2009年03月15日

SSRIを服用した患者に暴力性が高まる。

抗うつ薬で暴力など42件 厚労省が因果関係調査

 抗うつ薬の「パキシル」など4種類のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)を服用した患者に、他人に暴力をふるうなど攻撃性が高まる症状が表れたとの報告が2004年から昨年秋までに計42件、医薬品医療機器総合機構に寄せられ、厚生労働省は7日までに、因果関係の調査を始めた。

 メーカー側に見解を求めるとともに近く専門家の意見も聞き、攻撃性についての注意書きを盛り込む方向で、添付文書の改訂を指示することを検討する。

 厚労省によると、報告があったのはパキシル、ルボックス、デプロメール、ジェイゾロフトの4社4製品。42件のうち「人を殺したくなった」など他人を傷つける恐れのある言動をしたり、実際に暴力をふるったりした症例が19件。残る23件も、興奮して落ち着きがなくなるなどの症状が表れたという。

 因果関係は不明だが、うつ病を併発した認知症の70代の男性がパキシル服用後に妻を殺害するなど、刑事事件に発展したケースもあった。

 SSRIは、脳内の神経伝達物質セロトニンの濃度を調節して神経の活動を高める薬。三環系と呼ばれる従来の抗うつ薬よりも副作用が少なく、うつ病治療に広く使われており、国内でも推定で100万人以上が使用しているとみられる。

 厚労省は「うつ病以外の患者にも使われていなかったかなど慎重に調べたい」としている。



 薬による副作用なのか、それともうつ病以外の鬱状態の患者に投与してしまったために起こったものなのか、わからないのが問題ですかねぇ。

 うつ病に使う薬は、脳の伝達物質をどうこうするものなので、病気によって少なくなった物質を上げてやろうっていうものなんですけど、実際にそこに異常がない人に投与すると、こういった暴力性は出ないのかもしれません。


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2009年03月14日

変異型クロイツフェルト・ヤコブ病でスペイン人が死亡。

変異型クロイツフェルト・ヤコブ病で女性死亡 スペイン

 スペイン保健省は6日、牛海綿状脳症(BSE)に感染したウシなどから伝染すると見られる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)により、北部都市サンタンデルの女性が今年1月に死亡したと発表した。スペインのvCJDによる死者は、2005年以来5人目となった。

 スペイン国立狂牛病研究センターのホセ・バディオラ所長によると、亡くなった女性は昨年秋に入院していたという。

 2001年にスペインで最初に確認されたvCJDによる死者は、首都マドリード郊外在住の若い女性だった。2007年12月には北部レオン州で50代の女性が死亡。08年2月にレオン州で41歳男性が、同8月にこの男性の60代母親が死亡した。

 昨年亡くなった親子については、同一家族内からのvCDJによる死者として初めてと見られている。

 vCDJによる死者が出たこと受け、保健省は牛肉業界への風評を懸念。vCJDの発症までには10年近くかかることから、死者はいずれも9年前に欧州で基準が強化された以前に感染していたと述べ、流通している牛肉に問題はないと通達している



 あの非常に有名となったBSE問題、今ではどのようになっているのでしょうね。日本でもあと10年後ぐらいに再度問題になったりするのでしょうか、「発症」という形で。。。

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2009年03月13日

病院に勤める医者の5割近くが疲労が原因でミスをしそうに。

疲労でミス寸前、半数が経験

 滋賀県の病院に勤める医師の5割近くが、過去1年間に疲労が原因で医療事故やミスを起こしそうになり、7割超が以前より疲れやすいと感じている−。県がこのほど行った調査で、激務が指摘される勤務医の過酷な実態が裏付けられた。医師の使命感ややりがいについて、4割近くが「失われていく」と回答し、県は「地域医療を守るために、勤務医の負担軽減が必要だ」としている。

 医師不足などの実態把握を目的に昨年12月、県内全60病院の勤務医1469人にアンケートし、927人から回答を得た。都道府県単位で行政が全勤務医を対象に行う調査は珍しい。

 疲労から医療事故を起こしそうになったのは47%(434人)。最近1カ月の自覚症状について、最も当てはまる項目を問うと「以前と比べて疲れやすい」が「時々ある」「よくある」と合わせて73%(676人)に上った。「いらいらする」「朝起きた時ぐったりしている」「へとへとだ」なども60−70%が当てはまると回答した。

 週当たりの平均超過勤務時間では、20時間以上が25%もいた。1カ月の平均当直回数は「2−3回」が54%と最多だったが「5回以上」も16%。当直明けは83%が「通常勤務」で、当直からの連続勤務時間は「24−36時間未満」が60%、「36時間以上」も30%に上った。

 「患者や家族から暴言・暴力を受けたことがある」のは82%もおり、医事紛争経験者は21%だった。医師としての使命感ややりがいが増しているのは20%だったのに対し、「失われていく」と答えた人は37%。改善点としては「診療以外の業務を軽減」「休日の確保」「医師と理解し合える住民意識を醸成」を求める声が多かった。

 県医療政策室は「勤務医を守るためにも、医療機関の機能分化や連携など地域で医療を支える仕組みが求められている。調査結果の分析から県が目指す方向をしっかりと打ち出し、医師が働きたいと思える環境をつくりたい」としている。



 つらいもんですねぇ。現場の環境がここまで悪い職業というのもなかなかないのではないでしょうか。医療はサービス的な側面もありますけれど、患者さんや周辺住民との折り合いなどもありますからね。医者が働きやすい環境づくりをした病院が、この先生き残るような気がしますけども。

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2009年03月12日

国内トップレベルの開業読影医の生活を追う。

病巣、瞬時に「解読」 国内トップレベル「読影医」煎本正博さん

 レントゲンやコンピューター断層撮影(CT)の画像から、がんなどの病巣を見抜く「読影医」という専門医がいる。高度な知識と経験が要求され、独立して開業する読影医は国内でもわずか30人程度と言われる。中でもトップレベルと評価される煎本正博さん(58)を甲州市勝沼町の別宅に訪ねた。

 「3スラッシュ4の椎間板はさらに髄核の脱出が認められ、ヘルニアと診断されます」−−ブドウ畑を一望できる2階の仕事部屋で、モニターのCT画像を見ながら、煎本さんは手にしたマイクに向かって診断結果を読み上げていく。音声変換された文章が診断書に速やかに並ぶ。

 時間にしてわずか5分。診断書は即座にメールで依頼主の開業医に送られた。音声から文字への変換の正確さ、卓上に並ぶモニターの数々は、さながら近未来を連想させるが、まぎれもなく現代の医療現場の一つだ。

 煎本さんの仕事をサポートするのは「遠隔画像診断システム」だ。画像は勝沼の別宅や東京都国立市の自宅でも受信可能で、遠隔地からの依頼も瞬時に受けることができる。

 国内ではここ10年で急速に普及した。米国では、深夜や週末に救急患者が発生した場合、時差を利用してインドや豪州の読影医にメールで判断を仰ぐことも一般的という

 煎本さんは大阪府出身。順天堂大学医学部卒業後、都内の病院で放射線科医として勤務した。大学教員などを経て01年、読影医として独立し「イリモトメディカル」(東京都文京区小石川)を開業した。当時は読影のみで開業できるとは思われておらず、同僚の医師からは変わり者扱いされたという。

 だが、専門技術を広く提供すべきだと考えた煎本さんの考えは多くの開業医や地方病院から支持された。今では毎年10万件以上の依頼を受ける。「国内で撮影されているCTやMRI(磁気共鳴画像化装置)画像のうち、専門医が見ているのは6割程度にすぎません」(煎本さん)。画像診断料は1件2500〜3000円で、依頼した医師の負担になるが、見落としなどのリスク回避のため、積極的な依頼が多いという。

 煎本さんによれば、読影医の診断がより重要になるのは、膵臓がんや乳がん。膵臓がんは、痛みを感じるころには神経などに転移し、手遅れの場合がほとんど。自覚症状のない段階で読影医が見抜くことができれば早期に治療できる。

 乳がん診断の最新技術として導入されているマンモグラフィーは、画像の診断が難しく、正確に読み取れる医師が少ないという問題がある。専門の読影医であれば、がんか良性の腫瘍かを正確に判断でき不要な手術が回避できる。

 課題は最新の知識をどう確保するか。画像診断の技術革新は速く、2〜3年で古い知識は通用しなくなるという。煎本さんは学会への出席や、週に1度の救命救急センターでの勤務を続け、スキルアップに努めている。

 趣味のワイン用ブドウの栽培や息抜きのため、2年前に勝沼の高台に別宅を構えた。週に1〜2日を県内で過ごすのが楽しみだ。

 「すばらしい景色でしょ」と、煎本さんは笑顔を見せる。「自分の腕一つで世界レベルの仕事を供給できるのが魅力です。より多くの若者が放射線科医になれば日本の医療レベルは上がる。若者たちの目標になりたいですね」。ブドウ畑に落ちる夕日を見ながら目を輝かせた。



 日本でも近年急速に「放射線科医」というジャンルが進歩しつつあります。放射線科医というのはX線、CT、MRIの読影だけでなく、放射線治療も行うプロフェッショナルです。

 普通の内科医や外科医でもある程度までは画像診断できるのですが、放射線科医の読影スキルははるか上をいきます。ほんのちょっとした白黒の濃淡で「この疾患の可能性が高い」と診断する技術はまさにプロフェッショナルです。

 大学病院などでは放射線科医の診断を仰ぐこともできますし、定期的に放射線科医との合同カンファレンス等で意見を交わすこともできます。この画像診断レベルを日本全国で普及させようとするならば、やはりこういった、依頼を受けて画像を転送し、診断をしてもらうというシステムが広く普及する必要がありますね。

 もし欧米並みに放射線科医の必要性が謳われれば、放射線科医の開業というのも増えるでしょう。自宅にいながらにして医者の性分を全うするということは、育児を行う女性などにも人気が出そうです。

 見た感じで判断するということは、その人個人の能力に完全に依存するわけですから、日々の鍛錬が必要になってきます。プロ意識の高い人は放射線科医に向いているかもしれませんね。

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レーシック手術を受けるためのポイントをご紹介。

レーシック手術、安全に受けるには ポイントを紹介 

 レーザー光線を使って視力を回復させる「レーシック手術」をめぐり、東京都内の眼科診療所でこのほど、器具の滅菌が不十分だったことが原因とみられる角膜炎などの集団感染が発覚した。同手術は眼科手術の中では比較的簡単とされている上、痛みが少なく短時間で済むため、ここ数年で急速に広まっている。手術の仕組みや医療機関側の衛生管理、手術を安全に受けるポイントなどをまとめてみた。

 レーシック手術は海外で開発され、日本では二〇〇〇年に厚生労働省が手術に使用するレーザー装置を医療機器として承認。その後、一般にも普及してきた。日本眼内レンズ屈折手術学会(東京)によると、手術を受けられる医療機関は全国に二百以上あるとみられ、手術件数は推定で年間四十-四十五万件という

 レーシック手術は、レーザーで目のレンズの役割を果たす角膜の一部を削り、屈折率を変えることで近視や遠視を矯正する。目に痛みを感じないよう点眼麻酔をして行い、時間は二十-三十分。

 角膜(厚さ約〇・五ミリ)は、表面から順に、角膜上皮、ボーマン膜、角膜実質、デスメ膜、角膜内皮という五つの層で構成。手術ではまず、角膜実質のごく表面までの層を特殊な器具で薄くスライスし、ふた(フラップ)を作る。次にフラップをめくり、角膜実質にレーザーを照射。最後にフラップを元に戻すと、自然に接着する。保険が利かない自由診療で、治療費は施設によって異なる。普及に伴い、価格競争が激化しているという。

 東京都中央区保健所によると、集団感染が判明した診療所では、少なくとも患者六十七人が感染性の角膜炎や結膜炎を発症。医療器具の滅菌不足が原因とみている。問題はこうしたケースがどの程度発生しているかだが、厚生労働省医政局指導課は「医療機関側に報告義務がないので、分からない」という。

 手術では、角膜の表面に傷を付けるので、細菌やウイルスが入り込む可能性がある。同手術に取り組んでいる、あさぎり病院(明石市)眼科部長の藤原りつ子医師は「細菌などが混入すると炎症を起こし、角膜が白く濁って視力が低下。重症だと角膜移植が必要になる」と解説する。

 このため、医療機関では、クリップやコードなどの器具は高温高圧で滅菌し、角膜をスライスする器具については使い捨てにするのが必須。また通常、滅菌に必要な温度に達したことを示すインジケーターを導入し、滅菌装置の故障や不具合に備えているという。

 藤原医師は「感染症が起こる一般的な確率は、白内障手術で千人に一人なのに対し、レーシック手術では五千人に一人。安全性は比較的高いが、リスクはある。また、簡単といわれるが、手術に変わりない。医療器具の十分な滅菌は基本中の基本だ」と話す。

 一方、東京の眼科診療所で手術を担当した医師は、日本眼科学会が認定する眼科専門医ではなかった。同学会のガイドライン(指針)では、角膜の疾患などに精通した同専門医であることを手術担当者の条件に掲げる。

 同手術を手掛けている遠谷眼科(尼崎市)医師の遠谷茂院長は「目の疾患があったり、角膜の厚みが足りなかったりすると手術を受けられない。適応を見極める必要もある。治療を受ける際には、衛生管理の意識が高いことはもちろん、専門医であることも一つの参考にしてほしい」と話している。

 都道府県ごとの専門医は同学会のホームページから検索できる



 レーシックが広く普及し、価格も安くなってきました。しかし自費治療ということもあって、中にはお金儲けのような施術を行うところも増えています。非常に残念なことです。

 やはり口コミや信頼できるところをみつけてやってほしいですね。

関連:ずさんな滅菌処理を行っていた銀座眼科で感染性角膜炎。
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2009年03月11日

都心部の研修医募集定員を削減する方針。

研修医、都市から地方へ 地域別定員枠、5都府県で削減

 厚生労働省は2日、2010年度に研修を始める医師から導入される新たな臨床研修制度について、都道府県ごとの募集定員の上限案を公表した。研修医の都市部集中を解消するため、東京、神奈川、京都、大阪、福岡の5都府県の定員を08年度の採用実績と比べて削減。大阪の削減幅は最多の61人にのぼった。逆に医師不足に悩む地方の定員を採用実績の2、3倍にして研修医の地方誘導を狙う。

 研修医の募集定員は従来、病院側が自由に設定可能で、全国の定員総数は応募する応募者の約1.3倍まで膨らんだ。医学生にとって売り手市場となり、都市部の人気病院に研修医が集中。大学病院の医師が減少し、大学医局からの医師派遣が減ったことが地方の医師不足を顕在化させたとされる。

 そこで同省は定員総数を1.1倍程度に削減するとともに、都道府県ごとの上限も導入。都市部の病院を「狭き門」にすることで、若手医師が地方の大学病院や中核病院で研修するように促す。



 まぁ、いいんじゃないですかね。今まで多すぎるぐらいでしたし。都心部に人気が集中してしまうのはどうしてもしょうがないことでもありますし。

 ただ狭き門としたのならば、公正な選出が求められますよね。そうでないと地方の医学部に入学した人が都心部に出てこれないという事態にも。やはり最終的に決め手となるのは学力と人間力か。
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2009年03月10日

ロス手術で高校生を死亡させた心臓外科医が書類送検。

ロス手術高3死亡 心臓外科医を書類送検

 水戸済生会総合病院(水戸市双葉台、早野信也院長)で2004年、「ロス手術」と呼ばれる心臓手術を受けた鉾田市の高校3年石津圭一郎さん(当時18歳)が2日後に多臓器不全で死亡した問題で、県警捜査1課と水戸署が、執刀した心臓外科医の男性(47)を業務上過失致死容疑で水戸地検に書類送検していたことがわかった。

 捜査関係者らによると、大動脈弁が正常に閉まらず、心臓に血液が逆流する「大動脈弁閉鎖不全症」と診断された石津さんに、医師は04年7月、肺動脈弁を大動脈弁に移植し、肺動脈弁は人工血管などを縫いつけて代用する難度の高いロス手術を行った

 ところが、医師は切除した肺動脈に適合しない人工血管を使ったうえ、人工血管と肺動脈の縫合部付近に狭さくを生じさせ、血の流れが悪くなり、右心不全に起因する多臓器不全を引き起こし、2日後に死亡させた疑い。医師は「人工血管の選択は適切で、狭さくも手術中に回復させた」と容疑を否認している。治療には、一般的には大動脈弁を人工弁に付け替える「人工弁置換手術」が行われるが、血液を固まりにくくする薬を飲まなくて済むなどの利点があるロス手術が選択された。県警によると、医師はロス手術の経験が1例しかなかった

 石津さんの両親は06年、病院を運営する社会福祉法人「恩賜財団済生会」と医師を相手取り、計約1億1000万円の損害賠償を求めて提訴し、現在、水戸地裁で係争中。病院は「書類送検についてまったく把握しておらず、過失があったかも聞いておらず、コメントできない」としている。

 「多少は息子の無念を晴らせた気持ち」――。圭一郎さんの父親の洋さん(53)が鉾田市内の自宅で読売新聞の取材に応じ、心境を語った。

 1月末、県警の捜査員から、書類送検の準備が整ったという報告を受け、妻の百美子さん(50)と、すぐに遺影が飾られた仏壇に報告したという。「長く、苦しいつらい時間だった」と振り返る一方で、捜査の状況などを報告し続けた県警に対しては「良くやってくれたという思いでいっぱい」と感謝する。

 ただ、担当医や病院に対しては「あんな医者がいるのも許せないし、それを見抜けなかった病院の責任も重い」と怒りをあらわにする。手術前の「海外でロス手術の経験が20〜30回ある」という担当医からの説明が、事故後には「あれはロス手術の後の処置経験の回数だった」と変わり、「聞いていれば手術は頼まなかった」と語気を強めた。

 「手術が終わったら思い切り抱きしめようと思っていたが、出来なかった。それが悲しくて悔しい。民事裁判もきっと見守ってくれていると思う」と話すと、そっと仏壇に手を合わせた。

解説

 「明確な過失の立証には至らなかった」。

 県警は医師の過失を認定する一方、心臓外科医ら7人の専門家の意見では、明確な過失が裏付けられなかったとする意見を付したうえで、医師を書類送検し、処分を水戸地検の判断にゆだねた。医療過誤に詳しい加藤良夫・南山大教授によると、産婦人科医が逮捕され、無罪になった福島・大野病院事件以降、術者の判断ミスや微妙な手技ミスについて、検察は起訴を慎重に判断する流れになっており、今回の事故で水戸地検が起訴の判断を下すかどうかは微妙だ。

 ただ、警察はすべての医療事故を書類送検するわけではない。重大な事故でも、反省し、再発防止策が取られていれば、書類送検されないケースもあるという。県警が手がける医療過誤の案件は数十件に上る。そうした中で送検された重みを、医師も病院も真剣に受け止める必要がある。



 続報です。

 医学処:ロス手術後に死亡したとして水戸済生会総合病院を訴える

 とうとう書類送検。どうなるんでしょうね。

 外科医からすると、手術に「過失」があったかどうかは定かではない、と。ですが、患者の家族に手術経験が2、30例ある、と伝えている時点で十分医者としての過失があるように思います。

 医療面での過失と、インフォームドコンセントの関係から裁判は進みそうです。
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自殺の原因となる鬱病の「不眠」を見逃さないことが大切

自殺の原因 不眠見逃すな

 経済情勢の急激な悪化で働き盛り世代の自殺が増える恐れがあるとして、県は予防のための「睡眠キャンペーン」を展開する。新聞、テレビCMなどを通じ、自殺の前兆となる不眠を見逃さないよう呼びかける

 国内の自殺者は年間3万人を超え、県内でも2007年の自殺者は804人に上った。ここ10年は年間700〜800人台で推移し、交通死者の3〜4倍に上る。

 自殺の原因の半数を占めるとされるうつ病では、寝付きが悪い、朝早く目が覚めるなどの症状が2週間以上続く不眠がほとんどに見られる

 県はこの不眠に注目し、昨年2、3月、不眠への注意を呼びかける広報CMをテレビ、ラジオで放送した。

 06年度から、富士市をモデル地区に指定し、うつ病を早期発見する事業を全国に先駆けて展開している。

 県は不眠やうつ病への関心を高めようと、昨年放送したCMを10日から3月24日まで再放送するほか、新聞や地域FMで広報し、市町の窓口やハローワークなどで小冊子を配布する。

 県医師会に協力を求め、かかりつけ医から精神科医への治療につなげる紹介体制作りも目指す。

 新年度から、自殺予防対策の窓口となり、情報の収集や発信を行う「県自殺予防情報センター」を県精神保健福祉センター(静岡市駿河区有明町)に開設し、非常勤の自殺対策調整員を1人配置する。こうした自殺対策費として新年度予算案に約1800万円を計上した。

 県精神保健福祉室では「眠れているかどうかは家族や職場などでも分かりやすい。まず不眠に気づいてもらうことが重要」としている。



 うつ病の場合、周囲の人が気づきやすい自殺の兆候というと凄い不眠、ですね、やはり。一日の睡眠時間が極端に短かったりします。眠れないのはやはり辛いもの。適切な対処をすることが大事です。ヤバイなと思ったら気軽に病院へ。きっと助けになってくれるはずです。

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校長が職員の同意を得ずに精神科医に病状を聞きだす

無断で精神科医と面会の高校校長に勧告

 大阪弁護士会は9日、大阪市立の高校校長が、職員の同意を得ずに精神科医に病状を聞き出したのはプライバシーの侵害だとして、市教育委員会に勧告した。

 勧告書によると、校長は2004年5月、休みがちだった男性事務職員が通院していた病院に市教委の係長と行き、主治医と面会。「本人の同意を得た」と説明した上で病状を聞き出した

 職員は「了解していない」と8月に弁護士会に人権救済を申し立てた。

 勧告書で弁護士会は、健康情報の収集の際は本人の同意を得るよう求めている。



教員の「心の病」が止まらない

 文部科学省の調べによると、うつ病など「心の病」のために病気休職した教員は毎年数百人ずつ増え続け、2007(平成19)年度はついに10年前の3倍となりました。その数4,995人(前年度比320人増)で、約200人に1人の割合で教員が学校現場を離れたことになります。

 また、2007(平成19)年度は新人教員103人が「病気」を理由に1年以内に依願退職し、その多くが神経症やうつ病などストレス要因によるといいます。この4年前、病気理由は10人だったのですから、急増と言ってよいでしょう。

 こうした増加傾向は、何も学校に限ったことではなく、民間企業でも同じです。財団法人社会経済生産性本部のアンケート調査(2008<平成20>年)では、企業の56%が「心の病」は増加傾向にあると答えています。ただし、メンタルヘルス対策に力を入れていると答えた企業は64%に上ります。

 同じころ、文科省の委託で民間機関などが全国の教育委員会に聞いたところ、メンタルヘルスに「十分に取り組んでいる」が0.8%、「まあ取り組んでいる」が17.8%、合わせても2割に満たない結果にとどまりました。教委の79%が「必要である」と認識しながらも、「担当者の不足」(51%)、「予算がとれない」(50%)といった状況にあり、調査結果のまとめでは「基本的な体制づくりが現状ほとんどできていない」と厳しい評価を下しています。

 この調査では、ほかにも気になる数字が出ています。44%の教員が「1週間の中で休める日がない」と答え、62%が「児童生徒の訴えを十分に聴く余裕がない」「気持ちがしずんで憂うつ」「気がめいる」など、「うつ傾向」と関連が深い自覚症状を訴える教員が一般企業の2.5倍に上りました。教員のメンタルヘルス対策を急ぐ必要があると言えます。

 ただ、上述のように対策の進んでいるはずの民間企業でも、「心の病」は増加傾向にあります。メンタルヘルス対策を取り入れれば、すぐに解決する問題ではありません。うつ病には心因性・内因性・外因性とあってケースによって要因は違いますが、それが職場環境によるケースであれば、職場環境そのものを改善しなくては減らないという、ごく当たり前のことをもう一度見つめ直す必要がありそうです。



 完全なるプライバシーの侵害・・・。これはやっちゃいけないことです。精神科医も「本人の了解を得た」程度で教えてしまうのはいかがなものかと思いますが。

 ネットでもいえることですけど、なんかヤタラと患者さんのことを書きまくる医者ってのもいますよね。正直なところモラルがねぇなと思いますが。患者側が医者のことを書くならまだしも。

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映画「ジェネラル・ルージュの凱旋」で救命救急を観る。

 映画「ジェネラル・ルージュの凱旋」を観てきました。

 この映画は「チーム・バチスタの栄光」の続編です。原作では間に「ナイチンゲールの沈黙」が入るんですけれど、映画化されたのは第三弾の本作。

 チームバチスタの栄光は、ほとんどミステリー仕様となっていて、しかも「原作は面白いけれど映画はツマラン」という意見が圧倒的です。何故あの出来で、ジェネラル・ルージュの凱旋の直前にテレビ放送したのか。逆効果なのではないかと懸念していました。

 その予感は見事的中し、どうやら劇場の入り具合は案外良くないようです。私が行ったときも半分近くしか入っていませんでした。

 しかし・・・この映画は是非観てほしい、強くそう思うほどに面白い作品です

 もうね、久々に「邦画なのに面白い」と思いました。好き嫌いせず結構映画は観るほうなんですが、最近の邦画の不作っぷりには辟易としていて、この「ジェネラルルージュの凱旋」も全く期待せず(しかも「チームバチスタの栄光」を観ていたせいもあって)観にいったんですが、驚くほど面白い。

 原作ファンでも多分映画のほうが面白いと感じるんじゃないでしょうか。私は原作では「チームバチスタの栄光」が一番面白いと思いましたけれど、「ジェネラルルージュの凱旋」で伝えたいことが結構見事に映画化されてるかなと思います。

 この「ジェネラルルージュの凱旋」は、バチスタとは異なりミステリー色はほとんどありません。医療ドラマです。映画オリジナルの殺人事件はありますが、事件の真相などどうでも良いのです。ただひたすらに、救命救急をテーマにしたお話です。

 何といっても「ジェネラル」こと速水を演じる堺雅人の演技が凄すぎる。後半の救命救急のシーンでは何でか分かりませんが泣きそうになりました。感動シーンではなく、救急シーンで。ああ、ネタバレになりそうなので深くは言えませんが、邦画なのに、ここまで救急のシーンを迫力ある絵で描いているのも凄いし、その中心たるジェネラルの怪演っぷりが凄くて。

 チームバチスタの栄光とは切り離して、単体で面白い映画だと思います。前編みていなくても(前編みていないほうが)楽しめる映画だとも思いますので、是非ご覧下さい。ホント堺雅人には痺れます。ファンになるぐらい。

 舞台はどうやら埼玉医大や岐阜大学病院のようですね。とても綺麗な病院です。医療監修も力をいれているのか、ドレープのかけかたとか以外ではおかしな点は見当たりませんでした。「ジェネラル」の、リズムの取れた心臓マッサージは必見です。

 「ジェネラル・ルージュの凱旋」、全国劇場で公開中。マイケルムーアの「SiCKO」以来の超オススメ映画です。

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医学処:マイケルムーア監督作品「SiCKO」レビュー
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NHK「Q.E.D.」でペースメーカーについて訂正する

NHK、ペースメーカーめぐり字幕で訂正

 NHKのドラマ「Q.E.D.証明終了」の中に、心臓ペースメーカーの安全性について誤解を招く場面があった問題で、NHKは5日、同番組の放送後に字幕で訂正した。

 問題になった1月の放送では、心臓ペースメーカーが静電気で壊れ、装着していた人が死亡する場面が描かれたが、3月5日の放送後、ペースメーカーの安全性や耐久性は極めて高いこと、ドラマのような現象は「現実にはまず起こりえないと考えられる」ことを説明した。

 この問題は、ペースメーカーを扱う業者らでつくる協議会が「患者に不安を与え、一般視聴者にも誤った知識を植え付けた」として、NHKに訂正放送を求め、NHKは、番組ホームページの中でおわびの文章を載せた。



 電車内で通話するとペースメーカーが故障する、というのも誤った情報らしいですね。ペースメーカーに15cm近くても全く問題ないとか。

 そりゃペースメーカーをつけている人に対してはそれなりの対応をすべきですけど、誤った知識が普及するとペースメーカーを装着している人自身が不安な生活を送らなければなりませんからね。静電気を恐れていては何も行動できなくなってしまいますし。

関連
医学処:ペースメーカーがハッカーに悪用される恐れが生じている
posted by さじ at 08:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 循環

中性子でがん細胞だけを狙い撃ちにする新治療法を実用化

ホウ素薬剤+中性子、がん狙い撃ち 京大など実用化へ

 特殊な薬でがん細胞を探し出して、中性子でがんだけをねらい撃ちにする――そんな新しい放射線治療法の実用化に、京都大原子炉実験所や大阪府立大などのチームが今春から乗り出す。小さながんが多発したり、複雑に広がったりして、手術が難しい患者に効果が期待され、今年中の臨床試験を目指す。

 この手法は「ホウ素中性子捕捉療法」と呼ばれる。中性子をよく吸収するホウ素の働きを利用して、がん細胞をねらい撃ちにする。増殖の盛んながん細胞に取り込まれやすいホウ素の薬剤を患者に注射する。患部に中性子を照射するとがん細胞に集まったホウ素が核反応を起こし、細胞1個分の範囲が壊れる仕組みだ。正常な細胞にも微量の薬剤が取り込まれるが、線量の調整で周囲へのダメージは最小限にできるという。

 今回の共同研究で、住友重機械工業が中性子を照射できる約3メートル四方の小型加速器も開発。照射室も合わせ、大学病院などに設置でき、原子炉の設置も不要になった。将来は建物も合わせ、数十億円で設置できる見通しだという。

 また、大阪府立大とステラファーマ社(大阪市中央区)のこれまでの研究で、血液に溶けやすく、長期間保存できるホウ素薬剤を量産できる技術開発にも成功している

 同実験所の小野公二・粒子線腫瘍学研究センター長は「普及させるには、医療施設で中性子を扱える専門家が少ないことが課題だ。本格稼働を機に人材育成も進めたい」と話している。



 放射線科医の領域ですかね。最近は手術、化学療法に加えて放射線療法の進歩も加速しています。昔は放射線を照射しようとしても、他の健康なところまでヤラれてしまうことが懸念されていましたが、技術の進歩によってそれも改善されました。

 そしてこれは中性子。より強力に効果がありそうです。一口にがんといっても色々なケースが考えられますから、患者さんにとっては選択肢の1つとなる可能性も。

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iPS細胞で生まれたマウス、1年後に6割ががんになる。

iPSマウス、1年後6割がんに 京大・山中教授

 がん関連遺伝子を含む四つの遺伝子でつくった人工多能性幹細胞(iPS細胞)をもとにして生まれたマウスの約6割が、約1年後にがんになったことを、山中伸弥・京都大教授が5日、日本再生医療学会で明らかにした。

 4遺伝子をマウスの胎児の皮膚に導入してiPS細胞を作ったとする07年6月の論文で、それをもとにして生まれたマウスは約2割に腫瘍ができたと報告。学会で、1年後では発がん率は6割に高まったとした。

 がんに関連する遺伝子「c―Myc」を除いて3遺伝子でもiPS細胞を作れるが、成功率は100分の1に落ちる。山中さんは「c―Mycはがんの原因になるが、ないと不完全なiPS細胞になりやすいので、c―Mycが本当に悪者なのかは、まだ研究が必要だ」と話した。



 まだまだ難しそうですねぇ。

 まぁこれはiPS細胞をもとにして生まれたマウス、ということなので、iPS細胞を使った各部位ごとの臨床応用とはまた別物なんでしょうけれど。これはiPS細胞完成時に作られた、まだ発がん性もあるiPS細胞で生まれたものみたいですし。

 いずれはがん化する可能性のない、確実なiPS細胞をもとにしてマウスを作ることができるのでしょうね。倫理的にどうなるのかはまた先のお話。がんばれ山中教授。

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ノロウイルスの集団感染は煙草を口にもっていく動作が原因

喫煙者 ノロ感染しやすい?…発症率「非喫煙」の2倍

 ノロウイルスの集団感染が3年前に発生した岐阜県美濃加茂市の精神科病院「のぞみの丘ホスピタル」で、感染経路などを詳細に調べた結果、喫煙者の発症率が、たばこを吸わない人の約2倍だったことがわかったウイルスが指に付着したまま、たばこを口へ運んだためらしい。同病院の安藤正枝・看護部長が、横浜市で開かれた日本環境感染学会で発表した。

 同病院では2005年10月から06年2月にかけて、入院病棟(50床)など3病棟と、併設する老人保健施設(90床)で、ノロウイルスの集団感染が相次いで発生。患者、職員合わせて127人が発症した。

 調査の結果、3病棟でたばこを吸う職員の67%、老健施設では55%が発症。吸わない職員の発症率は各36%、26%だった。たばこを吸う人が多い慢性期病棟では、喫煙患者の73%が発症し、喫煙しない人の発症は29%にとどまった

 職員の喫煙場所は屋外、入院患者は喫煙室に限られ、ふき取り検査の結果、病棟や施設のカギ、喫煙室に備え付けのライターにウイルスが付着していたことが判明。これらに触れた人から感染が広がっていた。



 おお、なるほど。

 確かに指を口にもっていく感染経路の場合って、案外動作的には少ないですよね。煙草ぐらいですか。

 特に高齢者の多い施設や病院などではウイルスによる集団感染が起こりやすいです。その対策はまず「予防」。こういったケースを踏まえて、全国で集団感染を予防するようなマニュアルづくりが必要とされます。

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各自治体でケースワーカーが圧倒的に不足している。

生活保護支援 ケースワーカー悲鳴

 「自立支援まで手が回らない」「疲労困憊で、もう限界」。生活保護の申請急増で、自治体の現場から悲鳴が上がっている。読売新聞のアンケート調査でも、財政難などを背景に、職員(ケースワーカー)の補充が追い付かないという自治体が多い。家庭訪問など自立を後押しする取り組みが十分にできないという声も目立った。

 関東地方の自治体でケースワーカーをしている女性は昨秋、忘れられない体験をした。

 「最近、あの人見ないけど大丈夫?」。担当する60歳代の男性の住むアパートの大家から電話があった。

 1か月前に会った時、確かに顔色が悪く、「病院に行こうか」と尋ねたら、「自分で行くから大丈夫」と気丈に答えていた。

 アパートに行くと、男性は亡くなっていた。死後約3週間。身内はいない。警察が遺体を運んだ後、大家から「後片づけお願いね」と当然のように言われた。3時間かけて部屋を整理したが、警察官にも言われた。「なぜ病院に連れていかなかったの。ダメじゃない」

 自分がいけなかったのか、でも何ができたのか、と苦しんだ。

 それでも落ち込んでばかりいられない。担当になってまだ2年目なのに受け持ちは100世帯以上で、国の標準の80世帯を大きく超える。保護費の計算など事務量も膨大で、家庭訪問が手薄になる。精神障害者、独り暮らしの高齢者、元ホームレス……。対応が難しい受給者が増え、休日に「ATMの使い方がわからない」と連絡を受けて駆けつけることも。

 「相談に乗ってあげれば、自立できる人もいるのに手が回らない」。女性はこう話すと、「疲れた。1人で抱えるには限界を超えている」と訴えた。

 読売新聞が全国の政令17市と東京23区の計40自治体に、生活保護のケースワーカーが足りているかどうか尋ねたところ、「足りない」は7割の28市区に上った。「足りている」は8市区で、無回答は4市区。

 国が示すケースワーカー1人当たりの標準受け持ち世帯数は80世帯だが、昨年12月時点の受け持ち数を聞いたところ、90世帯以上という自治体が25市区。このうち6市区は100世帯以上で、最も多いのは台東区の111世帯。80世帯以下は2市区だけだった。

 この1年で受給世帯が1500以上増え、約2万3300世帯になった名古屋市。16か所の福祉事務所にケースワーカーが計216人(昨年12月時点)おり、1人平均で105世帯を受け持つ。市の担当者は「毎年10人程度増員しているが、全く足りない。現状では70人程度不足しており、各家庭を訪問する時間がない」と嘆く。

 1人109世帯を担当する東京都墨田区も「業務が追いつかず、ストレスから健康を害する職員もいる」。

 対応が難しい保護世帯の増加も負担を重くしている。東京都足立区は「多重債務や家庭内暴力、精神疾患などの問題を抱えるケースが増えており、ストレスから体調を崩す職員もいる」としている。



 難しい問題ですね。こういうところに労力を割けるほどお金もないんでしょうけれど…。ケースワーカーや介護福祉士といった「福祉」に関してまだまだ発展途上なところが日本の悪いところか。

 いや必要と分かっていてもお金をかけないという日本特有の風習がそうさせるんでしょうかね。社会のために、とはいいつつも結局は自分ひとりのお金さえ増えればいい、という感じで。それなのに麻生さんを叩きまくってるのもおかしい気はしますけどね。結局国民の意識の問題なのに。

 ケースワーカー

 主に自治体の福祉事務所に勤務し、生活保護や福祉などの分野で援護や育成を担う職員の通称。生活保護の場合、資産の有無や環境などを調べ、どのような保護が必要かを判断するほか、生活指導や自立支援も担う。民間施設などで入所者らの相談に乗る人を指すこともある。

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posted by さじ at 05:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 介護

がん検診を受ける人が減りつつある。

がん検診 受診者減った

 自治体のがん検診を受ける人が減っている。昨年4月に始まった特定健診・保健指導(メタボ健診)が足を引っ張っているという声も聞かれる。一体、何が起きているのか。

 香川県小豆島町では2月19日、お年寄りや主婦らが福祉会館を訪れ、検査衣に着替えた。昨年9〜12月の胃がん検診を受けた人が前年比6割減の484人となるなど、がん検診の受診者が激減したため、町が「異例」と言う追加検診に踏み切った。保健師の楠初美さん(49)は「メタボ健診に力を入れた分、がん検診の啓発がおろそかになった」と打ち明ける。

 メタボ健診は昨年4月、高齢者医療法で自治体などに実施が義務付けられ、受診率が低いとペナルティーもある。町は保健師による地区説明会を開き、約3700人の全対象者に案内を送った。一方で、がん検診は前年度行った個別案内をやめ、広報や防災無線で呼びかけただけだった。

 厚生労働省によると、がんで亡くなる人は年30万人超で、死因のトップ。だが、1982年度に始まった市町村のがん検診は、健康増進法での努力義務にとどまるため、自治体の関心がメタボ健診に傾いたらしい。

 「日本対がん協会」(本部・東京)の道府県支部に昨年4〜12月の受診状況を尋ねたところ、全国約900市町村から委託を受けている肺がん検診の受診者の減少は、前年同期の11%にあたる約27万人に上った。

 ここまで減ったのは、メタボ健診によるもう一つの影響とする見方も強い。

 メタボ健診の前身は、市町村の基本健診。職場で定期健診を受ける機会のない主婦や高齢者らも対象で、がん検診と同時に行っていた市町村も多い。ところが、メタボ健診は保険事業の運営者が実施。自営業者など国民健康保険加入者は市町村のメタボ健診を受けられるが、サラリーマンの妻は夫が勤める会社の健康保険組合で受けることになった。

 福島県猪苗代町は基本健診だった時と同様に、メタボ健診をがん検診と同じ会場で行った。すると、メタボ健診が受けられないサラリーマンの妻の中には「がん検診だけなら受けない」と怒って帰った人もいたがん検診も受けられなくなったと誤解して来なかった人もいたといい、胃がん検診の受診者は前年から500人以上減った。

 東北大の大内憲明教授(腫瘍外科)は「混乱は予想されたが、ここまで影響が出るとゆゆしき事態。メタボ対策ばかりでなく、がん検診も大切で、おろそかにしないためにも両立の工夫を」と話す。



 なんとまぁ。メタボリックシンドロームの啓蒙活動が裏目に出た可能性が。

 でもアレですよね、確かにメタボも大事ですけど、がん検診が大事なのは変わらないわけで。両方受けてもらうような機能的なシステムづくりが出来ればいいんですけど。

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posted by さじ at 05:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | がん

4月9日は子宮頚がん検診の日。女性は検診を受けよう。

語呂合わせで女性に訴え

4月9日(しきゅう) 子宮頸がんの検診
4月19日(よういく)(ひ) 離婚後の子の権利


 「49の日」、「419ひの日」など、女性に関係するユニークな記念日が、3月から4月にかけて続く。単なる語呂合わせにとどまらず、女性のためのメッセージを込め、各種イベントが行われる。

 農山漁村の女性の地位向上や活躍を推進する日として定められているのが、3月10日の「農山漁村女性の日」だ。農山漁村の女性の三つの能力(知恵、技、経験)を、トー(10)タルに発揮してほしいという願いが込められている。

 農林水産省が1988年に定め、22回目の今年も、東京都新宿区の日本青年館で記念行事が行われる。昭和女子大学学長の坂東眞理子さんらが女性の社会参画について討論するほか、各地で活躍する農山漁村の女性を表彰する。

 4月9日を「子宮の日」と称して、子宮頸がんに関する啓発を行っているのは、市民グループ「子宮頸がんを考える市民の会」。2006年に定め、「子宮頸がんは定期検診で防ぐことができる」として、チラシやグッズを配るなどの活動を続けてきた。

 今年は新たに「LOVE49」というキャッチコピーを掲げ、Tシャツやバッジを作成。4月9日を中心に、全国各地でキャンペーンを行う。

 「よういくひの日」は、ひとり親家庭を支援するNPO法人「Wink」が4月19日と定めた。離婚後の養育費の支払いや子どもと別れた親の面接交流を、子どもの権利として訴え続けている。今年で7回目。東京・芝の「女性と仕事の未来館」でイベントを開く。

 同法人は、今年のイベントに合わせて絵本「会えないパパに聞きたいこと」(太郎次郎社エディタス、1500円税別)とCD「だいじょうぶ」(1440円税込み)を制作。当日は、この曲のライブも予定している。



 癌は高齢者の病気ではありません。特に女性の場合は子宮や卵巣という大事な臓器をもっています。何の因果か、若い人にも癌が多く発生しやすいんです。

 しかし癌が発生したからといって、子宮を全部取らなければいけないということはありません。早期に発見しさえすれば、部分的に取るだけで治療することができます。そのための子宮がん検診なのです。

 特に20代の女性というのは、まだまだ他の国に比べて検診する人の数が少ないです。認識不足なのはどちらかというと国や医療機関の問題なのでしょうけれど、ここ数年、子宮がん検診をしようというキャンペーンは続々と行われています。

 若いから安心の時代は過ぎ去りました。特に20代、30代の女性の方々、どうか検診を。早く見付ければ心配なことはありませんから。医療のまず最初の治療は「予防」です。次の治療は「早期発見」です。早めに治療しましょう。

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posted by さじ at 05:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | がん

細菌性髄膜炎を予防するHibワクチンの供給が不足状態。

ヒブの予防ワクチンが不足

 子どもの細菌性髄膜炎を引き起こす「インフルエンザ菌b型(Hib=ヒブ)」の予防ワクチンが不足し、販売元の第一三共が先月から病院に対する供給調整を始めた。

 供給は月ごとに診療所で3人分、病院で10人分程度に限定され、希望者が多い地域では接種のめどが立っていない。患者家族や医師らで作る「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」は4日、供給不足を速やかに解消するよう求める要望書を、厚生労働省などに提出した。

 このワクチンは、昨年12月に販売が始まったばかり。同社では年間約100万本を供給する計画を立てていたが、販売開始を前にワクチンの認知度が急激に上がり、予想を大幅に超える接種希望が殺到。ワクチンとしては異例の供給調整を行う事態になったという。同社では、急きょ増産や輸入増を検討している。

 インフルエンザ菌b型は、鼻やのどなどにあるありふれた菌だが、脳の髄膜に感染すると髄膜炎を発症。5歳未満の乳幼児では2000人に1人の割合で発症し、患者の5%が死亡、25%に発達の遅れなどの後遺症が残ると言われている。接種費用は自己負担。



 まぁ販売が始まったばかりですからね。。。

 そりゃ親御さんなら誰しも、Hibワクチンを接種したいと思うでしょう。すぐにこの不均衡状態は改善されると思うので、いましばしお待ちいただきたい、というところでしょうか。

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posted by さじ at 04:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 薬理

iPS細胞で筋ジストロフィーを改善することに成功する。

iPSで筋ジス改善…京大

 全身の筋肉が徐々に弱くなる筋ジストロフィーのマウスに、新型万能細胞(iPS細胞)から作った筋肉細胞を移植して機能を改善することに、中畑龍俊・京都大教授らのグループが成功した。6日、東京で開かれた日本再生医療学会で発表した。

 根本的な治療法がない筋ジストロフィーの発症を抑えることができる可能性があるという。

 デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋肉の構造を維持するたんぱく質ジストロフィンが作られず、10歳ごろから歩行が困難になる。中畑教授らは、マウスのiPS細胞から筋肉を補強する細胞を作り、ジストロフィン遺伝子が欠損したマウスに移植した。

 この細胞は筋肉に接着してジストロフィンを分泌し始め、筋肉組織を6か月以上、安定した状態に保ち続けた。

 筋ジストロフィーの患者からiPS細胞を作製することにも成功しており、中畑教授は「iPS細胞でジストロフィン遺伝子を補い、早い時期に移植できれば、発症を数十年遅らせることができる」と話している。



 筋肉がヤラれていく筋ジストロフィーですが、iPS細胞を移植することでその筋肉細胞は見事に変性を阻止することができるらしいです。

 筋ジストロフィーの治療法がないだけに、これは大きな発展です。今まで神経内科のジャンルは、治療法がないというのが大きなネックだったのですが、iPS細胞で根本的に補ってやることで改善することができることが証明されました。

 しかし臨床応用にはまだ時間がかかりそうです。できるだけ早く治療に使えるといいんですけども。

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2009年03月08日

抑肝散でアルツハイマー病の神経細胞死を抑える

アルツハイマーには漢方!…阪大の研究で効果分かる

 幻覚や妄想などアルツハイマー病の周辺症状にも処方される漢方薬「抑肝散(よくかんさん)」に、症状の原因と考えられる脳の神経細胞死を抑える効果があることが、大阪大の遠山正彌教授、松崎伸介助教らの研究でわかった。

 漢方薬の効能の仕組みに迫る成果として注目される。

 松崎助教らが着目したのは、細胞内のたんぱく質の形を整える小胞体にある遺伝子で、遺伝性のアルツハイマー病患者に変異が多いプレセニリン1(PS1)。PS1が変異した小胞体は、神経伝達に重要なカルシウムの濃度変化に対応できず機能が低下、不完全なたんぱく質が蓄積して細胞死が起きる。

 実験では、PS1を変異させた実験用の神経細胞を使い、小胞体内のカルシウム濃度を変化させる薬剤を投与。約60%が死滅したが、抑肝散を加えると死滅率は約25%に減った

 抑肝散は子供の夜泣きや疳の虫などを抑えるために使われてきた漢方薬。遠山教授は「患者の多くを占める老年性アルツハイマー病も小胞体の機能低下が関係しており、今回の結果と同様の仕組みで周辺症状を抑えている可能性が高い」と話している。



 漢方、効くんですねぇ。病院でも処方されることは多々ありますが、実際に神経細胞の死滅を減少させるとなると、より臨床的な研究が求められるかもしれません。

 全然関係ないんですが、疳の虫、あれを抑えるために、なんていうんですかね、何か儀式的なことをすると子供の腕とかに白い糸みたいなものが出てきて、それを取れば治る、みたいのがあるらしいんですけど。あれは静電気で立った糸くずらしいです。その糸くずそのものに意味はなく、おそらくなんですけど、糸くずを出させるために身体を擦るといった行為が、疳の虫を抑えているんじゃないですかね。断定は出来ませんが。

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posted by さじ at 15:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 介護