2011年05月01日

肥満の子供の手首のサイズが心血管系の発症リスクと関連している。

肥満児の手首サイズが心血管疾患を予測

 過体重または肥満の小児やティーンでは、手首のサイズによって心血管疾患の発症リスクが高いかどうかが判明することが、新しい研究によって示された。

 イタリア、ローマ大学サピエンツァSapienza校のRaffaella Buzzetti博士らは、平均年齢10歳の過体重または肥満の小児477人の手首周囲長を測定した。また、小児約50人に対して無痛の核医学画像技術を用いて手首の脂肪および骨領域をさらに正確に測定した。その後、血液検査を実施し、インスリン濃度とインスリン抵抗性度を測定した。

 研究の結果、同氏らは、手首周囲長はインスリン抵抗性の全分散(total variance)の12〜17%を説明すると結論付けた。インスリン抵抗性は、心血管疾患の既知の危険因子(リスクファクター)である。最近の研究では、血中インスリン濃度高値と骨量増加との関連が示されている。

 Buzzetti氏は「これは、手首周囲長がインスリン抵抗性のエビデンス(科学的根拠)と強く相関していることを示す初めてのエビデンスである。手首周囲長は容易に測定することができ、今回の結果が今後の研究で追認されれば、いつの日かインスリン抵抗性および心血管疾患リスクの予測に使用できる」と述べている。同氏らは、インスリン抵抗性を説明するのは手首の脂肪組織でなく骨組織であるとしている。



 面白ー。

 確かに手首ってよほどのことがないと太くなりませんよね。筋トレしても鍛えられない場所ではありますし・・・。

 そこが太くなるってことは脂肪、ということか。


posted by さじ at 23:53 | Comment(1) | TrackBack(0) | 循環

妊婦の殺虫剤暴露量と子供の知能指数の低さは相関している。

妊娠時の殺虫剤暴露量と子どものIQに関連性、米研究

 妊婦の殺虫剤暴露量の多さと生まれてくる子どもの知能指数(IQ)の低さの関連性を示した3本の論文が、21日の米医学誌「Environmental Health Perspectives」に掲載された。

 3本の研究はいずれも、果物や野菜の栽培で一般的に使用される有機リン系殺虫剤に的を絞り、妊婦の暴露量とその子ども約1000人のIQを最大9歳まで、ほぼ10年にわたり追跡調査した。

 まず、米カリフォルニア(California)州北部の農場地帯サリナス(Salinas)で392人の子どもを対象に行われた調査では、妊婦から検出された有機リン系殺虫剤の量が10倍増えるごとに、7歳児のIQが5.5ずつ下がっていた。この結果は、教育、世帯収入、その他の環境汚染物質の暴露量などを加味した場合も変わらなかった。

 次に、ニューヨーク(New York)のマウントシナイ病院(Mount Sinai Hospital)が妊婦400人とその子どもを対象に1998年から行った調査では、有機リン系殺虫剤への暴露が、6〜9歳時の知覚・思考能力と非言語的な問題解決能力にマイナスの影響を与えることが分かった。

 なお、妊婦の約3人に1人が有機リン系殺虫剤の代謝を鈍らせる遺伝子変異を持っており、マイナスの影響が認められたのはこうした母親の子どもに限られていた。

 最後に、ニューヨークのコロンビア大(Columbia University)は特に、ゴキブリやシロアリの駆除に広く使われていたクロルピリホスに着目し、子ども265人で調査を行った。なお家庭用のクロルピリホスは米国では2001年に使用が禁止されているため、それ以前に生まれた子どもを対象にした。

 その結果、妊婦の暴露量が多いほど、その子どものIQおよび記憶力が低かった。暴露量が上位25%内に入っている妊婦の子どもでは、それ以下の妊婦の子どもよりも作業記憶が5.5%、IQが2.7ポイントそれぞれ低かった。

 カリフォルニアでの研究を主導したマーリス・ブシャール(Maryse Bouchard)氏は、「3つの調査は別々に実施されたものではあるが、似たような結果が出たことは(有機リン系殺虫剤の使用に関して)いっそうの注意を喚起することになる」と話している。



 へぇ。なんでですかね。まあ微量な物質でも子供に影響するということでしょうか。あんまり関係なさそうですけどね、IQならば(基本的にIQを神聖視するのは医学的・社会的にどうかと思う)
posted by さじ at 23:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小児

善玉腸内細菌がつくる短鎖脂肪酸が生体内エネルギーバランスを調整する

善玉腸内菌の役割を京大が解明 体内エネルギーバランスを調節 

 野菜などに含まれる食物繊維と、ヨーグルトなどの善玉腸内細菌によって作られる「短鎖脂肪酸」が、生体内でのエネルギーのバランスを調節する役割を果たしていることを京都大大学院薬学研究科の辻本豪三教授らの研究グループが突き止め、25日に発表した。肥満や糖尿病の予防・治療につながる成果で、米国科学アカデミー紀要(電子版)に近く論文が掲載される。

 研究グループによると、短鎖脂肪酸が交感神経にある「GPR41」という受容体を活性化。摂食後のエネルギー過剰時には、GPR41が交感神経を刺激してエネルギー消費を増大させる。一方、飢餓状態の際はケトン体という物質が肝臓で合成され、ケトン体がGPR41を通じて交感神経を抑制し、エネルギー消費を減少させる。遺伝子改変マウスの実験で調べた。

 研究の中心となった京大大学院薬学研究科の木村郁夫助教は「食物繊維の多い野菜、ヨーグルト、乳酸飲料の摂取が体にいいことが一つ証明された。肥満や糖尿病の治療薬などの開発につながる可能性もある」としている。



 へえー。善玉菌の役割って腸内細菌をサポートするということだけ知ってましたけど、こういう脂肪酸が関与してたんですねぇ。

 ヨーグルト食べることで確実に健康になれる術。
posted by さじ at 22:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 消化

インターロイキン10が多発性硬化症の悪化を抑制した。

多発性硬化症の悪化抑制 カルシウム流入が鍵

 免疫細胞にカルシウムが流入して特有のタンパク質が作られることにより、運動まひや感覚障害を主症状とする難病「多発性硬化症」の悪化が抑制されることを大阪大と理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター(横浜市)のチームがマウスで解明し、28日付の米科学誌イミュニティー電子版に発表した。

 タンパク質はインターロイキン10(IL10)。大阪大の馬場義裕特任准教授は「流入には、カルシウム濃度を感知するセンサーが必須。センサーがよく働くようにしてIL10が多くできれば、多発性硬化症の治療法が開発できる可能性がある」としている。

 多発性硬化症では脳や脊髄、視神経などに炎症が発生。発症や悪化の原因はよく分かっていない。

 チームは、免疫細胞の一種「制御性B細胞」にあるカルシウムセンサーを欠損させたマウスと、普通のマウスに、多発性硬化症に似た症状が出る物質を注射。欠損マウスでは歩けないぐらい重いまひが起きた。

 普通のマウスではセンサーが働くため、制御性B細胞にカルシウムが流入し、IL10が作られて炎症が抑えられ、神経症状の悪化も抑制されたと考えられた。



 原因不明の多発性硬化症。インターフェロンを使うと再発が予防できるんじゃないかと言われたり、「いやでも打つたびにインフルエンザみたいな症状が出るから使いたくない」とかなんとか言われちゃったりと、まぁ正直確実なことは何とも言えないわけです。

 あとはまぁ、症状が増悪するたびにステロイドパルスやったりとかの対症療法になりがちでした、が、今回の発見でより根本的な治療法に結びつけられそうです。全国の多発性硬化症患者の期待が集まります。
posted by さじ at 06:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

アスピリンなどの抗炎症薬は抗うつ薬SSRIの効果を減少させる。

アスピリンは抗うつ剤の効果を減少させる、米研究

 アスピリンなど、鎮痛のために服用する抗炎症薬は、プロザック(Prozac)をはじめとする抗うつ剤の効果を減少させる可能性があるとする研究結果が、25日の米科学アカデミー紀要に掲載された。

 現在、5人に1人が大うつ病性障害を抱えているとされるが、うち約3人に1人は抗うつ剤に耐性を持っていると考えられている。

 米ロックフェラー大(Rockefeller University)の研究チームは、代表的な抗うつ剤である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)について、イブプロフェン、アスピリン、ナプロキセンと併用した場合の効果を調べた。SSRIには、プロザック、パキシル(Paxil)、レクサプロ(Lexapro)、ゾロフト(Zoloft)などが含まれる。

 まず、マウスの実験で、SSRIにより分泌が促進される細胞内シグナル伝達タンパク分子「サイトカイン」の脳内レベルの推移を調べた。その結果、抗炎症薬がSSRIの効果を抑制していることが分かった。

 次に、米国で成人4000人を対象に7年間にわたり行われた同国史上最大の抑うつ剤の使用に関する調査「STAR*D」のデータ(2006年に公表)を分析。その結果、抗うつ薬治療が効いたのは、鎮痛剤を使用していない患者で54%だったが、鎮痛剤を使用していた患者では40%だった。

 論文の共著者、ロックフェラー大のポール・グリーンガード(Paul Greengard)氏は「(抗炎症薬が抗うつ剤の効果を減じる)メカニズムは不明」としているが、年配のうつ病患者の多くが関節痛などの慢性痛も患っており、抗うつ剤と抗炎症薬の両方を処方されていると指摘し、「医師は抑うつ剤を処方されている患者に抗炎症薬も処方する場合は、その利点と欠点を注意深くはかりにかけなければならない」と話している。



 アスピリンなどのNSAIDは日本でも広く使われてますしね。痛みに対してはまず間違いなく出されている薬ですし・・・。

 SSIRの効果を弱めるとなるとなかなか難しい。どうすれば改善するんでしょうかね。根本の原理を解明してもらいたいところです。
posted by さじ at 05:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 精神

ミイラから世界最古の動脈硬化病変を発見する

古代エジプト王女に世界最古の動脈硬化

 およそ3500年前、40代で死亡したとみられている古代エジプトの王女アーモセ・メリエット・アモン。カロリーを控えて適度な運動を行っていれば、“世界最古”の動脈硬化にならず、もっと長生きしたかもしれないという。

 この王女のミイラが埋葬されていたのはナイル川西岸に位置するハトシェプスト女王葬祭殿(デル・エル・バハリ)。現在はカイロのエジプト考古学博物館に安置されている。このほど同博物館のミイラ52体をCTスキャンしたところ、彼女を含めほぼ半数で動脈血栓症(動脈硬化)が見つかった。とりわけ王女は「冠状動脈アテローム性動脈硬化」の最古の症例と目されている。動脈プラーク(血管内膜に付着した脂質)の蓄積が原因で、心臓発作などにつながる疾患だ。

 研究の共同責任者で、カリフォルニア大学アーバイン校の循環器学教授グレゴリー・トーマス氏によると、「月の子ども(Child of the Moon)」、「アメン神に愛されし者(Beloved of Amun)」とも言われるアーモセは、脳や心臓に血液を送り込む動脈を含めた主幹動脈5本にプラークがあったという。「私がいま王女を診断できたとしたら、脂肪分の摂取を控えて適度な運動を行うよう指示したうえで、心臓手術を行う。2カ所のバイパス手術が必要な状態だ」。

 CTスキャンしたミイラは埋葬前に心臓が取り除かれていたが、体のいたるところにカルシウムが蓄積していることから、動脈の問題を突きとめた。とは言え臓器が原型をとどめていない場合が多く、すべてのミイラが心臓疾患で命を落としたのかどうかは確証がないという。しかし王女が生きていた紀元前1580〜1550年の医療関係の文献には、重篤な心臓発作の予兆と考えられる腕や胸の痛みに関する記述がある

 共同研究者で、カリフォルニア大学サンディエゴ校医科大学院に所属するマイケル・ミヤモト氏は、動脈血栓症や心臓発作は一般に現代の生活習慣や食生活と関連が深いと考えられており、古代エジプトとは結びつきにくいと語る。「アテローム性動脈硬化の主な要因とされているのは、喫煙をはじめ、糖尿病率や肥満率の高さ、トランス脂肪酸(食用油の加工時に発生する脂肪酸)の多い食事などだ。古代エジプト人の生活との関連性は薄い」。

 だが、テーベ第17王朝のファラオに名を連ねる「セケネンラー・タア2世(Seqenenre Tao II)」の娘である王女は、調査対象の他のミイラと同様、高い地位にあった。通常より心臓病にかかる確率は上がると言えるだろう。「地位が高いため、欲しいものはなんでも手に入るような生活を送っていただろう。特に体を動かす必要もなく、肉類に代表される高カロリーな食事を摂っていたはずだ」。

 研究の共同責任者で、エジプトのアル・アズハル大学の循環器学教授アデル・アラム氏も、「彼女はエジプトが栄えた時代に生きていた」と付け加えている。「貧困層の人々でも豚肉をたくさん食べ、パンにハチミツを使うようになった時代だ。一般人でさえ糖質や脂質を多量に摂取していたとするなら、王女たちの食生活は相当に不健康だっただろう」。

 一方で、古代のミイラからは脂肪が喪失しているものの、生前のアーモセ王女は小柄で、特に太っていなかったとも考えられるという。実際に研究チームは、食事や生活習慣以外の要因が動脈硬化を引き起こした可能性もあるとみている。「例えば彼女の家系には、アテローム性動脈硬化をそろって発症した親子もいる。遺伝的要因の可能性は無視できないだろう」とアラム氏は話す。



 今と違って動脈硬化すらもよくわからなかった時代であれば、高貴な家庭はものすごいごちそうばかり食べていたんでしょうね。

 いや、今の日本も、当時からみればごちそうだらけなわけで・・・。気をつけないといけませんな。
posted by さじ at 00:44 | Comment(1) | TrackBack(0) | 循環