2011年01月19日

成人T細胞白血病に有効な分子標的薬を協和発酵キリンが開発

ATLに新治療薬 治験、半数で効果 春に承認申請

 九州だけで毎年約500人が死亡している血液がん・成人T細胞白血病(ATL)の治療に有効性がある新薬を製薬会社「協和発酵キリン」(東京)が開発、2011年春、厚生労働省に製造、販売の承認申請をする。臨床試験では患者の半数で新薬の効果が確認された。現在、有効な治療薬はなく、この治験結果にATLの原因ウイルスHTLV1総合対策を検討する官邸の特命チームは注目している。厚労省は審査期間を短縮する特例措置を取る方針。早期に承認されれば、12年初頭にも発売される。

 同社が開発した新薬は「抗CCR4抗体KW−0761」。がん化した細胞だけを狙い撃つ「分子標的薬」(抗体医薬)としては初のATL治療薬。同社独自の技術で、ATLを引き起こすがん細胞を攻撃する能力が高い抗体を人工的につくり、点滴で投与する。

 正常な細胞まで破壊してしまう従来の抗がん剤に比べ、副作用の心配が少ないのも特長という。

 昨年末に治験結果をまとめた名古屋市立大大学院の石田高司講師(免疫内科学)によると、治験はATL患者のうち、抗がん剤治療後に症状が再び悪化した26人を対象に実施。新薬を1週間間隔で計8回投与した。

 その結果、半数の13人に血液中のがん細胞が減ったり、リンパ節の腫瘍が縮小したりするなどの効果が確認され、うち8人は白血病細胞や腫瘍が消滅した。副作用は発熱や発疹などがあったが、いずれも対症療法で改善できるレベルだった。

 ATL患者の受診医療施設として国内有数の今村病院分院(鹿児島市)の宇都宮與(あたえ)院長は「新薬の治験で有効率50%は極めて珍しい高さ。抗がん剤と併用すればさらに治療効果が高まるだろう。患者は新薬を待ち望んでおり、少しでも早く医療現場に普及させてほしい」と話す。

 官邸特命チームのメンバーである外山千也厚労省健康局長は「治験結果は好成績であり注目している」と話している。

▼ATL

 主に母乳を介して感染するウイルスHTLV1が原因の難治性血液がん。国内感染者は100万人以上で九州・沖縄在住者が約半数を占める。発症すると血液中で白血病細胞が増殖し、免疫機能が低下したり、リンパ節に腫瘍ができたりする。潜伏期間が平均55年と長く、感染者の生涯発症率は約5%と低いが、有効な治療法は未確立。毎年約千人が亡くなっている。国は1991年に九州などの「風土病」と判断し、全国対策を放置してきたが、菅直人首相が2010年9月、当時の判断ミスを認めて患者団体代表らに謝罪。12月に公費による全妊婦検査や治療法開発推進などの総合対策を発表した。

 成人T細胞白血病(ATL)は発症後の平均生存期間が半年から1年と短い。高齢で発症することが多いため、治療に有効とされる骨髄・臍帯血移植が体力的に難しい患者が大半を占める。新薬開発の期待は大きかった。

 原因ウイルスHTLV1の母子感染防止策として、公費による妊婦検診時の抗体検査が2011年春までに全国で始まる。感染が判明した場合、授乳制限で次世代の感染はほぼ防げるが、母親は自らの発症の不安におびえ続けることになる。「有効な治療法がない現時点では心のケアにも限界がある」との指摘もあった。新薬が厚生労働省に承認されれば、患者や全国に100万人以上いるとされる感染者にとって朗報となる。

 ただ、治験では新薬の効果が認められなかった患者もいた。ATLに詳しい今村病院分院(鹿児島市)の宇都宮與院長は「ATLはいろいろなタイプがある。治療薬の選択肢はできるだけ多い方がいい」と、さらなる新薬開発の必要性を説く。

 菅直人首相は昨年12月、治療法開発に向け11年度の研究予算を従来の4倍以上で、エイズや肝炎並みの10億円に増額すると表明した。聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター(川崎市)の山野嘉久准教授は「国の積極姿勢が示されれば、優秀な研究者が集まり、治療薬開発は加速する」と指摘する。

 今回の新薬を突破口として、ATLや脊髄症(HAM)などのHTLV1関連疾患制圧へ、今年が「研究推進元年」となることを期待したい。



 血液のがんには抗がん剤・分子標的薬がかなり効くタイプのものが多いとされています。

 昔は九州地方に多いとされていましたが、最近は全国的に広がっているようです。手術が出来ない分、こういう薬の開発が急がれます。
posted by さじ at 02:24 | Comment(2) | TrackBack(0) | がん

ウニの研究でムコ多糖症と異染性白質ジストロフィーを解明

東大三崎臨海実験所長らのグループがウニをモデル難治疾病の仕組み解明

 東京大学三崎臨海実験所(三浦市三崎町小網代)の赤坂甲治所長(59)らのグループが、これまで治療法がないとされてきた難治疾病のメカニズムを解明し、日本臨床分子形態学会の論文賞を受賞した。ウニをモデルに研究を進め、病気の仕組みを解き明かした赤坂所長は「海産動物を用いた基礎研究が、医学にも波及効果をもたらすことを示すことができた。従来の概念を覆す発見であり、治療法の開発にもつながる」と話している。

 受賞論文は、杏林大学医学部とニッピ・バイオマトリックス研究所、広島大学との共同研究で、遺伝病のムコ多糖症と異染性白質ジストロフィー症のメカニズムを明かしたとされる

 赤坂所長は30年以上にわたり、動物の体や組織の形作りの仕組みの研究を継続してきた。特に進化的に人間に近く、実験に適したウニに注目。人間とウニはほぼ同じ遺伝子をもつため、ウニの遺伝子の働きが分かれば、人間の生命活動の仕組みの解明にもつながる

 今回、古くから酵素の遺伝子と考えられてきたアリールスルファターゼ遺伝子に着目。ウニでは、この遺伝子がつくるタンパク質は大部分は酵素ではなく、細胞の接着や細胞運動の足場として働くことを証明し、人間でも同様であることを明らかにした。

 近年、海洋生物学の研究者が次々とノーベル賞を受賞するなど、海洋生物の研究が生物学や医学、創薬などに生かされていることが世界的に注目されている。赤坂所長は「欧米のように海洋生物の基礎研究の有用性が、日本でも理解されるようになればと願っている」と話した。



 天才の所業で医学は成り立っているんですね。

 神経医学的に大きな発見
posted by さじ at 02:02 | Comment(1) | TrackBack(0) | 脳神

家族承諾のみの脳死臓器移植、進む。

意思書面なし、家族承諾のみで29例目の脳死臓器移植

 日本臓器移植ネットワーク(移植ネット)は2日、福井大付属病院に入院中の20歳代の女性が、改正臓器移植法に基づいて脳死と判定され、臓器提供の手続きに入ったと発表した。昨年7月の改正法施行後、本人の意思が書面で残されておらず、家族の承諾だけで提供されるのは29例目。脳死の人からの臓器提供は1997年の臓器移植法施行後116例目。

 移植ネットによると、1日に同病院から移植ネットに連絡が入り、家族は同日、脳死判定と臓器摘出の承諾書を移植ネットに出した。同病院で女性の脳死判定が行われ、2日午前3時3分に2回目の脳死判定が終わって死亡が確定した。女性は頭部外傷で治療を受けていた。

 移植ネットによると、女性は子どもの頃に、緊急入院したことがあり、女性の親は「助けてもらったことを何らかの形でお返しできれば」と考えていたという。

 家族は心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸の提供を承諾した。心臓は東京女子医大病院で20歳代男性に、肺は岡山大病院で40歳代女性に、肝臓は広島大病院で60歳代男性に、腎臓は福井大病院で60歳代女性に、もう一つの腎臓と膵臓は神戸大病院で30歳代女性に、それぞれ提供される。小腸は医学的理由で提供を断念した。



 すべての関わった人に、感謝。
posted by さじ at 01:33 | Comment(1) | TrackBack(0) | 移植

必要のない救急車出動件数が過去最多に。

松阪消防 救急車出動が過去最多 入院不要61%

 松阪地区広域消防組合(大釋博消防長)の昨年一年間の救急車出動件数は一万二千八百四十四件で、過去最高だったことが四日、分かった。一昨年と比較すると、千二百件、約10・3%増。一万二千件突破は初で、管内の十六人に一人が搬送された計算になる。

 同組合のまとめによると、昨年の一日当たりの救急車の出動件数は約三十五件(一昨年約三十二件)。昨年二月ごろまで猛威を振るった新型インフルエンザによる発熱や、夏の猛暑による体調不良が、出動件数を大きく押し上げたと、分析している。

 また、出動したものの搬送しなかった「不搬送」は、一昨年より五十七件多い四百九十八件で、全体の約4%。家族などが出動要請しても、本人が「大丈夫」などとして救急車に乗らなかった例が複数あるといい、軽症での出動要請が、重症者の搬送を妨げる可能性も否定できない状況にある。

 ただ、搬送後に入院を要しなかった「軽症」は全体の約61%で、管内住民の救急相談に、民間の医師らが二十四時間体制で電話に応じる「救急相談ダイヤル24」が稼働した一昨年十一月以前と比較すると、約5ポイント低下。出動件数そのものは増加したものの、軽症に関しては、「ダイヤル効果」があったとみている。

 同組合は松阪、明和、多気の三市町で構成。管内では、過去には市内三大総合病院が輪番制で救急医療を担っていたが、医師不足や増加する利用者が医療体制を圧迫し、平成十九年に救急車の搬送患者だけを救急医療で対応することを決めた。

 五年前には救急車の出動要請も、医療圧迫の原因になるとして、適正利用を住民に重点的に呼び掛け、出動件数がいったん九千件弱まで減少したことがあったが、同十九年には初の一万件を突破。その後は増加を続けている。要請に応じて出動し、搬送する立場の消防としては、現場で患者の選別をすることはできず、適正利用の呼び掛けが唯一の手立てとなっており、同本部総務課は、「ことしも救急本来の目的を住民の皆さんに理解してもらい、救急車の適正利用と同時に、ダイヤル24の有効利用も啓発したい」と、話した。



 日本は国として最高峰の医療を提供していると思いますが、なんかこう、不思議なのが、すごくどうでもいい案件なのに、なぜか夜に、救急車で行くという点。夜のほうが緊急性が高そうなイメージがあるからでしょうか。

 熱があるなら昼間くればいいのに、何故か夜まで我慢して、夜に来る。我慢できたなら朝まで我慢すればいいのに

 というのは夜間はどこの病院もマンパワーが不足します。はっきりいって、昼間のほうが受けられる医療の質ははるかに高い。採血1つとっても、夜間緊急でオーダーできる採血項目は限られています。夜間にはとれるべきデータも少ない。そして人が少ないから十分な医療が提供できない。そのときいた人が最高の医療を提供しても、昼間には及ばないです。
posted by さじ at 00:10 | Comment(3) | TrackBack(0) | 救急

2011年01月18日

腎臓の動脈硬化の認知度は1割未満

腎臓の動脈硬化、認知度は1割に満たず

 ジョンソン・エンド・ジョンソン(本社=東京都千代田区)がこのほど実施した動脈硬化に関する意識調査によると、「心臓」や「頭」以外の「足」や「首」に動脈硬化が起こることを知っている人は全体の約3割で、「腎臓」は1割未満にとどまった。また、「高血圧」や「肥満」など動脈硬化の危険因子を一つでも持っている人は6割以上だった。

 調査は昨年12月上旬、国内の40−70歳代の男女800人を対象に、インターネット上で実施。

 調査結果によると、動脈硬化が起こる部位として知っているのは(複数回答)、「心臓」86.9%、「頭」77.6%だったのに対し、それ以外では「足」32.1%、「首」29.8%、「腹部」17.1%、「腎臓」8.9%と低い水準となった。

 また、動脈硬化の危険因子の中で自分自身に当てはまるものを聞いたところ(複数回答)、「高血圧」が30.4%で最も多く、以下は「肥満」(24.1%)、「脂質異常症」(18.1%)、「喫煙習慣がある」(15.6%)の順。これらの危険因子を一つでも持っている人は64.5%(516人)となった。

 さらに、この516人に足の冷えや痺れといった閉塞性動脈硬化症(足に起こる動脈硬化)の特徴的な症状を感じたことがあるかと聞いたところ、42.2%が「ある」と回答。このうち、47.7%が「病院に行くような症状ではないと思うから」などの理由で、病院を受診しなかった。

 一方、病院に行ったと回答した人に、どの診療科を受診したかを聞いたところ(複数回答)、「整形外科」が25.2%で最も多く、次いで「内科」が22.0%となり、適切な診療科である「循環器内科」や「血管外科」を選んだ人はそれぞれ9.6%、1.8%だった。



 血管の硬化というとやはり心臓、脳血管がメジャーです。一発で命取りになる可能性があるからですかね。

 でも腎動脈の硬化も、怖いんですわ。

 まあどこの血管でも怖いんですけども、腎動脈も「大血管」の1つでして、ここが硬化して腎臓に負担でもかかろうものなら。
posted by さじ at 02:33 | Comment(1) | TrackBack(0) | 循環

2011年01月10日

臨床研修の指導医確保のため財政支援を行う

指導医確保へ臨床研修の連携実施に財政支援

 厚生労働省は来年度から、医師の地域偏在の解消や臨床研修指導医の確保に向け、大学病院や都市部の中核病院と、医師不足地域の中小病院や診療所が連携した臨床研修の実施に対して財政支援を行う。同省医政局は、来年度予算案の「元気な日本復活特別枠」に「臨床研修指導医の確保事業」として10億300万円を計上している。

 同省の担当者によると、同事業では大学病院や都市部の中核病院と、医師不足地域の病院などの間で研修医や指導医を一定期間派遣するといった研修プログラムを作成したり、指導医を派遣したりした病院に対して財政的な支援を行う。大学病院などからの一方向ではなく、医師不足地域の中小病院から大学病院などに指導医を派遣することで、将来的に中小病院の教育体制の充実につなげる狙いもある。

 当初、同事業は医師不足診療科である救急、外科、内科の臨床研修指導医の休日・夜間指導手当への財政支援を行うものだったが、「元気な日本復活特別枠に関する評価会議」での評価などを受けて見直しが行われた。

 一方、臨床研修の充実のための「臨床研修の質の向上及び研修医の確保等に向けた臨床研修病院群の形成促進」には9300万円を計上。臨床研修病院の関係者などで構成する地域協議会を都道府県単位で設置し、地域の特色ある研修プログラムの作成や研修医の適正配置に関する協議、募集定員の調整などを行う。同省は都道府県などが想定されている協議会の設置主体に対し、運営費用などの支援を実施する。



 指導できる指導医さえいれば、やる気のある研修医はどんどん伸びると思いますけどね

 最悪なのは、人間的にどうしようもない人間が指導医になること。最悪の研修の幕開けです。
posted by さじ at 00:14 | Comment(1) | TrackBack(0) | 大学

2011年01月06日

公立病院の6割が赤字。どんなに頑張っても赤字。

09年度公立病院、赤字は6割に減―改革プラン実施状況まとめ

 総務省はこのほど、公立病院改革プランの実施状況(昨年9月末現在)について調査結果をまとめた。2009年度決算で経常収支が黒字となった公立病院は369病院で、プラン策定病院の40.8%だった。

 09年度に黒字化を見込むプランを策定していたのは280病院(31.0%)で、プランを上回る数の病院が黒字を計上した形だ。赤字病院の数は約6割となり、7割超で推移していた06―08年度から改善した。

 同省自治財政局は、「公立病院の経営改善が進んだとも言えるが、依然として6割は赤字。赤字額も総額で1100億円を超えており、まだまだ厳しい状況だ」としている。09年度実績を踏まえ、628病院(69.5%)は、同省のガイドラインで目標年度とする11年度に黒字化を見込んでいる。

 プランは、病院事業を運営する自治体637団体のうち、635団体904病院が策定済み。未策定は奈良県と広島県神石高原町で、いずれも今年度内に策定するとしている。

 09年4月から昨年9月にかけて経営形態の見直しを行ったのは、計110病院。地方公営企業法の一部適用から全部適用に変更したケースが最も多く、74病院あった。ほかは、法適用から地方独立行政法人に移行したのが29病院、指定管理者制度としたのが7病院だった。また、病院の再編・ネットワーク化計画を09年度に策定したのは79病院だった。



 これは医療従事者のジレンマなのですが、患者に必要な医療を提供しているだけで、病院が赤字になる、というのは、そもそもの医療の価格が間違っているのではないでしょうか。

 公立だから、国立だから、儲け重視の医療を行っているわけではない、といっても、ちゃんとコストを考えて、必要でないものは極力行わないようにしても、赤字になってしまう、それは、おかしくないですかね。

 給料を減らせ、と言われることもしばしばですが、私からみて、どこも労働時間からすれば薄給極まりないと思います。

 特に医師というより、看護師の給料は、労働にしては安い。今の1.5倍ぐらいあげてもいい、と本気で思ってます。でも、赤字だから。削って、今の給料なのでしょう。

 国民は、全国どこでも、最良の医療を受けたいと思っているはずです。それならば、増税して、その分を医療費に充ててもいいのでは?
posted by さじ at 02:46 | Comment(1) | TrackBack(0) | 大学

餅は小さく切って食べましょう。よく噛んで食べましょう。

餅を詰まらせ、5都県でお年寄りら10人死亡

 1日から2日にかけて、東京、神奈川、埼玉、千葉、和歌山の5都県で、お年寄りら計10人が餅を喉に詰まらせ死亡した。

 東京消防庁は「餅は小さく切ってよくかみ、高齢者や子どもの場合、家族がそばに付き添ってほしい」と呼びかけている。

 同庁によると、東京都内では、2日午後8時までに24人が病院に運ばれ、このうち6人が死亡した。死亡したのは70〜82歳の男性5人と95歳の女性。うち5人は自宅で雑煮を食べていた。

 他の4県でも、1日午前に61〜89歳の男女4人が餅を喉に詰まらせ、死亡した。



 毎年何人か亡くなりますね。

 どんな食事でもそうなのですが、「ゆっくり噛んでしっかり飲み込むこと」が大事です。

 最近はこういったニュースがあると「こんにゃくゼリー」の話題にシフトします。

 確かに仙石官房長官の、こんにゃくゼリー規制は、よくわからんです。ひとつの企業の主力をあっさり潰している。そのようなことがまかりとおっていいのか、と。

posted by さじ at 02:39 | Comment(2) | TrackBack(0) | 救急

2011年01月03日

完全な形の歯を培養して再生することに日本歯科大が成功

体外で培養、歯を完全再生=マウスで成功、人への応用目指す−日歯大

 マウスの歯の一部を体外で培養し、完全な歯を再生することに世界で初めて成功したと、日本歯科大生命歯学部の中原貴教授と同大新潟生命歯学部の佐藤聡教授の研究チームが3日までに明らかにした。今後、インプラントや入れ歯に代わる人の歯の再生医療として臨床応用を目指す。

 中原教授らによると、生後5日のマウスの歯冠(歯の先)を、人間の歯と骨をつなぐ歯根膜の細胞を培養して作ったシート状のもので包むなどして特殊な培養液に入れた結果、1カ月でほぼ完全な形の歯が再生した。歯の根元である歯根や歯の土台となる歯槽骨、歯根膜も形成された。

 条件が整えば、100%近い成功率で再生。再生した歯をマウスの前歯を抜き移植したところ、抜け落ちることなく正常に機能したという。

 中原教授は「歯冠、歯根、歯周組織の全てを試験管の中で作り、歯全体を再生することが期待できる」としている。

 歯の再生研究では、これまでに東京理科大などの研究チームがマウス体内での再生に成功している。



 噛むということは、結構大事です。

 老化により歯が抜けてしまうのは仕方ないことなんですけど、それでも、物を噛んで食べる、という行為によって筋肉が刺激されますし、全身のバランスを保つことができます。

 今は入れ歯で何とかなりますけれども、こちらは歯そのものの再生。シートから培養という手法です。素晴らしいですねぇ。あと十年もしたら結構やられるところも多いんでしょうかね。夢、広がります。
posted by さじ at 16:58 | Comment(1) | TrackBack(0) | 歯科

子宮頚がんワクチンの筋肉注射で失神を起こす事例が多発。

子宮頸がんワクチンで副作用、失神多発

 子宮頸がんワクチンの副作用として、気を失う例の多いことが、厚生労働省の調査でわかった。

 接種者の大半が思春期の女子で、このワクチン特有の強い痛みにショックを受け、自律神経のバランスが崩れるのが原因とみられる。転倒して負傷した例もあるという。同省は「痛みを知ったうえで接種を受け、30分程度は医療機関にとどまって様子を見るなど、注意してほしい」と呼びかけている。

 子宮頸がんワクチンは、肩近くの筋肉に注射するため、皮下注射をする他の感染症の予防接種より痛みが強い。昨年12月以降、推計40万人が接種を受けたが、10月末現在の副作用の報告は81人。最も多いのが失神・意識消失の21件で、失神寸前の状態になった例も2件あった。その他は発熱(11件)、注射した部分の痛み(9件)、頭痛(7件)などだった。



 ワクチンそのものの疼痛刺激というより、筋肉注射自体の痛みによる迷走神経反射、なんですかね。

 迷走神経反射は、結構起こる合併症の1つです。採血でも起こります。要するに針をさされるという行為で緊張したり、針を刺された痛みで、迷走神経が過敏に働き、フラーっとしてしまうのです。

 筋肉に注射するわけですから、インフルエンザ予防接種とはまた違った、痛みになるのでしょう。

 こういうところの注意も併せて伝え、合併症を予防することが大事かもしれません。
posted by さじ at 15:58 | Comment(2) | TrackBack(0) | 薬理

HTLV−1の抗体検査が全国の保健所で検査可能に

母乳からうつる白血病 都道府県保健所で検査可能に

 主に母乳からうつるヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV―1)の抗体検査が、都道府県の保健所で受けられるようになる。官邸の「HTLV―1」特命チームは20日、会合を開き、総合対策をまとめた。自治体によって10月に始まった妊婦を対象にした一部または全額公費負担の抗体検査に加え、一般人も手軽に検査が受けられるようになる。

 総合対策ではこのほか、保健所での感染者らへの相談支援などを盛り込んだ。厚労省に専門家や患者らによる対策推進協議会を設け、都道府県に置く母子感染対策協議会と連携する。関連疾患の研究費として、厚生労働科学研究費補助金に新たにHTLV―1の領域を設け、今年度の約5倍増となる10億円を新年度予算で確保するという。

 HTLV―1の感染者は全国に約108万人いるとされる。九州や沖縄に多く、風土病とされてきたが、最近の調査で関東や中部で増えていることがわかった。ウイルスが原因で起こる成人T細胞白血病(ATL)を患う前宮城県知事の浅野史郎さん(62)や患者団体が国に対策の充実を要望、9月、菅首相の肝いりで特命チームが設置された。

 特命チームの一人で患者代表の菅付加代子さん(53)は「この対策は厚労省の一部署でなく、特命チームでなければできなかった。何度も厚労省に通っても前に進まなかったが、やっと(国の対応に)血が通ったと思う」と話した。

 会合に出席した菅直人首相は「この問題にしっかり取り組むと同時に、いろいろな病気で苦しむみなさんに対するモデルとして前進できたと思っている」と述べた。



 特に九州で多いとされていたHTLV−1ですが、発見が遅かったというのもあり、結構全国的に広まっているようです。

 白血病になるウイルス、というのは、なかなか特異的なものではありますが、一般への認知度は確かに低いものでした。
posted by さじ at 03:41 | Comment(1) | TrackBack(0) | 感染

2011年01月01日

知られざるヘッドホン難聴の恐怖

ヘッドホン難聴にご注意

 音を原因とする音響性難聴の原因となる行為として、次の3つがあげられます。

(1) 大きな音を聞く。
(2) 長時間にわたって音を聞く。
(3) 周波数が高い音を聞く。

 ヘッドホンで音楽を聴く人は、この3つのリスクをすべて満たす状況になりやすいのです。

 まず(1)ですが、外出中に音楽を聴く場合、周囲がうるさくなってくるとつい音量を上げてしまい、知らないうちにとても大きな音になっているということになりがちです。音が大きいほど耳が受けるダメージも大きくなります。

 (2)の音楽を聴く時間の長さも問題です。最近の携帯音楽プレーヤーは大量記憶が可能で、充電電池も長持ちするため1日中でも聴き続けることができます。でも、これはたいへん危険なことです。人間の耳は、騒音にさらされてダメージを受けても、騒音から離れることである程度は回復しますが、耳を休めることなく酷使を続けるとダメージは定着し、難聴が進行していくことになるからです

 (3)については、耳の奥にあって音を聞くのに重要な役割をする内耳は、周波数の高い音によってダメージを受けやすいという特徴があります。音が空気中を伝わってくる間に高周波帯は弱まりますが、ヘッドホンで聞く場合はあまり弱まることなく伝わってきます。そのため、スピーカーを通して聴くよりも、ヘッドホンの音を聴いた場合のほうがよりダメージを受けやすくなります。

 通勤電車などでヘッドホンを使って音楽を聞く人が大変多くなりましたが、使い方によっては難聴になることを知っておかなくてはいけません。

 音響性難聴は、内耳にある蝸牛が障害を受けることで起こります。蝸牛にある感覚細胞は音を振動で感じ、これを電気信号にして脳に伝えます。しかし、大きな音を聞いたときの大きな振動によって、蝸牛の中の血流が滞ったり、感覚細胞の一部が脱落して失われてしまうことがあります。失われた感覚細胞は再生できないため、いかに早期に治療するかが重要になります。

 難聴が進行するときは、日常会話などには含まれないような高い音からだんだんと聞こえが悪くなります。そのため、聴力の悪化に気づかないまま中音や低音まで聞こえにくくなってしまうことがあります。そうなると、もはや治療で聴力を取り戻すことはできません。聴力の悪化は早期に発見し、それ以上進行しないようにすることが大切なのです。

 ヘッドホンでよく音楽を聴くという人は、耳鳴りがしたり、耳がつまる感じなどがあれば、すぐに耳鼻科を受診するようにしましょう。

 ヘッドホン難聴にならないためには、節度のある聴き方をすることが一番です。次のようなことに気をつけましょう。

●耳を休ませる時間をつくる
 耳にも休息時間が必要です。ヘッドホンで音楽を聴かないというだけではなく、テレビやラジオの視聴、パチンコ店やカラオケ店などのにぎやかな場所でも、合間に静かな環境ですごす時間をつくりましょう。耳栓を使って、音から耳を守るのも有効です。音楽好きな人であればこそ、大切な耳をいたわりましょう。

●音量を上げすぎない工夫をする
 ヘッドホンのタイプによって、次のことを目安に音量を調整してください。
オープンエア型(通常のタイプ):静かな室内でヘッドホンで音楽を聴きながら会話ができる程度に音量を調節し、騒がしい場所でもその音量を上げないようにします。
 クローズド型(音もれ防止タイプ):片側のヘッドホンをはずし、はずしたほうから聞こえてくる通常の話し声と同じ程度に聴こえるよう音量を合わせます。

●体調が悪いときはとくに注意
 耳の丈夫さには個人差があります。同じように大きな音で音楽を聴き続けても、ダメージを受ける程度には差があります。花火大会やライブの後などに、音がわんわん反響するように聞こえた経験があるという人は、耳が弱いと考えられます。

 耳があまり丈夫ではない人が、飲酒や疲労、睡眠不足などで体調が万全でないときに大きな音を聴くと難聴になりやすいので、体調が悪いときはとくに注意しましょう。



 耳の機能ってのは、失うと戻らん、ということを知っている人は意外と少ないのではないでしょうか。

 人によっては、凄い音量で聞いている人、いますけど、あれって必要なんですかね。もっと音量落としてもいいんじゃねえかな、と思うんですけれど。

 辛さと同じで、激辛を食べても平気、というのは、辛いという刺激に慣れてしまっているというか、要するにポンコツになってるってことなんで。
posted by さじ at 02:42 | Comment(5) | TrackBack(0) | 耳鼻

医学部の入学定員を更に増員する計画。

医学部定員数、77人増の8923人  文科省

 文部科学省は6日、2011年度の医学部入学定員の増員計画を公表し、10年度より77人多い8923人にすることを明らかにした。6月に閣議決定した新成長戦略や、9月に公表された厚生労働省の必要医師数実態調査を踏まえ、地域医師確保などの目的で臨時的に医学部定員増を実施する。定員を増やす大学は国立18校、公立1校、私立7校の計26校に上る。   

 増員の枠組みは、@地域の医師確保A研究医養成B歯学部入学定員の削減に伴う振り替え―の3つ。@の地域の医師確保では、都道府県の地域医療再生計画に基づいて奨学金制度を活用した地域枠で59人(国立33人、公立5人、私立21人)を増員する。Aの研究医養成では6人(国立5人、私立1人)、Bの歯学部振り替え枠では12人(国立のみ)増やす。



 どんどん増えますねぇ。

 まあ開業の枠がある程度決まってるわけだから、勤務医が増えることに繋がる、のかな。
posted by さじ at 02:35 | Comment(2) | TrackBack(0) | 大学

正月を医学的に正しく過ごす6箇条とは。

今年の業務もようやく終了。

 あすから年末年始の休みが始まるという人も多いだろう。そこで、正月を元気に過ごすための6カ条を医師でジャーナリストの富家孝氏に聞いた。

《第1条》寝正月こそベスト!「不眠は永眠の始まり」

 正月を家で寝ながら過ごすことに罪悪感を持ってはいけない。実は、これこそが最大の健康法である。日頃4・5時間睡眠で頑張ってきたサラリーマンには、まず睡眠を十分取ることをお勧めする。よく「寝だめ」と言うが、「食いだめ」はできないが寝だめは意外とできるもの。最近は不眠症が増えているが、不眠が怖いのは寿命を縮めることで、「不眠は永眠の始まり」と考えるべき。ただし、睡眠は長すぎてもよくなく、1日に6・5時間、7・5時間の睡眠をとっている人が最も死亡率が低いという研究結果がある。正月を境に、グッスリ深く眠ってスッキリ目覚める生活に変えられればベストだ。

《第2条》酒を飲んだら必ず「水の補給」を!

 正月につきものの飲酒。暴飲暴食がよくないのはもちろんだが、アルコール分を体内に入れたら必ず水分を補給すること。とくにビールは利尿作用が強く、のどの乾きを癒やすために飲んでも、逆に体内の水分を排出してしまう。たとえば、ビール500ミリリットルを飲むと、尿として800ミリリットルの水分が体外に出るとされる。二日酔いの原因も水分不足(脱水症状)である。したがって、水分補給は重要で、とくに就寝前にコップ1杯(200ミリリットル)は必ず飲むべきだ。

《第3条》酒を飲んだら「入浴するな」!

 意外と知られていないが、正月の死因で多いのが入浴中の突然死。入浴直後には脳出血、入浴中には脳貧血や意識障害、入浴後には急性心筋梗塞と脳梗塞が起こりやすく、とくに飲酒後の入浴は危険だ。寒い脱衣場や浴室に入ると血管が収縮するし、身体を洗うなど身体を動かすことにより血圧は急激に上昇する。また、浴槽に入り湯に長くつかっていると血管の拡張が起こり、血圧は急激に下降する。「飲んだら入浴するな」を忘れずに。

《第4条》飲んだらセックスは「正常位」で!

 年の初めのセックスを「姫始め」と言って、ハッスルしすぎる向きがある。これは危ない。とくに飲酒後に女性上位のような刺激的な体位でセックスを行うと、突然死の原因になる。男性と女性とではセックスによる血圧の上昇度が異なり、女性の場合は平常血圧から約40ほど上昇するのに対し、男性は平均60ほど上昇する。つまり、男性の血圧は女性をかなり上回り、これが突然死を招く。飲酒後のセックスは、オーソドックスな正常位にしたい。

《第5条》モチが詰まったら「掃除機」を使え!

 正月のニュースでおなじみになった「おモチがのどに詰まって死亡」。実は、これは意外な方法で防ぐことができる。それは掃除機のチューブをのどに当てて吸引してしまうことである。消防署などでは勧めていないが、実は意外と効果がある。万が一の場合、知っておくといい。また、モチを食べる前にはお茶や水分を十分に取り、のどを潤して、通りを良くしておくことも忘れずに

《第6条》初詣では「アゴを引いて」!

 寝正月といっても、初詣でには出かける人は多い。ところが、せっかくの初詣でも人混みに押されて横転し、硬膜下血腫になるなどの例が報告されている。そこで、人混みではアゴを引いて歩くように心がけたい。こうすると身体のバランスがとれ、重心が安定するので、多少押されても平気である。



 いやいや、なかなかどうして、ためになること満載の記事ではありませんか。

 特に、酒を飲んだあとちゃんと水分補給するところや、入浴に要注意などは、いつでもいえますね。

 セックス中の平均血圧上昇の違いは知らなかった…。凄いですね、これ考察した人。
posted by さじ at 01:42 | Comment(1) | TrackBack(0) | 生理

2011新年のご挨拶

あけましておめでとうございます。

やー、今年は、忙しかった。
慣れていないというのもあるのでしょう。
多忙を極めました。

なかなか更新する暇がなく、申し訳なかったです。
家に帰るとすぐ寝る、そして起きるという生活でした。
それでも、細々と、ではありますが、できるだけ続けていきたい気持ちはあります。
継続していかないと、このサイトを作った動機である、
「多くの方にわかりやすい医療ニュースを」というコンセプトが、崩れてしまう気がして。

今年はもっと更新できたらいいな、と思います。
今年も医学処を、何卒宜しくお願いいたします。

医学処管理人 さじ
posted by さじ at 01:29 | Comment(4) | TrackBack(0) | 日記

この不況の中、やっぱり医師は高給求人が多い。

やっぱり医師は引く手あまた 高給求人ゾロゾロ

総合人材サービスのインテリジェンスは2010年10月1日、医師を対象とした転職支援サービス「DODAドクター」を開始する。転職希望の医師に対し、同社スタッフがキャリアカウンセリングを実施。スキルや経験、希望を踏まえて、転職先を無料で紹介する。

厚生労働省発表の統計によると、求職者1人あたりの求人件数である「有効求人倍率」は、「医師、歯科医師、獣医師、薬剤師」で5.61に上る(10年7月、パートは除く)。全体平均が0.39と低迷している中で、突出した求人過多の状況だ

・産業医として週4日勤務、日勤のみ(年収目安1000万円〜)
・消化器センターの拡大にあたり、内視鏡検査を行える医師(同1500万円〜1700万円)
・科の中心となる部長職での募集(同1800万円〜2000万円)
などの求人例が掲載されている。将来専門医の資格を取得し、キャリアアップができるポストへの求人募集もある。

医師の求人情報サービスとしては、ソニーグループが運営する「m3.com CAREER」が先行。20社の人材紹介会社と提携し、北海道から沖縄まで、常勤・非常勤の求人を約9000件掲載しており、医師は無料で利用できる。岩手県花巻市の病院からの、年収3000万円の求人もある。

医師不足の原因のひとつと指摘されているのが、「都市部への偏在」だ。地方の医師不足が進み、医療機関の経営や地域医療体制に支障が出ているところもあり、求人情報の充実による人材流動化が期待されている。



 最強の資格のうちの1つといわれるだけありますな。

 保健所の所長とかに納まったらもう一生食いっぱぐれないでしょうし。

 まぁただ、一般的には、他の職種の倍以上働いてるってのは、ありますけどね。土日もないし。
posted by さじ at 01:09 | Comment(1) | TrackBack(0) | 大学