タクヤさんは病棟スタッフに連れられ、面会室に歩いてやって来た。年齢よりも幼く見えるかわいらしい顔立ちで、やさしい目をしている。身長はすらりと高く、健康に暮らせば女性にもてるタイプだろう。だが今は、左の鼻の穴に挿入された管が痛々しい。もうずっと食事を摂れず、鼻から栄養を補給しているのだ。長期服薬の影響で、肩や首が前傾気味になっている。

言葉を奪われた青年(2) ヨダレ垂らし「死にたい」

 タクヤさん(仮名)は幼少期、体が弱く、よく熱を出していた。「上の2人の子と比べるとあまり笑わず、いつも不安そうな顔をしていた」と母親は振り返る。言葉の発育が遅れ気味で、カ行がうまく言えず、「ばか」が「ばた」になったり、「ぼく」が「ぼち」になったりした。1人遊びが多く、同世代の子どもの輪に加わろうとはしなかった。

 5歳の時、自分から「サッカーやりたい」と言い出し、チームに入った。「急に生き生きとし始めて、練習から帰って来ると顔が輝いていた。試合でも楽しそうに動き回っていました。やっと子どもらしくなったと感じて、私もうれしかった」。ところが8歳の時、コーチが替わって勝つことが優先されるようになると、状況が一変した。

 タクヤさんはコーチに期待され、厳しい指導を受けるようになった。ある試合中、コーチはタクヤさんに次々と指示を飛ばした。タクヤさんは急に動けなくなり、しばらくその場に立ちすくんだ。

 「もうやめたい」。度々漏らすようになったが、サッカーを通して成長することを期待した父親が引き留めた。だが、試合前になると体調不良を訴えることが増え、練習でも生き生きとした表情が消えた。10歳でサッカーをやめた。

 「クラスの人たちがこそこそ悪口を言っている気がする」。そう言い始めたのは14歳の時。親しい友人が家に来ても居留守をつかった。いじめられていたわけではなく、「僕、頭がおかしくなっちゃったのかな」と自分でも不思議がった。少しすると被害妄想的な言動は消えたが、今度は宿題を一切やらなくなった。

 高校受験を控えた三者面談。担任教諭は「入れる高校がない。宿題がずっと滞っているから内申点が足りない」と告げた。その晩、タクヤさんは自宅のイスに座ったまま長時間動かなくなった。翌日以降も中学は休まず通ったが、帰宅するとイスに座りっぱなしになったり、1点を見詰めたまま立ち続けたりするようになった。食事をほとんど摂らなくなり、1か月で体重が15キロ減った。小児科に3週間入院し、点滴で栄養を補いながら少しずつ食べる練習をした。

 手を何時間も洗い続ける、深夜に泣きながら家中を歩き回る、服を脱いだり着たりを繰り返す、布団に入ったり出たりを繰り返す、シャワーを何時間も浴び続ける……。決まった動作を繰り返す常同行動が顕著になった。

 常同行動は、精神科では統合失調症の一症状などとして扱われてきたが、自閉症の人にも現れやすく、知的障害のないアスペルガー障害(アスペルガー症候群)の人が、強いストレス下で同様の状態に陥ることも知られるようになった。だが、発達障害の知識を持つ精神科医は依然として少なく、子どもの常同行動をすぐに「(初期や前駆段階の)統合失調症」と決めつけ、対応を誤るケースが後を絶たない。

 タクヤさんの常同行動は、母親たちが体を押さえても止まらなかった。一晩中、体力が尽きるまで家の中を歩き続けたり、立ち続けたりした。心配した母親は、15歳のタクヤさんを精神科病院に連れて行った。即入院になった。

 被害妄想や幻聴は表れていなかったが、主治医は「幻聴は間違いなくある。幻聴から脅されていて言えないんだ」と、まさに精神科医らしい妄想的、ご都合主義的な決めつけをし、「統合失調症」と診断した。さらに主治医は「肉親に会うと帰りたがるので、しばらく面会に来ないでください」と母親に伝えた。1か月後、2分間だけ面会が許された。タクヤさんは保護室で全身を拘束され、導尿もされてベッドに横たわっていた。母親の顔を見るなり泣き叫んだ。

 「これは虐待ではないか」。母親がそう感じたのも無理はない。タクヤさんは自分や他人を傷つけたわけではなく、同じ行動を家で繰り返していただけなのだ。主治医は、常同行動が起こった背景には無関心で、ただ動きを強制的に止めるため、体の自由を奪って導尿まで行った。こころを扱う精神科でありながら、思春期の複雑なこころには目を向けず、ズタズタに切り裂いたのだ。

 「今すぐ退院させたい」。母親は焦ったが、自宅に連れ帰っても、また常同行動を繰り返す可能性が高い息子にきちんと対応できる自信はなかった。ほかに相談するあてもなく、結局は病院を信じるしかなかった。

言葉を奪われた青年(4) 身の毛よだつ投薬

 2012年夏、大学病院に再入院した。主治医と共にタクヤさんを診ることになった精神科教授は「統合失調症なのか発達障害なのか、判断がたいへん難しいケースだが、薬は可能な限り少なくしていきたい」と話す。同病院では、抗精神病薬のエビリファイとリスパダール、抗うつ薬のパキシルなどを使ってきたが、11月に入り、リスパダールの減薬を始めている。

 長年にわたり相当量の薬が投与され続けたため、減薬中に症状が強まる恐れもあるが、単純に「症状悪化」と決めつけず、薬をうまく使い分けながら慎重に判断する必要がある。減薬が順調に進み、状態が安定すれば「言葉が戻る可能性はある」と精神科教授はみる。

 タクヤさんは一体何病なのか。専門家でも意見が分かれるだろうが、重症に至った原因を「病気の進行」だけで片づけてはならない。ここまで悪くなったのは、不適切な治療が原因ではないか。そうした検証が欠かせない。

 1種類の使用が原則の抗精神病薬が5種類、依存性のあるベンゾ系薬剤が3種類、そして薬の副作用として現れるパーキンソン症状を抑える薬が3種類……。これは患者を治すためではなく、潰すための投薬ではないのか。日本の精神医療の異常さに、身の毛がよだつ。

 2週間後。二度目の面会時には拘束は解かれていた。だが代わりに、鎮静目的で多量の向精神薬が投与されていた。タクヤさんの首は激しく前傾し、顎が胸についていた。両腕が震え、何かを持とうとしてもつかめない。両脇を支えないと立てず、すり足で歩幅が小さい小刻み歩行になっていた。ヨダレがダラダラと流れ落ちる口を必死に動かし、同じ言葉を繰り返した。「死にたい」「死にたい」「死にたい」「死にたい」「死にたい」



 うーむ。壮絶なドキュメントです。

 個人的には、記事をみる限りはどうみても発達障害で、どのへんが統合失調症なのか疑問ですが、時折統合失調症に特徴的な症状が前景に出ず全体的にレベルダウンする場合もあるので何とも言えませんね。常同行為やカタトニアなどがあるところからは発達障害っぽいですが。

 しかし現実的には、統合失調症なのか発達障害なのか分からないケースがホントに多いので、注意は必要です。それほどまでに、発達障害への理解が進んできたとも言えますし、統合失調症を早期に発見できるようになったとも言えます。

 ただ大事なことは何かというと、前医の診断を鵜呑みにしないこと、これに尽きるでしょう。

 まぁ薬が入ってしまうと著明な症状は出ないので、悩ましいところではありますが、前医からもらうのは詳細な情報だけでいいんじゃないかと思いますね。確かに精神科医というのは往々にしてそれぞれに得意分野があって、それに応じた対応をしてしまいがちです。薬が必要なのに心理療法で何とかしようとしたり、逆に心理療法だけで何とかなるのに薬だけでどうにかしてしまおうとしたり。診断も同様で、能力のない精神科医が開業していて、適当な診察で診断を下してしまうと、何だか分からなくなってしまい、その診断名だけが一人歩きしてしまうと最悪です。

 この症例も普通に考えれば、まず疑うべきは発達障害であって、むしろ統合失調症が隠されている可能性を考えて、少しでも手がかりをみつけようと詳細を聞いてから、抗精神病薬の投与を検討するのが妥当でしょう。

 ただ、この記事と逆に、間違いなく統合失調症の診断が下り絶対に薬が必要な症例であっても、親が抗精神病薬の投与に同意せず、悲惨な進行を遂げる統合失調症の症例も多いので、その点は悩ましいところですね。親との話し合いをしっかりするべきなのでしょう。こういった事実を広く伝えていただくことで医師も慢心せずに向上できるのですね。
posted by さじ at 00:51 | Comment(0) | 精神