2009年09月10日

大阪市立大学が「滑脳症」を薬剤投与で改善させることに成功。

難病「滑脳症」、薬剤で症状改善 大阪市大が動物実験

 大阪市立大学の広常真治教授と山田雅己講師らは、脳の「しわ」がなくなり重い知的障害などを起こす「滑脳症」の症状を、薬剤投与で改善する動物実験に成功した。有効な治療法のない同症の治療に将来結びつく成果で、米医学誌ネイチャー・メディシン(電子版)に7日掲載された。

 滑脳症の多くは神経細胞の移動に関係する「LIS1」というたんぱく質が健常者の半分しかなく発症する。遺伝性の疾患で、LIS1を作る遺伝子がうまく働かないのが原因。国内では新生児約1万5000人に1人の割合で発症する。



滑脳症:知能障害、てんかん伴う病気 酵素の働き抑える薬で、治療に光明

 遺伝子が欠けていることで起きる先天性の病気「滑脳症」について、大阪市立大の広常真治教授(分子生物学)と山田雅己講師らが、関係する酵素を発見し、この酵素の働きを抑える薬で症状を緩和できることをマウスの実験で確認した。治療法につながる成果という。米科学誌「ネイチャーメディシン」に7日、論文が掲載される。

 滑脳症は「LIS1」という遺伝子が欠けていることによって起き、発症は新生児1万5000人に1人程度。この遺伝子が作り出すたんぱく質が不足することで脳の神経細胞がうまく発達できず、通常6層の脳構造が4層になり、表面のしわができない。知能障害やてんかん、まひを伴い、治療法はない。

 広常教授らは、「カルパイン」と呼ばれる酵素が、この遺伝子が作るたんぱく質を分解することを確認。遺伝子操作で滑脳症にしたマウスの胎児に、母親の腹腔を通してカルパインの働きを抑える薬剤を注射で投与。すると胎児の脳構造が回復し、運動能力も通常のマウス並みになった



 胎児の段階から薬剤を注射すれば、脳機能が正常になると。先天性の異常であっても、このように早期から治療を行えばほぼ正常に育つケースは多くみられます。今まで治療不可能だった疾患の治療法を確立するというのは並大抵のことではありません。新生児1万五千人に一人というと、結構な頻度ですからね。

滑脳症

 滑脳症(lissencephaly)は、脳の表面に脳回がなく平滑であることを特徴とする発達障害疾患。2つの遺伝的タイプにわかれ、17番染色体上のLIS1遺伝子に異常を有する常染色体優性遺伝病とLISX 遺伝子に異常を有するX連鎖劣性遺伝病がある。前者はLIS1遺伝子領域を含む染色体領域が欠失していることが多く、その場合特有な顔貌を呈するため、Miller-Dieker症候群(MDS)と言われる。欠失は染色体FISH法で迅速に診断できる。突然変異による散発例が多く、次子に遺伝する可能性がほとんどないため、出生前診断を必要とすることはまずない。

 表面に脳回がなく平滑というモ滑脳モ所見は、通常MRIやCT検査で明らかにされる。MDS特有の顔貌所見とは、小頭、前額突出、前額性中部の背員上の隆起の陥凹(啼泣時に顕著となる)。精神遅滞は重度で、難治性のけいれんもほぼ必発。筋緊張ははじめ低下しているがのち亢進する.生命予後は不良。臨床症状は2つの遺伝的タイプ間でちがいはそれほどないが、脳回の平滑化領域は、LIS1が後頭部を中心に、LISXが前頭部を中心に見られる。

 病理学的所見としては、当初より、正常6層である灰白質が本症患者では4層しかみられず、発生の段階で脳室部から外側に向けて行われる神経細胞の遊走に異常があると推定されていた。微小欠失領域に存在し、転座例の切断点にも一致した遺伝子LIS1において複数の滑脳症患者が変異を有することが判明し、この遺伝子が本症の責任遺伝子であると確定した。

 本症患者はこの遺伝子領域の欠失もしくは変異で、正常産物が半量 しかつくられていない。したがって、正常な脳の発達には半量では不十分であることが明らかとなった。この機序として、LIS1蛋白がG蛋白のベータユニットをコードすることから、LIS1の異常によりG蛋白の多量 体構成に異常が生じるためと考えられている。
posted by さじ at 07:55 | Comment(1) | TrackBack(0) | 脳神

雪印が開発した乳酸菌は、肥満状態で落ちた免疫を改善する。

雪印など、独自乳酸菌に肥満で落ちた免疫機能の改善効果

 雪印乳業は信州大学と共同で、同社が独自開発した乳酸菌「ガセリ菌SP株」について、肥満状態で落ちた免疫機能を改善する効果があることを確認した。ガセリ菌は雪印が10月に経営統合する予定の日本ミルクコミュニティ(MC)が主力ヨーグルト商品に入れており、研究結果は今後、ホームページなどで周知する。

 雪印や日本MCはこれまでに、人間に実施した実験でガセリ菌に内臓脂肪を低減する効果を発見していた。今回、感染を防いだりアレルギーを抑えたりする抗体が肥満のため少なくなっているマウスの細胞に、ガセリ菌を添加して培養したところ、抗体の量が増加したという。



 ヨーグルトと免疫、というとやはりカスピ海ヨーグルトが有名ですね。

 カスピ海ヨーグルトは大ヒットしましたが、このガセリ菌もヒットなるか。モノが良ければ売れる、というのは当然の理屈だと思うので、雪印には頑張ってもらいたいですね。そろそろ本腰入れて雪印ブランドを再建してもらいたいです。

関連
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posted by さじ at 07:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 消化

2009年09月09日

太もものサイズが細い人は、寿命が短くなる傾向にある。

太もものサイズが寿命に関係、細ければ短命に=研究

 デンマークの研究者らが3日、太ももの細い人は、そうでない人と比べて短命になる傾向があるとの調査研究の結果を発表した

 英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルに掲載された同研究は、1987年と1988年に実施された大規模な医学的調査に参加した男性1436人と女性1380人を対象に、12年以上にわたって経過を追ったもの。

 太ももの外周が60センチ未満の人は男女とも12年以内に死亡した人が多く、46センチ未満のグループでは、亡くなる確率がさらに高かったという。

 これまでに発表された多くの研究では、体のどの部位に脂肪が付くかが健康に大きく影響するという結果が報告されており、ウエストの周囲と内臓脂肪の関係などが指摘されてきた。

 デンマークの研究者らは、太もものサイズも同様に健康のバロメーターになる可能性があると期待している。一方、オーストラリアのイアン・スコット医師は、今回の統計は対象が極めて限られていると指摘。太ももサイズを健康の指標と認めるためには、さらに大規模な調査が必要だとしている。



 内臓脂肪型ではなく、下半身肥満型のほうが寿命は良い、ということでしょうかね。目にみえる太ももの太さよりも、内蔵に蓄積された脂肪のほうが予後は悪い、と。。。

 メタボリックシンドロームも、簡便にリスクをはかるための基準として広く普及しました。それと同じように、太ももの長さによる基準ができれば、より警笛をならすことができるかも。
posted by さじ at 22:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 内分

糖尿病患者由来のiPS細胞から、膵臓の細胞を作ることに成功する

糖尿病患者由来のiPSから膵臓細胞…日米チーム

 1型糖尿病の患者由来の新型万能細胞(iPS細胞)から膵臓の細胞を作ることに米ハーバード大や松本歯科大(長野県)など日米合同研究チームが初めて成功した。

 成果は、米科学アカデミー紀要電子版にこのほど掲載された。

 1型糖尿病は、血糖値の上昇を抑えるインスリンを作る細胞が、免疫異常などによって破壊され、発症する病気。できた膵臓細胞からはインスリンの分泌も確認された。糖尿病治療への応用が期待される。



 おおー。あとは倫理的に、iPS細胞を使った臨床研究が行えるかどうか、のラインだけですねぇ。実際にこの技術が出来たら、多くの患者さんが救われると思います。糖尿病と1口にいっても、その影響は体中に及びますから。例えば腎臓も、糖尿病が改善すれば予後が良くなりますし。

関連
医学処:難病の解明のために、iPS細胞を用いる。
医学処:遺伝子を注入するだけでβ細胞を作り出す技術。
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posted by さじ at 05:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 内分

海上自衛隊の医師、金井宣茂さんを宇宙飛行士候補へ。

海自の医師を選抜へ=宇宙飛行士候補を追加−大西、油井さんと訓練・宇宙機構

 宇宙航空研究開発機構は7日までに、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在する宇宙飛行士候補として、新たに海上自衛隊第1術科学校(広島県江田島市)所属の医師で、一等海尉の金井宣茂さんを選抜する方針を固めた。8日に正式決定し発表する。

 医師出身の宇宙飛行士は向井千秋さん(57)、古川聡さん(45)に続き3人目。

 関係者によると、金井さんは2月に約10年ぶりに選抜された元全日空パイロット大西卓哉さん(33)、元航空自衛隊パイロット油井亀美也さん(39)らとともに、最終候補に残った10人のうちの1人。

 9月にも渡米し、米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士養成コースに合流する。約2年間の訓練で正式に宇宙飛行士に認定された後、ISS長期滞在の機会を待つ。

 宇宙機構は当初、大西さんら2人の採用で2015年まで予定されているISS運用に必要な長期滞在要員は確保できたとみていたが、今年7月に開かれた宇宙機関同士の会合で、日本の飛行士の数が各国に比べ少ないことが判明。15年までに数回の長期滞在の権利があることや、15年以降のISS運用延長の可能性もにらむと、人員不足に陥る恐れもあり、30代前半と若い金井さんの追加を決めた。



 っていうか、向井さん、もう57歳になられたんですね。時代を感じてしまいますなぁ。

 向井さんフィーバーだった頃、夫の向井万起男さんを知りまして。向井さんもなかなか個性的だと思いますが、万起男さんの書物「君について行こう」はかなり面白く、名著だと思います。

 向井万起男さんもかなりお年をめされましたね。向井さんフィーバー時の強烈な印象から一転、ほど良い感じの博士って容姿になられましたね。

 個人的にこういう面白い人は好きなので今後とも多くの書物を発表してほしいなと思います。

 海上自衛隊の金井宣茂さんにも頑張ってもらいたいですね。医師と宇宙飛行士、そして自衛隊員としての人生を垣間見せていただけたら、と思っております。
posted by さじ at 05:08 | Comment(1) | TrackBack(0) | NEWS

年齢とともに増加し免疫力を低下させる特殊な「悪玉リンパ球」

悪玉リンパ球:京大大学院が発見 「若返り」可能に?

 京都大大学院医学研究科の湊長博教授(免疫学)らの研究グループがマウスを使った実験で、年齢とともに増加し免疫力を低下させる特殊な「悪玉リンパ球」を見つけ、7日付の米科学アカデミー紀要(電子版)に発表した。悪玉リンパ球の除去がヒトで可能になれば、がんの免疫療法の効率化や高齢者の感染症予防、「若返り」にもつながるとして注目される

 外部から病原体が侵入すると、胸腺で生まれる「Tリンパ球」が働き、体を守る。研究グループはマウスのTリンパ球から、免疫反応をしない上、がん悪化の原因物質を作るPD−1陽性Tリンパ球(悪玉リンパ球)が生まれることを発見した。



 へぇー。面白い発見ですね。

 Tリンパ球なのに免疫に関連しない、どころか、自身の細胞を癌化させる物質を作ってしまうとは。こういうリンパ球が実際に老化によって悪さをしているということが証明され、改善する治療がみつかれば、高齢者に多いとされる悪性疾患のいくつかの予防に繋がるかもしれません。結構大きな発見だと思います。
posted by さじ at 04:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 内分

アルツハイマーの誘引3遺伝子を英仏チームが発見する。

アルツハイマーの誘因3遺伝子を特定、原因解明に光

 アルツハイマー型認知症の誘因と考えられる3つの遺伝子変異を英仏の2つの研究チームが発見し、6日付の科学誌「ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)」にそれぞれ発表した。診断ツールとして、また発症リスクの高い人の生活設計を補助する上で有益とみられる。また、欠陥遺伝子に作用する新薬の開発も期待される。

 認知症の最大の原因であるアルツハイマー病には強い遺伝性があると考えられているが、原因遺伝子の詳細や発症の仕組みはほとんど解明されていない。

 若年期に発症する家族性アルツハイマー病については、これまでに3つの原因遺伝子が確認されたが、家族制は全アルツハイマー病患者の3%にも満たない。一方、60歳以降で発症する一般的なアルツハイマー病で特定されている原因遺伝子は、1993年に発見された「APOE4」のみだ。

 今回、英、米、仏、独、アイルランド、ベルギー、ギリシャの大学の研究者による共同研究チームと、フランスの国立保健医学研究所の研究チームとは、計3万6000人のDNAを調べ、アルツハイマー病患者に見られる3つの遺伝子変異を新たに特定した。このうち、CLUとCR1は脳内のアミロイド班を除去する働きを持つ遺伝子とみられ、これらが変異することによって脳内に有害物質が蓄積され、アルツハイマー病の誘因となると研究チームは考えている。

 もう1つの新遺伝子PICALMは、神経細胞間でシグナルを伝達するシナプスの活動に重要な脳内化学物質を制御し、記憶の形成などの脳の機能をを補助する役割を果たしている。

 英研究チームに資金援助している英NGO「アルツハイマー・リサーチ・トラスト」のレベッカ・ウッド(Rebecca Wood)代表は、「新遺伝子の発見は、認知症の研究にとって大きな飛躍だ」とアルツハイマー病の解明に期待を示した。



 アルツハイマー病の研究もここ何年かで飛躍的に進歩しましたね。

 新たに発見された遺伝子、それ関連の研究が進めば、アルツハイマー病すらも治療によって克服することが出来るようになるかもしれません。そう遠くない未来に。
posted by さじ at 04:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | 介護

軽い運動で筋力増大、加圧トレーニングのシンポジウムが開催

軽い運動で筋肉増強 加圧トレーニング 東大でシンポ

 ベルト状の加圧器具で腕や脚の付け根を押さえながら運動を行う「加圧トレーニング」のシンポジウムが東京大で開かれ、健康や医学面からの効果が報告された。

 同トレーニングは、適正に行えば軽い運動で筋肉増強の効果が出ると注目される。同大の石井直方教授は「最大筋力の二割、つまり日常生活程度の運動で筋肉を太く強くする効果が出る」と研究の成果を説明した。

 効果を生む詳しい仕組みは未解明。血流が抑えられて筋肉が酸欠になるなど、激しい運動と同様の状態になるためとみられる。高齢者の筋肉強化や宇宙での萎縮防止にも応用が期待される。安全なトレーニングのため指導には資格が必要だ。

 同トレーニング開発者の佐藤義昭氏は「米国や中国でも研究が始まった」と、国際的に効果や安全性の研究が盛んになりつつあると強調する。

 加圧トレーニングを高度先進医療として推進するスリランカからニマル保健・厚生相が招かれ「治療より予防が重要。加圧トレーニングの開発は非常に意味がある」と述べた。



 確かに、過度な運動を行わなくても、日常の活動程度の負荷で筋力が増強するのであれば、スポーツマンに、というより、高齢者やあまり動けないような人たちに有用ですね。筋力の低下というのは思っている以上に活動を制限してしまいますし、活動が制限されると認知力などにも影響してきますので。

 とはいえまだまだ発展途上な医学でもありますし、行うにはそれなりの知識と技術が必要です。全国的に、介護の分野などで応用されるとすごく面白いですけどね。

関連
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posted by さじ at 04:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 介護

女性は太古から遺伝的に怖がりになっている。

女性は太古から怖がり屋=「遺伝的に怖がりになっている」―米国

 もしも目の前に突然大きなクモが現れたら、大声を出して逃げ出すのは圧倒的に女性が多いだろう。最新の研究結果によると、女性が危険動物に感じる恐怖は遺伝的な傾向が強いことが分かった。捜狐科学が伝えた。

 米カーネギーメロン大学の発達心理学の専門家、David Rakison氏の研究で明らかになった。実験では11か月の男女10人ずつの赤ちゃんに恐ろしいクモの絵を見せてから、笑顔のクモの絵を見せ、最後に綺麗な花の横に恐ろしいクモが描いてある絵を見せた。すると、女の赤ちゃんは綺麗な花より恐ろしいクモの方に注意を向ける時間が長かったが、男の赤ちゃんは両方ほぼ同じだった。このことから、女の赤ちゃんの方がクモ=怖いといイメージを持ちやすいことが分かった。

 Rakison氏はこの結果を受け、太古の昔に狩りが男の仕事だった名残だと指摘した。進化の過程で、男性は狩りを成功させるため冒険心をより豊かにし、女性は危険動物から身を守るためより強い恐怖心を感じやすくなったのだという。



 つまり私も太古の昔にさほど狩りもせずアレしていたということでしょうか・・・

 いや、危険動物を怖がるということは、ですよ、現代社会においても生き延びる確率が高まるということです。そう、本能的にも逃げる術を忘れていないだけなんですよ。蜘蛛嫌いだっていいじゃない!

 先端恐怖症も、刺されることに恐怖を覚えるのは当然のことですしね。まあ何事も恐れすぎるというのはいかんですが。私も最近は2cmぐらいの蜘蛛ならば特別怖いと思うこともなくなりました。先日5cmの蜘蛛をみたときは脱兎のごとく逃げましたが。

アラクノフォビア関連
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2009年09月08日

短眠の理由を遺伝子変異によって説明する。

睡眠時間が少なくても大丈夫な人もいる

 6時間の睡眠でも十分という人がまれにいるが、その理由を遺伝子変異によって説明できることが新しい研究で示された。研究著者の1人、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)神経学教授のYing‐Hui Fu氏は、この研究によって、最終的には睡眠時間が少なくてもいいようにヒトの身体を操作する安全な方法を開発できる可能性があると述べている。

 Fu氏は「6時間以下の睡眠でも悪影響なく過ごせる人が約5%いるが、ほとんどの人にとっては8〜8.5時間の睡眠が最善である。われわれは人生の3分の1を眠った状態で過ごし、それが生きるために必要であることはわかっているが、必要な睡眠量を何が制御しているのかは明らかにされていない」という。

 今回の研究では、睡眠を約6時間しか取らない母と娘のDNAを調べ、他の家族のものと比較した。その結果、この母と娘には共通する遺伝子変異がみられたが、この2人以外の家族のメンバーには変異はみられないことが判明。さらに、同じ変異をもつマウスは睡眠時間が少なく、睡眠不足からの回復も早いことがわかった。この変異が睡眠パターンに影響を及ぼす機序を明らかにすることによって、睡眠時間を減らすことのできる薬剤を作ることが夢だと、Fu氏は述べている。この知見は、米科学誌「Science」8月14日号に掲載された。

 別の専門家は「平均より睡眠時間が30〜60分短い人が最も長命であると示す複数の研究がある」と述べている。しかし、遺伝子の影響は一部に過ぎず、残り習慣や社会的立場、仕事、娯楽(運動、インターネット、遅くまでのテレビ視聴など)および環境によって左右されていると指摘し、遺伝子変異が睡眠に影響を及ぼしているとしても、それがその変異をもつ人にとって有益なものであるかどうかはわからないとしている。



 短眠は忙しい現代人全員の願いかもしれません。しかし無理をして睡眠時間を削ると良くない影響が多いのは自明。無理にやらず、体をうまく慣れさせることができれば、睡眠時間は減るかもしれませんが。神経学的な影響について切り込んだこの研究が実を結べば、無理をせずにうまく短眠な体質にすることができるのかも?

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posted by さじ at 14:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 生理

アスパラガスには癌抑制作用だけでなく二日酔い軽減作用もある

アスパラガスが二日酔いを軽減

 二日酔いの対処には、水をたくさん飲むこと、十分に休養することに加え、アスパラガスを食べるとよいという。新しい研究で、アスパラガス抽出物に含まれるアミノ酸とミネラルが二日酔いを軽減し、アルコールに含まれる毒素から肝臓を保護することが示された

 韓国、医科学研究所および済州大学校の研究グループは、ヒトおよびラットの肝細胞に対するアスパラガスの若茎(普通食べる部分)および葉(擬葉)の抽出物の作用を分析。「アスパラガスの葉および若茎の抽出物を投与すると、細胞毒性が有意に軽減した。この結果は、アスパラガスの生物学的機能によってどのように二日酔いが軽減され、肝細胞が保護されるかを示す証拠となるものである」と、研究を率いたB.Y.Kim氏は述べている。有益なアミノ酸およびミネラルは、若茎よりも葉の方に高い濃度で含まれているという。

 アスパラガスは世界の多くの国で食べられている野菜で、癌抑制、抗真菌、抗炎症および利尿などの作用があるとして長年利用されている。米ミシガンアスパラガス審議会(Michigan Asparagus Advisory Board)によると、葉酸、カリウム、繊維、ビタミンB6、ビタミンA、Cおよびチアミンも豊富に含まれているという。

 長期間アルコールを慢性的に摂取していると、肝臓に害をもたらす酸化ストレスの原因となる。また、飲みすぎると頭痛、悪心、下痢および口渇を引き起こすこともある。今回の研究は、科学誌「Journal of Food Science(食品科学)」9月号に掲載された。



 アスパラガス、日本ではどうなんでしょう、ある意味マイナーなんですけれど、あると嬉しい食材ですね。

 個人的に一番好きな調理法は、何と言っても串揚げです。アスパラの串揚げ。たまらんです。

 おいしいだけでなく、二日酔い防止作用もあるとのことで、今後はアスパラガスを発見するたびに積極的に食べるようにしたいと思います。

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兵庫県の豊岡病院、医師不足で耳鼻科救急を停止する。

豊岡病院:耳鼻科救急を停止へ 常勤医2人退職で /兵庫

 豊岡市戸牧の公立豊岡病院(竹内秀雄院長)は2日、耳鼻科の救急患者受け入れを12日以降停止すると発表した。耳鼻科の常勤医2人が今月末で退職するためで、常勤医不在の事態となる。

 これまで常勤医3人体制で診療してきたが、今年3月末、大学院に進むため1人が退職。今回辞める医師は、1人が開業、もう1人は県外の病院に移るという。豊岡病院は、医師派遣を受けている京都大医学部に補充を求めたが、今年中は無理と回答があった。

 入院や手術が必要な患者受け入れはすでに7月末に停止しており、10月以降は非常勤医師が外来診療を火〜木曜の週3回(火、水曜は午後のみ)行う。

 耳鼻科では1日平均2件の救急患者を受け入れ、昨年の手術件数は170件。但馬地区で耳鼻科の救急や手術の受け入れられるのは、公立八鹿病院(養父市八鹿町)だけになる。

 竹内院長は「京大に依頼して4月には後任を確保したい。豊岡病院組合の奨学金制度で但馬出身の医師が育っているので、将来的には医師不足は解消できる」と話している。



 耳鼻科というジャンルはかなり特殊で、内科的治療だけでなく手術も自身で行います。ですが当然、大きな病院で勤務している耳鼻科医でなければ手術は出来ません。開業に流れると、救急疾患に対応できなくなってしまうというのはありますね。勤務医が優遇されるような医療体制を整えることも、今後の日本の医療を守る上で必要なことでしょう。
posted by さじ at 02:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 耳鼻

医学生・研修医のための腫瘍内科セミナー

腫瘍内科医に求められるものとは

 8月1日,国立がんセンター中央病院(東京都中央区)にて「医学生・研修医のための腫瘍内科セミナー」が開かれた。このセミナーは,腫瘍内科の役割について学生・研修医により理解を深めてもらい,将来の抗がん剤治療を担う腫瘍内科医を育成する目的で2005年から毎年催されている。第5回となる今回は,北海道から沖縄まで,全国から70名近くの参加があった。

 まず国立がんセンター総長の廣橋説雄氏が挨拶。抗がん剤の奏効するがんの種類も着実に増加し,分子標的治療薬など新しいタイプの薬も次々と開発されている。ゆえにそれらを扱う腫瘍内科という分野には大きな期待が寄せられていること,さらにはがん治療の均てん化のために腫瘍内科医の需要が高まっていることを語り,本セミナーで,腫瘍内科へのモチベーションを高めてほしいと締めくくった。

 その後,医師,研修医,がん患者など7名が登壇。田村研治氏(国立がんセンター中央病院)は,抗がん剤の適応拡大や治療成績の向上に伴いその専門性も強まり,臓器横断的な治療を行うため腫瘍内科医が必要とされていると話した。氏は,腫瘍内科医にはまずEBMにのっとり患者を全人的に診られること,また分子生物学や薬理学,統計学に精通し,チーム医療の要となることが求められていると意見を述べた。

 金容壱氏(聖隷浜松病院)は,緩和ケア医でありかつ腫瘍内科医という立場から発言。腫瘍内科医は患者の延命という重責を担うなかで,情緒的消耗や,達成感の減退などのバーンアウト症状が出やすい。そこで氏は,腫瘍内科医も緩和ケアにおいて重要視されるコミュニケーションスキルを磨けば,より円滑に仕事に取り組めると提案。逆に緩和ケア医は,今ある痛みを和らげるだけでなく,診断時から終末期までを見通しつつ患者に合わせた治療方針を採るという,腫瘍内科医の展望的な視点を取り入れるべきとした。抗がん治療と緩和ケアの有機的な連携で,緩急をつけながら患者を治療していくことが重要だという。

 午後にはケースカンファレンスとグループワークが行われた。グループワークでは参加者は10班に分かれ,医師らとともに議論。ある班では「再発や副作用などのリスクも,臨床試験に基づいたデータもきちんと示した上で,患者に治療法の選択肢を提示できるのが腫瘍内科医」「腫瘍内科医をめざすなら,全身を診るので内科認定医レベルの知識が必要。初期研修でジェネラリスト研修をしっかり行ってから,がん拠点病院などで後期研修をすべき」といった話題が出され,参加者は熱心に質問・意見交換を行っていた。

 閉会に際しては国立がんセンター中央病院レジデント専門委員会委員長の飛内賢正氏が挨拶。腫瘍内科を学べる場も増えつつあるが,治療法の発達に伴って高まる患者の要望に応えられるよう,しっかりとトレーニングを積む必要性を強調した。



 日本では、例えば肺がんであれば呼吸器内科、肝臓がんであれば消化器内科が担当することが多いですが、やはり抗がん剤を扱うスペシャリストとしての腫瘍内科医は今後必要とされる分野でしょう。抗がん剤を扱える腫瘍内科医が増えれば、欧米のようにより多くの抗がん剤から選択して患者に合った医療を行えるようになるかもしれません。

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posted by さじ at 02:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | がん

島根県の外科医師養成に向け、島根外科ネットワークを設立する

島根外科ネット設立 専門技術学ぶ環境整備へ

 島根県内の20医療機関と島根大医学部、県が、島根外科ネットワークを設立した。外科医師の養成、働きやすい環境づくりの実現に向け連携する。

 出雲市で5日あった初会合には、県内全域から基幹病院の院長や副院長、県健康福祉部の錦織厚雄部長らが出席。会則を定め、代表世話人に中川正久・県参与を選んだ。

 県医療対策課によると、昨年10月現在、県内の病院勤務の外科医師は113人で、2年間で10人減。「松江、出雲両市を除くすべての地域で不足している状況」という。若い医師は、指導医がいて多くの症例を経験するなかで技能向上が図れる都市部の病院を目指す傾向が強いという

 組織の枠を超えて症例を学びあえる態勢をつくり、若い医師が専門的技能も身につけられる環境を整え、中長期的視点で医師確保に結び付けていくことを確認。事務局を島根大医学部の消化器・総合外科に置く。世話人会(5人)を中心に具体的事業を決めていく。

 会合では、県西部の病院が現在、直面している医師不足の早急な解決をネットワークの活動の柱にするよう求める意見も出された。発起人の田中恒夫教授は「若い研修医に専門医になれるんだ、という環境をアピールし、残ってもらえるようにしたい。ひいては各地域で外科医師が増えることにつながる」と話している。



 こういう画期的な案を待っていました。地方だからといって専門医療が都市部に劣るわけではないとは思いますが、都市部に比べると若手をひきつけるために本気で考えてこなかった感は否めません。

 こうやって、本腰入れて、若手育成のために組織が協力してネットワークを立ち上げる。素晴らしいことだと思います。案外都市部にいくよりも伸びるかもしれませんね。短絡的に考えるのではなく未来を見据えて行動することが大事です。
posted by さじ at 02:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 大学

勤務医の12人に1人が「うつ状態」になっている。

勤務医:「うつ」12人に1人 休日「月4日以下」46%

 日本医師会は、勤務医1万人を対象にした健康に関するアンケートで、勤務医の12人に1人が精神面の支援を要する「うつ状態」にあるとの分析結果をまとめた。休日や睡眠時間の少なさに加え、患者からのクレームなどの矢面に立たされることへのストレスが大きいとして、医療機関に医療事故や患者とのトラブルでは組織的な対応を取るよう求めていく。過酷な勤務実態を受けて、医師の健康面に特化した大規模な調査は初めてという。

 今年2〜3月、男性勤務医8000人、女性勤務医2000人に調査票を送り、3879人から回答を得た。

 最近1カ月の休日は46%が4日以下で、9%は「なし」。睡眠時間は6時間未満が41%を占め、20代では63%に上る。当直は45%が一度もなかった一方で、10%は1カ月で6回以上あった。患者対応では、46%が「半年以内に患者ら家族から不当なクレームを受けたことがある」と答えた。

 また、勤務医のメンタルヘルスについて「死や自殺を考えた」「自分を責めがち」など約30項目の質問の答えを点数化したところ、8・7%が「メンタルサポートの必要がある」と判定され、若い世代ほど割合が高かった。

 調査結果を受け、日医は近く、業務の効率化や院内暴力防止策などを促す冊子を作成して病院団体などに配布する。



 医者の過重労働、メンタル的に追い詰められるような職場は、最悪の結末を迎えるなら、それは「医療事故」です。医師にミスは許されないといいますが、それならば医師を追い詰めずに万全の体勢で医療を行えるよう、労働環境の改善や、患者やその家族から不当なクレームを受けないよう守るべきだと思います。

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posted by さじ at 01:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 精神

聖隷三方原病院で静岡県内初の院内助産所を開設する。

聖隷三方原病院で県内初の院内助産所 医師の負担も軽減

 病院内に助産所を設ける画期的な取り組みが、浜松市北区の聖隷三方原病院を皮切りに静岡県内でも始まっている。分娩を仕切るのは、産科医ではなく助産師。役割分担で医師の負担を軽減し、妊婦には家庭的な出産環境を提供できる。いざとなれば医師が駆け付けるため、安心感も強く、お産の選択肢が広がった。

 「初めてのお産だから、機械に囲まれた分娩室より、畳の上がよかった」。8月5日、同病院の院内助産所「たんぽぽ」が3月に開所してから50人目の赤ちゃんを産んだ愛知県新城市の団体職員松宮恭江さん(31)は、助産師の祝福を受けながら、笑顔が絶えない。

 「家にいる安心感で産みたい」と、助産所を選んだ。妊娠20週すぎから助産師がマンツーマンでケアし、陣痛やむくんだ体の対策など、どんな小さなことでも相談に乗ってもらったという

 院内だけに医療設備は整い、産科や小児科の医師の目も届きやすい。「助産師さんと信頼関係があったから、リラックスして身を任せられた。主人も座って落ち着いて立ち会え、きずなも深まった。2人目もここで産みたい」

 笑顔で振り返る松宮さんに、助産師の高林香代子担当課長らも「この信頼感やきずなこそ、私たちが求めているもの。出産は大変だけれど、一緒に乗り越え、いいお産だったと満足してもらいたい」とうれしそうだ。

 院内助産所は全国で広まりつつある。県内は、4月に浜松市中区の県西部浜松医療センターと清水町の静岡医療センターでも始まったが、聖隷三方原病院は「専属助産師を4人置き、医師が同席せずにこれだけの件数を担当するのは珍しいのでは」と話す。

 背景には、多様化するお産の要望に応えること、助産師の能力を生かすこと、そして多くの病院が抱える産科医の負担軽減がある

 同院の場合、最多時に7人いた常勤医師が、現在は4人。非常勤3人を加えて年間850件前後のお産を担当しており、院内助産所が担当目標に掲げる月30件は、大きな力となる。

 妊婦の安心を高めるための「次の手」も進む。7月末に導入した「産科セントラルシステム」だ。妊婦のおなかの張り具合や胎児の心音を、外来や病棟の産科医が画面上で見ることができ、医師側も「すぐに確認できるので安心」という。

 命だけでなく、心もつなぐ院内助産所。高林担当課長は「主体的にお産にかかわることができ、水を得た魚みたい。実績を積み信頼を得たい」と意気込む。宇津正二産科部長は「産科としても助かるが、みんなの達成感が違うのが一番」と手応えを語っている。



 異常な妊娠経過をたどるような妊婦さんの場合は、大学病院や大きな総合病院でみてもらう必要はありますが、そうでないのであれば、こういうお産のほうがより自然ですし、良い出産を迎えられると思います。

 助産師というのはやはり世間では町のおばあちゃんがやっているもの、というイメージが強いかもしれませんが、実際には大学で高度な産科の看護という学問を修めたスペシャリスト。高い能力とモチベーションを備えた人たちです。

 こういう院内助産所の開設こそが、今の産科医療を救う道ではないでしょうか。全国の病院で導入してほしい仕組みです。

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posted by さじ at 01:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小児

自衛隊病院の医官が民間の当直バイトで報酬を受け取る。

自衛隊病院の2医官を処分 熊本市、民間の当直バイトで

 自衛隊熊本病院(熊本市)は7日、民間病院から報酬を受け取り、私企業への関与を制限した自衛隊法に違反したとして、熊本病院に勤務するいずれも30代の男性3佐の医官2人を、それぞれ停職4日と5日の懲戒処分にしたと発表した。

 同病院によると、3佐の1人は昨年5〜12月、知人医師に頼まれ東京、千葉、埼玉の民間病院で計20回以上、当直などのアルバイトをして計約210万円を受け取った。この3佐はもともと関東の自衛隊病院に勤務しており、熊本に転勤した昨年8月以降も休日にバイトを続けていたという。

 もう1人は昨年8月からことし5月にかけ計10回以上、熊本県北部の民間病院で当直勤務し、計約140万円の報酬を受けたという。

 熊本病院会計課が7月、自衛隊の給与所得と税務署が発行した税額通知の総所得が一致しないことに気付き発覚。2人とも「知人の頼みで断り切れなかった。今後は勤務に専念したい」と話しているという。



 医官ですしね。防衛医大卒なんでしょうけれど、在学中から特殊国家公務員として色々優遇されているんで、ここらへんは我慢してもらいたい、のが現状だなぁ。
posted by さじ at 00:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | NEWS

歯科医の「痛かったら手を上げて」はどこまで通用するのか

歯医者の「痛かったら手を挙げて」

 歯医者で昔からよく言われるセリフに、「痛かったら手を挙げてください」というものがある。実際に手を挙げる人は少ない気がするけど、手を挙げたらどうなるの?

 日本歯科医師会に聞いてみると、「特に規則などはありません。歯科医が自分の判断で、自然に言うようになったものですね」と広報担当者。

 本来、「治療中は口をあけているため、合図を送る方法が手しかない」という理由から「手を挙げる」という手段が取り入れられたよう。だったら、表情でもわかるのでは?

 「お子さんなどの場合、言葉にできず、いきなり治療中に首を振るとか、器具をとろうとすることもあるので、大変危険です。そのため、合図を送ってもらうように『手を挙げて』と言うんですよ」

 ただし、大のオトナは痛くても、実際にはなかなか手を挙げにくいもの。手を挙げたら、その後はいったいどうしてくれるのか。

 「患者さんが手を挙げたら、いったん中断することが多いですね。『手を挙げて』と患者さんに言うのは、『痛かったらやめてくれる』という安心感を与えるためでもあるんです。また、痛いときは、麻酔があまり効いていないということになるため、麻酔をもう少し増やすなど、方法を考える必要もあるんです。これは患者さんにとって、とても大事なサインなんですよ」 

 昔に比べ、今は非常に細く丈夫な使い捨ての麻酔針ができたため、痛みが軽減している。また、接着剤の進歩によって、大きく削らずにすむようになり、「歯医者=痛いところ」のイメージは変わってきている。



 私もそうですが、日本人は我慢してしまいがちですからね。ある程度痛くても手はあげられませんよね。昔歯を削られているときに、ものすごい激痛といいますか、脳が痺れるくらいの痛覚の衝撃があったんですけれど、手はあげられず、耐えに耐えた経験があります。

 今だったら、手をあげて、麻酔してもらうと思いますけれどね。まあある程度の我慢は時として必要かもしれませんけれど、我慢しすぎて「あの治療は痛い」と思い込んで病院への足が遠のくぐらいだったら、遠慮せずに申し出ることも必要です。
posted by さじ at 00:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 歯科

2009年09月07日

メテナリンとウテメリン、取り違え防止のため名称変更へ

子宮収縮剤「メテナリン」…取り違え防止へ名称変更

 名称の語感が似ている別の薬との取り違えが問題視されていた子宮収縮剤「メテナリン」について、製造販売元のあすか製薬(本社・東京)は、商品名を変更することを決めた。

 正反対の薬効を持つ子宮収縮防止剤「ウテメリン」(製造販売・キッセイ薬品)との取り違え防止が目的で、近く新しい商品名で、改めて国に承認申請する。

 メテナリンは、出産後の止血や人工妊娠中絶などに使われる薬で、誤って妊婦に投与すれば、流産する危険性がある。これまで、妊娠中の女性にウテメリンと間違ってメテナリンを処方するなどの取り違えミスが起きていた

 類似名称による誤投与防止を目的とした薬の名称変更は、抗炎症剤「サクシゾン」との取り違えで死亡事故が起きていた筋弛緩剤「サクシン」が今年7月、「スキサメトニウム」に改められた例がある。



 記事タイトルをみた瞬間、「ウテメリンのことだろうな」と思いました。似てますもんね。

 こういう、薬の微妙な名称の違いを解消していくことも、医療ミスを減らす上では重要なことです。間違えやすいもの、間違ったことなどは逐一報告して、その都度解決策を全国の病院で広めていく。それが人の命を預かる医療従事者の務めです。

 記事後半にあるサクシンとサクシゾンの事故については下記リンクをご覧下さい。

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posted by さじ at 03:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 薬理

新型インフルエンザの国産ワクチンの治験を行う。

新型インフル国産ワクチンが治験へ

 厚生労働省は、国産の新型インフルエンザワクチンについて、国立病院機構で成人200人を対象に臨床試験(治験)を行う。

 国産ワクチンは、従来の季節性インフル用と同じ方法で作るため、法令上は新たな治験は必要ない。しかし、効き目が弱い恐れがあるため、通常の2倍量の接種なども試み、有効性と安全性の確認を急ぐ

 インフルエンザに対する基礎的な免疫は、毎年、ウイルスの体内侵入を受けることで、少しずつ高まる面がある。このため、季節性インフルのワクチンは成人には1回の接種で効くが、大半の人が免疫を持たない新型インフルは、ワクチンの効果が低い可能性があり、2回接種を予定している

 治験では、3週の間隔で2回接種し、各段階で免疫をどのくらい獲得できたかを調べる。また、半数の100人には通常の2倍量を接種する。効果とともに、発熱や腫れなどの副反応が従来のワクチンと大差ないかどうかを確認する。

 成人とワクチンの接種量が異なる12歳以下の小児についても、治験の実施を検討している。



新型インフルのワクチン接種…医療従事者を最優先へ

 新型インフルエンザのワクチンを接種する際、優先順位を医療従事者、持病がある人、妊婦、小児、乳児の両親とする厚生労働省の基本方針案が31日、明らかになった。

 これら約1900万人への接種が終わった後で、小中高校生、高齢者に接種する。政府の専門家諮問委員会などの意見を踏まえ、国民の意見を募集したうえで、9月中旬にも正式決定する。

 死亡者や重症者の発生を減らすことを目的に、健康に重大な影響を受けるおそれがある人を優先した。

 具体的には、〈1〉医療従事者100万人〈2〉持病(ぜんそく、糖尿病など)がある人1000万人と妊婦100万人〈3〉生後6か月〜就学前の小児600万人〈4〉生後6か月未満の乳児の両親100万人――を最優先接種者とし、この順で接種を実施。持病のある人の中では、小児を優先することにした。その後で小学生、中学生、高校生、高齢者の順に接種する。

 年度内に国内で製造できるワクチンは、想定よりも大幅に少ない1800万人分と見積もっており、最優先接種者に使用する見通し。不足分は輸入する方針だが、治験などを実施して安全性を確認し、問題がある場合には使用しない。



新型インフル予防接種、重症の恐れ1900万人優先

 厚生労働省は4日、新型インフルエンザワクチン接種についての最終方針案を公表した。必要としたワクチンは5400万人分。

 医療従事者と重症化しやすい人の合計1900万人を最優先接種者とし、この中での接種順位も示した。国民の意見を6日から1週間募り、政府の専門家諮問委員会に諮った上で、9月末までに正式決定する。接種は10月下旬から始まる見込みだ。

 ぜんそくや糖尿病など持病のある人の中では1歳〜就学前の小児を優先する。ワクチンで免疫がつきにくい乳児は両親に接種する方針で、当初は乳児の年齢を6か月未満としていたが、1歳未満に拡大した。

 年度内に国内メーカーが生産できるワクチンは1800万人分だ。10月下旬から供給が始まり、最優先接種者に接種する。不足する分は輸入し、小中高校生と高齢者に使う。ワクチン到着は12月下旬以降になる見通しだ。ワクチンは2回の接種が必要。1回目の接種から免疫がつくまでには1か月ほどかかる。厚労省の「流行シナリオ」では流行ピークを10月上旬としており、10月下旬から接種が始まるとすれば、ピークに間に合わない可能性もある。



ワクチン優先、透析患者ら「ひと安心」

 新型インフルエンザワクチン接種に関する厚生労働省の基本方針案が4日公表され、優先接種の対象となる腎臓病患者などからは歓迎の声があがった。

 感染すると重症化の恐れがあるとされる腎臓病や心疾患など持病がある人たちは約900万人。全国腎臓病協議会長で、自身も週3回透析を受ける宮本高宏さん(50)は、「1人目の死者が透析患者だったので、患者は不安を募らせていた。これで安心」と喜ぶ。ただ、同省の「流行シナリオ」では、ワクチン接種開始よりも、流行のピークが先に来る可能性が高く、「国は早く接種出来るよう対応を急いで」と要望した。

 臓器移植などを受け、免疫抑制剤の投与を受けている人も優先接種の対象に。その一人で京都市の中学校長、山本卓司さん(55)は、国産よりも副作用の懸念が強い輸入ワクチンに不安を抱いていた。方針案は、優先接種の対象者には国産ワクチンを使うとしており、「国産ワクチンでも腎臓がダメージを受けるかもしれないが、命にはかえられない」とやや安堵した様子だ。

 全国薬害被害者団体連絡協議会の代表世話人の花井十伍さん(47)は「安全性をおろそかにしてはいけない」と呼びかける。小中高生や高齢者には、輸入ワクチンが使われる見通しで、「接種を受けるかは本人が慎重に判断すべきだ」と語った。



インフル、新規患者数1週間で14万人

 国立感染症研究所は4日、インフルエンザについて、全国約5000医療機関を対象にした定点調査で、最新の1週間(8月24〜30日)の新規患者数は1万2007人で、1医療機関あたりの患者数は2・52人だったと公表した。

 前週(17〜23日)の1医療機関あたり患者数は2・47人で微増にとどまった。全国の新規患者数は推計で約14万人で、前週よりも1万人ほど減った。大半は、新型インフルエンザと見られる。



新型インフル、季節性より強力…米機関発表

 米国立衛生研究所(NIH)は1日、新型インフルエンザは季節性インフルエンザより感染力が強いとする動物実験の結果を発表した。秋からの本格的な流行では、新型が主流になる可能性が高いとみられる。

 米メリーランド大の研究チームが、イタチの仲間フェレットに新型インフルエンザと季節性インフルエンザを同時感染させたところ、新型だけがほかのフェレットに感染し、季節性は広がりにくかった。



 予防接種、本来なら全員に受けられるべきなんでしょうけれど、今までの新型インフルエンザの死亡者をみても分かりますように、腎臓が悪いとか、免疫機能が低下しているとか、そういう患者さんがかかったほうが命に関わります。弱っている人に医療を行わなければいけない医療従事者や、透析などを受けている、体の弱っている人が優先して受けるのはある意味当然といえば当然か。まずインフルエンザが流行しないように予防する意識をもって、国民全体で冬を乗り越えていきましょう。

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posted by さじ at 03:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 感染