2008年12月31日

2008年を振り返って。ご挨拶。

 今年もあと1時間で終わりです。

 毎年大晦日には、どんな医療ニュースがあったかなぁと振り返るのですが、

 今年はiPS細胞関連の研究と、福島大野病院事件の無罪判決が2トップですね、個人的に。

 メディアなどを見て思うのは、医者の過酷さや、無遠慮な患者を報じるニュースがようやく増えてきて、来年につながるかな、という感じです。

 医師、患者、両者にとって暖かい治療の場を全国で設けることができればいいなと思います。

 数多くのコメント、本当にありがとうございました。来年もできるだけ分かりやすく伝えていければと思っておりますので、どうぞ宜しくお願いします。

 よいお年を!

 医学処 さじ

医学処:開業医と勤務医が選んだ、2008年10大医療ニュースランキング
医学処:勤務医、開業医が選ぶ2008年医療界のキーパーソンは
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若いうちから運動をしているとアルツハイマー病になりにくい

脳への血流減少がアルツハイマー病の引き金、研究成果

 数年あるいは数十年にわたって脳の血流量が徐々に減少することがアルツハイマー病の主因の可能性があるとの研究が26日、発表された。

 アルツハイマー病については脳が損傷を受ける仕組みは良く理解されていたが、その原因はこれまで謎とされていた。今回の研究は、血液が脳に運ぶブドウ糖が少なくなると連鎖的に生化学的な反応が起こり、ニューロンを攻撃するタンパク質が蓄積してアルツハイマー病が発症することを示している。

 主執筆者のノースウエスタン大学(Northwestern University)のロバート・ヴァッサー(Robert Vassar)教授は「脳への血流の改善がアルツハイマー病の予防や治療に効果的な治療方法となる可能性がある」と述べた。

 同教授は脳の血流を改善するために若いうちから運動をしたり、コレステロールを取りすぎや高血圧に気をつけていれば、アルツハイマー病にかからずに済むかもしれないと語った。

 すでに動脈狭窄の兆候が出ている患者に対しては、血流を増やす血管拡張薬の投与が脳の栄養になる酸素とグルコースを脳に届ける助けになり得るという。



 やはり老人になってからどうこう、というわけではなく、若いころからの習慣的な運動、適正な食生活によって、将来アルツハイマーの予防になる、と。

 運動しましょう。コレステロールも気をつけましょう。若いころだから無茶できる、と言い続けて中高年になってからではもう遅いですよ。

医学処:6年以内にアルツハイマーを発症するかどうかが分かる検査法
医学処:アルツハイマー病を、臍帯血細胞で予防する。
医学処:アルツハイマー病は、記憶の形成維持プロセスに依存した疾患
posted by さじ at 19:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

昆布のグルタミン酸と鰹のイノシン酸で相乗効果が生まれる

うまみ:昆布、かつおだしの相乗効果…仕組み解明

 昆布だしに含まれるうまみ成分のグルタミン酸とかつおだしに含まれるイノシン酸を合わせると、うまみが増す「相乗効果」が起きる仕組みを、米国の研究グループが分子レベルで解明した。「米科学アカデミー紀要」に掲載された。

 人の舌の細胞表面には、味を感じる「味覚受容体」と呼ばれるたんぱく質があり、これまで、うまみ、苦み、甘みを感じる受容体が見つかっている。

 研究グループは、グルタミン酸とイノシン酸が「T1R1」という受容体に作用すると推測。この受容体は二枚貝のような葉を閉じて虫を補える食虫植物の「ハエトリグサ」に形が似ており、受容体のどの部分に結合するかを、人やラットで調べた。

 グループは、グルタミン酸は「ハエトリグサ」が開く際のちょうつがいの部分に、イノシン酸は先端の開閉部にそれぞれ結合することを突き止めた。イノシン酸が結合すると、閉じた構造になり、グルタミン酸が安定して中にとどまるため、うまみを増強させると結論づけた。

 味覚を研究している三浦裕仁・鹿児島大准教授は「受容体に働くうまみ増強物質を探せば、おいしさを増す調味料が開発できるだろう。また、甘みや塩味をより強く感じさせる物質を見つければ、食事の塩分や糖分を減らすことも可能だ」と話している。



 あー。おなかの空くニュース。

 食のおいしさってのを追求していくと、科学的なところにたどり着くのですけれど、それってやっぱり素材そのもののおいしさだとか昔ながらの料理の工夫に隠されているものだったりするんですよねぇ。

 甘みや塩味を強く感じさせる物質の発見にも期待です。

医学処:八丁みそを食べると学習能力が向上する。
医学処:6個目の味覚を新たに発見。その名も「カルシウム味」
posted by さじ at 18:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | 生理

多発性硬化症で髄鞘の自己再生能力が低下する原因を特定

多発性硬化症の治らない原因を特定―慶應大グループ

 神経難病・多発性硬化症に関する再生医薬開発研究に取り組んでいる慶應大医学部神経内科、解剖学教室の研究グループ(鈴木則宏教授・相磯貞和教授・中原仁講師)は、多発性硬化症で神経機能を支える髄鞘の自己再生能力が低下する原因を特定したと発表した。世界初の成果で、髄鞘再生医薬の開発が期待されるという。成果は、国際医学誌「The Journal of Clinical Investigation」誌2009年1月号に掲載された。

 多発性硬化症は、若年女性に多くみられる原因不明の神経疾患で、世界で約250万人、日本では1万2000人の患者がいる。脳、脊髄、視神経(中枢神経系)に病変が多発性に出現し、四肢まひや失明などさまざまな神経症状が一度に現れる。多くの患者が発病後、10年ほどで車いすや寝たきりの生活を余儀なくされる。

 多発性硬化症では、神経機能を支える髄鞘が20歳代後半から30歳頃を起点に、脳や脊髄などで多発性に崩壊(脱髄)し、神経機能に支障をきたす。その後は、平均して半年から2年に1度髄鞘の崩壊が起こり、神経機能は進行性に失われる。

 中枢神経系で髄鞘を形成しているのは、「オリゴデンドロサイト」と呼ばれる細胞。多発性硬化症の病変では、脱髄に伴ってオリゴデンドロサイトが死滅する。しかし、脱髄病変後も「未熟なオリゴデンドロサイト」である「オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)」は多数残っている。本来、OPCは能動的にオリゴデンドロサイトへ成長し、髄鞘をほぼ完全に修復する能力を持っている。多発性硬化症では、OPCが残っているにもかかわらず、なぜ能動的にオリゴデンドロサイトへ成長することもなく、また髄鞘を修復できないのかは解明されていなかった。

 OPCがオリゴデンドロサイトへ成長するには、その成長にかかわるDNA上の遺伝子情報を読み出すことが必要になる。DNA上の遺伝子情報を読み出す役割を担うのは転写因子と呼ばれるタンパク質群で、OPCがオリゴデンドロサイトへ成長する際に使用される転写因子は、NICDと呼ばれるタンパク質だ。

 OPCが脱髄した神経軸索を感知すると、OPC内部にNICDが出現する。NICDはOPC内部で、DNAが保管されている核の内部に入り、DNA上の情報を読み出すが、このためにはImportinと呼ばれる運搬タンパク質に乗って、核膜に空いた小さなゲート(核孔)を通る必要がある。

 研究ではまず、多発性硬化症脳を細かく解析。髄鞘の自然再生が成功したわずかな例外的病変のOPCでは、NICDが核内に移動して遺伝子情報の読み出しに成功しているのに対し、再生に失敗した大多数の病変では、NICDが核内に入れず、細胞質内に残っていることが分かった

 再生に失敗したOPCでは、NICDがImportinに搭載されるまでは成功していたものの、Importinの運搬能力を阻害するTIP30分子が異常に増加、結果的にNICDが核内へ移送されず、オリゴデンドロサイトへの成長や髄鞘再生に必要な遺伝子情報を読み出せなくなっていた。

 こうした研究の結果、多発性硬化症の脳において病変部位に髄鞘再生を妨げるTIP30分子が過剰に発現していることが、髄鞘の再生能力が乏しい原因と特定した。 今後、研究成果は発症により傷ついた髄鞘を修復し後遺症を回復させる「再生治療」に生かすことが期待される。



 なるほど!すごくわかりやすいです。

 しっかしこの問題も、1つのたんぱく質が関与していたんですねぇ。これだけ科学の発達した現代において、ようやくたんぱく質1つの機能などがわかり始めて来ました。一体生物はどこまで多様なのか、と。こんな細かい機能をもったたんぱく質の集合体がよくぞまぁ生き続けてきたもんだ、と。命の神秘を改めて感じてしまいます。

 慶應大学はこういったジャンルに非常に強い上に、再生医療も日本トップクラスの実力がありますからね。期待です。

医学処:多発性硬化症の視神経脊髄型にインターフェロンを用いて悪化
医学処:多発性硬化症はNR4A2という遺伝子を抑制すれば症状が軽快する。
医学処:多発性硬化症に白血病治療薬アレムツズマブが効く。
posted by さじ at 17:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

強い不安や緊張からくる症状を森田療法で改善しよう

脳と腸の密接な関係

 強い不安や緊張を長く感じると腹痛や下痢を起こしたり、腸にガスがたまり不快感に見舞われたりする。これは脳と腸が密接な関係(脳腸相関)にあるからだ。

 腸の運動を支配する自律神経を調整しているのが、脳の視床下部。緊張や不安に襲われると、個人差もあるが、この視床下部の情報伝達に乱れがでる。その結果、腸の活動に異変が生じるというわけだ

 特にストレスに過敏な人は、こうした過敏性腸症候群になりやすい。症状が気になると、それがストレスとなり、症状を悪化させる。悪循環だ。

 こうした患者の治療経験が豊富な東急病院(東京・大田区)心療内科の伊藤克人医長は、会議中におなかが「ゴロゴロ」と鳴ってしまったことをきっかけに、おなかの張りに敏感になった25歳の会社員女性の症例を紹介する。女性は、友人とお茶を飲んでいるときでも、おなかの張りを感じると、すぐにトイレに駆け込んで、おならを出し切らないと気が済まなくなった

 伊藤医長は、おなかの張りは心身症であると判断し、心理療法の一つである「森田療法」を実践指導した。不安や症状をあるがままに受け入れて、今やるべきことに集中する治療法で、神経症の治療などとして広がる。

 この女性は数か月後、おなかのゴロゴロは感じるものの、仕事や友人との会話など別の対象に注意を向けられるようになり、症状に対する苦痛や悩みが小さくなった

 伊藤医長は「重症例には抗不安薬などの薬物も処方するが、症状が完全になくなることはない。おなかの張り、おならとうまく付き合い、自分らしい生活を送るという視点が重要」と話している。



 西洋医学的な、抗不安薬の処方によって症状が軽減されることはあれど、なくなることはありません。所詮薬ですからね。そうではなく、もっと根本から、すなわち不安をどのように受け止めるか、という点から治療を行おうとするのが、記事中にもある「森田療法」です。

 日本人が開発して世界中で行われている治療法ですが、森田療法はきちんとやろうとすると非常に時間がかかる。入院が基本ですからね。まあそれでも治したいという人はおられるでしょうし、実際に数多くの人が「あるがまま」に生きることが出来ているわけですから。欧州では外来が中心のネオモリタセラピーが普及しているとか。

 人格障害がほとんど治らないように、人間の根元にある部分を修正するというのは並大抵のことではありません。私自身数多くの欠点はありますが、それを自分でどうこうすることは、出来ない。それを治療という形で少しずつ修正することのできる森田療法、今のストレスの多い社会にこそ必要とされているのかもしれません。

 お勧めのブログをご紹介。

 「神経質礼賛」。精神科医であり、森田療法に関して非常に詳しい四分休符さんのブログです。精神科領域だけでなく、芸術面においても膨大な知識と知的好奇心を有する四分休符さんは、自身を「神経質である」と認められています。ここでいう神経質のニュアンスは、一般の方のもつ神経質とは若干異なるんですよね。詳しくはこちらを

 神経質という気質をもつ方は、病気ではないにしろ、不安や緊張で生きづらい、と感じている人が多いと思います。そういう方はぜひ、神経質礼賛のバックナンバーをいくつがご覧になってみて下さい。心が軽くなるような、名記事揃いです。

医学処:ニートは発達障害という疾患である可能性が高い
医学処:書痙になりやすい人の脳は、運動や感覚を司る部位の組織が少ない
posted by さじ at 17:11 | Comment(2) | TrackBack(0) | 精神

免疫抑制剤が効かない移植患者に、抗がん剤ボルテゾミブを使う

抗がん剤「ボルテゾミブ」、臓器移植の拒絶反応抑制に効果

 通常の免疫抑制剤が効かない臓器移植患者に抗がん剤「ボルテゾミブ(bortezomib)」が有効であることが分かったとする研究結果が、27日の米学術誌『トランスプランテーション(Transplantation)』に発表された。

 米オハイオ(Ohio)州シンシナティ大学(University of Cincinnati)の研究チームは通常の免疫抑制薬が効かずに拒絶反応が起きた腎臓移植患者6人にボルテゾミブを投与した

 その結果、患者全員の拒絶反応が治まって臓器の機能が改善され、抗体レベルも長期にわたって低下し、少なくとも5か月間にわたり拒絶反応の再発を抑えることができた

 論文の共著者の1人、同大学のスティーブ・ウードル(Steve Woodle)氏は、「この結果は臓器移植と自己免疫疾患に重要な影響をもたらす」と述べている。研究チームは、今回の予備的な結果を発展させるため、現在4件の臨床試験を行っている。

 ボルテゾミブは副作用の予測と管理が可能である上、毒性もほかの抗がん剤よりもはるかに低いことが分かっている。



 ボルテゾミブ、多発性骨髄腫の治療薬であるベルケイドのことです。

 ベルケイドはプロテアゾーム阻害薬といって、プロテアゾームの機能を阻害して、異常なたんぱく質を増やし、がん細胞を死に追いやります。

 プロテアソームは正常細胞にもあるので、ベルケイドによって正常細胞が障害を受けることは十分考えられます。実際、ベルケイドには、強い副作用が報告されています。本来は多発性骨髄腫のような血液がんの状態に用いられるものですが、確かに免疫抑制のために用いるのも、理にかなっているわけです。白血球を攻撃することができるわけですからね。
posted by さじ at 06:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 薬理

習慣性流産の原因遺伝子を藤田保健衛生大学が突き止める

藤田保健衛生大・倉橋教授ら

 流産を繰り返し起こす原因となる遺伝子の一つを、藤田保健衛生大総合医科学研究所の倉橋浩樹教授(臨床遺伝学)らのグループが突き止めた。これまで習慣性流産(不育症)は大半が原因不明だったが流産の可能性を科学的に予測、効果のない不妊治療を避けることも可能になるという。成果は24日の米国の医学誌(電子版)に掲載される。

 ヒトは卵子、精子をそれぞれ生成する際に46本の染色体を23本ずつに分ける。マウスを使った研究で、卵子の染色体数を分けるのにかかわる遺伝子に変異があると、染色体の異常を起こしやすいことが分かっていた。

 倉橋教授らは、ヒトの染色体で同様の働きをする遺伝子「SYCP3」に注目。原因の分からない習慣性流産の女性26人についてSYCP3を調べたところ、二人に変異が見つかった。正常な出産だった150人でSYCP3を調べると異常はなく、SYCP3の変異が習慣性流産の一因と結論づけた

 倉橋教授は「今回、遺伝子に変異が見つからなかった習慣性流産の患者に別の遺伝子変異が見つかる可能性もあり、さらに研究が必要」と話す。

 3回以上流産を繰り返す習慣性流産は、全妊娠の1−2%ある



 おおー。流産は母体の因子がらみが結構ありますけれど、これも遺伝子として現れるんですねぇ。今後は、まずこの遺伝子を検索することも、不妊治療のひとつになるときが来るのでしょう。

医学処:24歳以下の妊婦ほど、妊娠中の喫煙率が高い
医学処:受精卵の遺伝病を調べる着床前診断は出生率が低い
posted by さじ at 05:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 生殖

2008年12月30日

妊娠時にビタミンDが欠乏すると帝王切開の確率が上がる。

ビタミンD欠乏症は初回帝王切開分娩のリスクの上昇と関連した

 妊娠中のビタミンD欠乏症が初回帝王切開分娩の確率の上昇と関連するという研究結果が、『Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism』12月23日付けオンライン速報版で報告された。

 「20世紀の初めごろ、女性が『くる病骨盤』のために出産時に死亡することは一般的であった」と、ボストン大学医学部(マサチューセッツ州)のAnne Merewood, MPH, IBCLCらは述べている。「くる病はホルモン『ビタミン』Dの発見によって実質的に姿を消したが、最近の報告では、ビタミンD欠乏症が先進工業国で広く認められることが示唆されている。筋力低下はビタミンD欠乏症の症状として確立されており、現在の米国における帝王切開による出生率は30.2%と高まるばかりである」。

 本研究の目的は、母親の血清中25水酸化ビタミンD[25(OH)D]レベルと初回帝王切開分娩の発生率との関連を明らかにすることであった。

 ボストンにある年間出生数が2500例という都市の大学付属病院において、治験責任医師らは、253組の母親と乳児のペアにおける出生時の母親および乳児の血清中25(OH)Dを測定したが、このうち43組(17%)が初回帝王切開分娩であった。母親の医療記録から人口統計学的データと医学的データを抽出した。

 帝王切開分娩率は、25(OH)Dレベルが37.5nmol/L以上の女性では14%であり、血清中25(OH)Dレベルが37.5nmol/L未満の女性では28%であった(P=0.012)。人種、年齢、教育レベル、保険加入状況、およびアルコールの摂取について調整した多変量ロジスティック回帰分析によると、25(OH)Dレベルが37.5nmol/L未満の女性は25(OH)Dレベルが37.5nmol/L以上の女性と比較して、帝王切開分娩のリスクが4倍近く高かった。

 本研究の限界には、ビタミンD欠乏症が児頭骨盤不均衡または分娩進行停止のような特定の種類の帝王切開分娩に関連するのかどうかを明らかにするには症例数が少なすぎることが含まれる。

 「ビタミンD欠乏症は初回帝王切開の確率の上昇と関連があった」と研究著者らは述べている。「血中濃度が37.5nmol/Lを超えるようにするための、妊娠中の適切なビタミンD補充によって、帝王切開率を下げることが可能かどうかを明らかにするため、ランダム化臨床試験が今すぐ必要である」。



 いわゆるくる病のようなものとは違って、母体側の問題なんでしょうかね。母体側の骨盤の大きさの問題か、開大の問題か。

 まぁ帝王切開もかなり安全な技術になってきていますけれど、やはり正常分娩が一番なんですかね。生き物としてはそりゃ正常分娩のほうがいいのかもしれませんが(子供を産むときにいろいろなホルモンが母体に分泌されることでどうのこうの、という説もありますので)

医学処:ビタミンDの摂取で、多発性硬化症を予防できるかもしれない
医学処:母乳栄養の赤ちゃんはビタミンD不足にご注意。
医学処:ビタミンD値が低い人は心臓発作を起こす確率が高くなる
posted by さじ at 23:43 | Comment(2) | TrackBack(0) | 小児

5人に1人が、眠るために酒や薬を使っている。

5人に1人眠るため酒や薬 ストレスと関連か

 成人のほぼ5人に1人が眠るために薬や酒を使うことがある-。厚生労働省が25日に公表した2007年国民健康・栄養調査の結果から、酒や薬の力を借りて眠る人が増えている傾向がうかがえた。

 厚労省は「ストレスが多いこととの関連が推測され、研究事業に力を入れる」としている。

 眠るために睡眠薬などの薬や酒を使うことがあるかどうかを聞いたところ、「ある」と答えたのは男性が22・2%、女性が17・4%。03年の初調査に比べ、男性が2・3ポイント、女性が1・7ポイントそれぞれ上昇。厚労省が策定した国民的な健康づくりの計画「健康日本21」で設定した目標「13%以下」を大幅に上回った。

 年代別では、男性が50代、女性が20-30代を除いて全世代で増加。男女とも70歳以上が最も割合が高く、40代も高い伸びだった。頻度の内訳では、男性が「常に」10・5%、「しばしば」3・3%、「時々」8・4%。女性が「常に」7・5%、「しばしば」2・4%、「時々」7・5%だった。

 ストレスについても聞いたところ、男性の57・9%、女性の63・9%が「ある」と答えた。



 ストレスって言葉を作った人はもはや天才だと思うんですけど、まさしくストレスの多い社会になってしまいました。そしてその弊害は数多く、中でも睡眠の質においては格段に低下していますね。

 生きているものとして、睡眠を満足に行えないというのはすごいことだと思います。まあでも、眠らせてくれない社会だからってのもあるでしょうね。無理やり合わせた結果、薬や酒に頼るようになってしまった、といったところでしょうか。

 酒はよくないと思いますけれど、薬で眠れるようになったのなら、それはそれでいいことだと思います。不眠をかかえたまま社会生活を送ることは並大抵のことではないですからね。いい波が来たときに、薬をやめられるのが一番なのでは。

医学処:不眠症に悩まされている人の割合が最も高いのは専業主婦
医学処:酒を飲んで眠り込むのは「睡眠」ではなく「意識消失」
医学処:学者の5人に1人が、リタリンなどを服用していた。
posted by さじ at 18:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 生理

弘前大学医学部の県定着枠、10人に増員する

県定着枠10人に 弘大医学部入試

 弘前大学は25日、2009年度の医学部医学科の一般選抜前期日程に新設された「県定着枠」の募集人員を5人増やし、10人としたと発表した。県定着枠での入学者は卒業後、弘大医学部関連施設で医師として働くことが求められる

 このほか、10年度入試について、〈1〉理工学部物理科学科の前期日程「理科」で物理、化学の選択制を物理必須とする〈2〉教育学部中学校教育専攻社会選修の推薦入試で小論文を新たに課す、など変更点も公表された。



 地方のこういった地域枠制度は、10年後を見越しての試みですからね。ここを選ばれる学生、ご家族は覚悟していただきたいと思います。

 非常に腹の立つことといえば、自治医科大学に進学したにもかかわらず、卒後に親がポンと何千万か支払って、子供を自由にするという選択です。もはや訳がわからない。

 地方での、医師不足を補うための制度なのですから、その信頼を裏切るようなことを、医師はしてはいけないと思うのです。

医学処:医学部全体に、僻地などへの地域勤務枠を設け、授業料を免除する
医学処:福島県立医大の推薦枠を倍にして、県外からも推薦受け入れを行う。
医学処:金沢大学が医学部の定員を増やすことに決定。
posted by さじ at 18:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | 大学

急性喉頭蓋炎で死亡した裁判で、原告逆転敗訴に。

ミス認めず患者逆転敗訴 横浜の救急医療施設

 横浜市救急医療センター(同市中区)で1999年、診察ミスが原因で全身にまひが残ったとして、当時4歳だった少年(14)と両親が約1億4000万円の損害賠償などを求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は26日、約1億円と月々の介護費用などの支払いを命じた1審判決を取り消し、原告逆転敗訴の判決を言い渡した

 1審横浜地裁判決は「担当医は気道閉塞を起こす恐れのある急性喉頭蓋炎に気付くべきだった」と医療ミスを認めたが、南敏文裁判長は「一般の小児科医の水準から、急性喉頭蓋炎発症の可能性を疑うべきだとはいえず、診察と後遺症の因果関係はない」と判断した。

 判決によると、少年は99年3月、のどの苦しさを訴えて受診。小児科医は薬を処方して帰宅させたが、翌日未明に一時呼吸停止となり、後遺症で全身まひになった。



 ご家族にとってはなんともやるせない判決かもしれません。ですが、第三者からみた視点で、現代の医療水準と照らし合わせても妥当とはいえなかったという判決ですので。。。

 こういう「事故」を機会に、現場の医師らはこういった可能性もあるということを念頭におく必要がありますね。頭の片隅にでもあれば、ふとした時に思い出して命を救うこともできるわけですから。

医学処:医療事故で家族を亡くした人と医師が対話をする。
医学処:割り箸死亡事故、医師に過失なしの無罪判決が出る
posted by さじ at 18:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小児

保険適用外の材料費を患者から寄付という形で募ることが禁止に。

診療時の寄付依頼廃止

 県立医大(福島市)が、大動脈瘤治療を受けた患者から、公的な医療保険が適用されない材料費を研究費名目の寄付金として受け取っていた問題で、同大の学内調査の結果が25日発表された。寄付は2004年度-08年度の5年間に、74人から計約2443万円にのぼった。同大は「寄付は任意で、混合診療にあたらない」と、国が原則禁止する混合診療に当たらないとの認識を改めて示したが、来年度からは、患者や家族に対し、医師が直接寄付を依頼してきたこれまでの方法を改める考えを明らかにした。

 新たに寄付が判明したのは、生体肝移植を行う外科学第一講座や、膵臓がんの免疫療法を行う内科学第二講座など4講座。同大によると、保険が適用されないウイルスの再発を抑制する薬剤や、がんを排除する力を強める細胞の培養の費用で、「患者のための最善の医療と判断したケースだった」としている。全体でみれば、保険適用外の治療を受けた患者のおよそ半数が、1回につき3万-163万円の寄付をしたという。

 同大は、保険適用外の治療を行った場合、これまで寄付の説明を診療時間内に行ってきたが、治療費を患者に請求している印象を与えかねないとして、来年度からは、すべての患者に対し、退院時に事務職員が行うことを明らかにした。一方で、寄付が減ると、保険適用外が多い最先端医療に影響が出るため、チラシを学内に張ったり、ホームページを充実させたりして寄付を募る方針

 同大で記者会見した丹羽真一副理事長は、今後も、法人などから例年寄せられる寄付金約4-5億円を充てるなどし、「患者にとって最善の治療は、(保険適用外であっても)可能な限り引き続き行っていく」と話した。

 一方、混合診療の疑いについて調べている東北厚生局は、今後も寄付台帳の確認や聞き取り調査を継続し、事実確認が終わり次第、厚生労働省と協議して何らかの判断をする方針。



 まあ混合診療になってしまうかどうかっていうのが問題なんでしょうけれども

 そもそもこういう治療は、患者にとって明らかに有益だから寄付という形にしてまで医者はやりたい、と思っているわけですからね。どういうことかというと、要するに役人の保険承認が遅すぎるのがいけないわけです。

 医者にとってはこんなリスクを踏みたくないわけですよね。患者さんにとって最良な医療を提供すると病院側が赤字になるというのはおかしな話ではないでしょうか。今の「福祉」って、病院側や医療者側が自己犠牲することで成り立っているにすぎないと思います。
posted by さじ at 17:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | 大学

勤務医、開業医が選ぶ2008年医療界のキーパーソンは

2008年の医療界のキーパーソンは誰だと思われますか?

 第1位は舛添要一厚生労働大臣。医療政策の舵を取る立場にあり、「安心と希望の医療確保ビジョン(舛添会議)」をはじめとする各種検討会の立ち上げとそれらへの自らの参加、また各地の医療現場の視察など、積極的な活動が評価されたものと考えられる。
 
 勤務医・開業医の回答の合算では、2位は4月に日本医師会会長に再選された唐澤祥人氏。3位は『医療崩壊』『医療の限界』などの著者である小松秀樹氏。臨床医の立場からの医療の現状への問題提起が、多くの医療者の支持を集めた。

 上位5人に入った顔ぶれは、順位差はあるものの、勤務医・開業医ともに共通する結果となった。

 一方、勤務医・開業医の回答の片方でのみ20位以内にランクインしたのは、勤務医では嘉山孝正氏(山形大学医学部長)、末松誠氏(慶應義塾大学医学部長)、樋口範雄氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授)、村上智彦氏(医療法人「夕張希望の杜」理事長)で、4人中3人が大学関係者だった。また、開業医では高原晶氏(長崎県諫早医師会会長)、原中勝征氏(茨城県医師会会長)などの地方医師会関係者が上げられたほか、「5分ルール」で注目を集めた原徳壽氏(前厚生労働省保険局医療課長)なども18位に入っている。

順位 勤務医

1 舛添要一氏(厚生労働大臣)
2 小松秀樹氏(虎の門病院泌尿器科部長)
3 唐澤祥人氏(日本医師会会長)
4 本田宏氏(済生会栗橋病院副院長)
5 高久史麿氏(日本医学会会長)
6 黒川衛氏(全国医師連盟代表)
7 土屋了介氏(国立がんセンター中央病院院長)
7 丹生裕子氏(「県立柏原病院の小児科を守る会」代表)
9 佐藤章氏(福島県立医科大学産婦人科教授)
9 池田康夫氏(日本専門医制評価・認定機構理事長、慶応大学内科教授)

11 嘉山孝正氏(山形大学医学部長)
12 清水孝雄氏(東京大学医学部長)
12 足立信也氏(民主党参議院議員)
14 村上智彦氏(医療法人「夕張希望の杜」理事長)
14 中原のり子氏(小児科医過労死裁判原告、故中原利郎氏の妻)
16 樋口範雄氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
16 山口徹氏(「医療関連死の調査分析に係る研究班」主任研究者、虎の門病院院長)
18 佐原康之氏(厚生労働省医政局総務課医療安全推進室長)
18 末松誠氏(慶應義塾大学医学部長)
18 権丈善一氏(慶應義塾大学商学部教授)


順位 開業医

1 舛添要一氏(厚生労働大臣)
2 唐澤祥人氏(日本医師会会長)
3 高久史麿氏(日本医学会会長)
4 本田宏氏(済生会栗橋病院副院長)
5 小松秀樹氏(虎の門病院泌尿器科部長)
6 黒川衛氏(全国医師連盟代表)
6 山口徹氏(「医療関連死の調査分析に係る研究班」主任研究者、虎の門病院院長)
8 西島英利氏(自民党参議院議員)
9 清水孝雄氏(東京大学医学部長)
9 土屋了介氏(国立がんセンター中央病院院長)
9 中原のり子氏(小児科医過労死裁判原告、故中原利郎氏の妻)

12 足立信也氏(民主党参議院議員)
12 権丈善一氏(慶應義塾大学商学部教授)
14 佐藤章氏(福島県立医科大学産婦人科教授)
14 高原晶氏(長崎県諫早医師会会長)
14 原中勝征氏(茨城県医師会会長)
17 亀田信介氏(亀田総合病院院長)
18 小川彰氏(全国医学部長病院長会議会長、岩手医科大学学長)
18 上昌広氏(東京大学医科学研究所准教授)
18 佐原康之氏(厚生労働省医政局総務課医療安全推進室長)
18 丹生裕子氏(「県立柏原病院の小児科を守る会」代表)
18 原徳壽氏(前厚生労働省保険局医療課長)



 大臣クラスは知ってはいても、一般人にしてみりゃ「誰?」って人がかなりいますね。病院長の名前とか、どこどこの教授とか。
posted by さじ at 05:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | NEWS

米科学誌が選ぶ今年の10大成果、第一位はiPS細胞研究。

iPS細胞研究が1位に 米科学誌が今年の10大成果

 米科学誌サイエンスは19日、今年の科学的進歩の10大成果を発表、第1位に山中伸弥京都大教授らが開発した万能細胞「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」の作製技術に関する研究を選んだ。

 対象となったのは「細胞の再プログラミング(初期化)」。難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の高齢患者の皮膚細胞から、iPS細胞をつくることに米ハーバード大などが成功した。

 同誌は「生物学の新分野を一夜にして切り開き、生命を救う医学的進歩という希望の光をもたらした」としている。

 10大成果には、細野秀雄東京工業大教授らが発見した鉄を主成分とする新タイプの高温超電導物質も挙げられた。昨年は、iPS細胞作製は2位だった。



 今年は、iPS細胞研究がらみが全部もっていった感じはありますね。

 世界中に衝撃を与え、2009年以降もますます加速するであろうiPS細胞ジャンル。しかも日本だけでなくアメリカや欧州など各地域でめざましい競争が始まっていますので、進歩にも期待できそう。

 もちろん、実際に臨床応用されて、患者さんの手元に届くのはまだ何年もかかるとは思いますが、新たな治療法として医学書が一新される可能性も秘めております。

医学処:がん化する危険のない、新世代iPS細胞誕生。
医学処:筋萎縮性側索硬化症の患者からiPS細胞を作ることに成功する。
医学処:iPS細胞を用いて未熟児脳症を治療する。
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開業医と勤務医が選んだ、2008年10大医療ニュースランキング

m3.com会員が選んだ、2008年10大ニュース

 2008年も残すところあとわずか。医師不足問題や救急医療、後期高齢者医療制度など、何らかの問題が起きるたびに、医療の話題が新聞やテレビで取り上げられた1年でした。

 では、医療者はこの1年をどう見ていたのでしょうか。

 m3.comは、医師会員を対象に「2008年の10大ニュース」についてアンケートを実施しました。

 勤務医・開業医ともに、第1位は「福島県立大野病院事件で担当医に無罪判決」。また、京都大学・山中伸弥氏らによるiPS細胞の研究、後期高齢者医療制度の創設なども共通して上位に入りました。

 10位までの結果は以下の通り。勤務医、開業医別に見た上位ランキングの傾向としては、勤務医では病院における医師不足、診療科縮小・休止問題や、「当直明け勤務」など勤務実態に関するもの、“コンビニ受診”対策として導入された「時間外特別徴収金」などが上位に。一方、開業医では外来管理加算の「5分ルール」導入や後期高齢者診療料の各地での届け出拒否など、診療報酬に関するものが注目を集めました。

【勤務医】

1位 福島県立大野病院事件で担当医に無罪判決
2位 iPS細胞の研究進む、京都大・山中氏らのグループを中心に
3位 杏林大の「割りばし事件」で担当医に無罪判決(11月)
4位 75歳以上への後期高齢者医療制度の創設、混乱で見直し議論(4月〜)
5位 医師不足に悩む地方の公立病院、診療科の休止、縮小が続く
6位 クレームや院内暴力を振るう“モンスター患者”が問題に
7位 「メタボ健診」スタート(4月〜)
8位 麻生首相発言:「医師は社会常識欠ける」「医療費なぜ払う」(11月)
9位 診療報酬改定:外来管理加算に「5分ルール」導入(4月〜)
10位 産科医不足で、分娩を中止する医療機関が相次ぐ、対策が急務に
10位 勤務医の長時間勤務、「当直明け、翌日勤務」も


【開業医】

1位 福島県立大野病院事件で担当医に無罪判決
2位 診療報酬改定:外来管理加算に「5分ルール」導入(4月〜)
3位 75歳以上への後期高齢者医療制度の創設、混乱で見直し議論(4月〜)
4位 iPS細胞の研究進む、京都大・山中氏らのグループを中心に
5位 「メタボ健診」スタート(4月〜)
6位 杏林大の「割りばし事件」で担当医に無罪判決(11月)
7位 麻生首相発言:「医師は社会常識欠ける」「医療費なぜ払う」(11月)
7位 医師不足に悩む地方の公立病院、診療科の休止、縮小が続く
9位 クレームや院内暴力を振るう“モンスター患者”が問題に
10位 産科医不足で、分娩を中止する医療機関が相次ぐ、対策が急務に



 やはり、福島大野病院事件が勤務医、開業医ともにトップ。それぐらい衝撃的な事件でしたし、憤慨せざるをえないような裁判でもありました。こうやって1人の医師の長い年月、キャリアを駄目にしてしまうような損失は、あってはならないことだと思います。

 あとは政治家と医者との距離感、司法と医療の線引きなどが中心になってきている気がします。

 医療関連ニュースのベスト10の中で、医学に関係するものが「iPS細胞」のみというのもすごい。それだけiPS細胞が注目されているということでもありますし、逆に、医学という学問外のことで悩まされるケースが増えてきているということでもあるのではないでしょうか。
posted by さじ at 02:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | NEWS

フィブリン糊によるC型肝炎感染の和解が難航している。

「フィブリン糊」和解難航、因果関係解明できず

 薬害C型肝炎訴訟で、心臓手術などで縫合用接着剤として使用された「フィブリン糊」で感染したとされる原告らの和解交渉が難航している。

 1月の被害者救済法施行後、血液製剤「フィブリノゲン」による感染で国と和解し、給付金を支給された原告は約600人に上るが、「糊」の原告は因果関係が不明との理由で交渉が進まず、薬害肝炎全国弁護団によると、和解できた原告は4人。約160人が和解できないままで、政府の掲げる「全員一律救済」から取り残されている。

 神奈川県内の男性(27)は、5歳の時に心臓手術を受けた直後に急性肝炎を発症し、現在、慢性肝炎の状態となっている。長い間、感染源は分からないままだったが、昨年末、薬害肝炎問題が報道で大きく取り上げられたことで手術を受けた病院に問い合わせ、「糊」の使用が分かった。

 今年4月に提訴したが、和解交渉は一向に進まない。医師からはインターフェロン治療を勧められているが、生活に余裕がなく、月数万円が必要となる治療に踏み切れないでいる

 男性は、「糊のおかげで命が助かったかも知れず、病院に恨みはない。ただ、糊以外に感染原因が見当たらない以上、国には早く救済してもらいたい」と話す。

 フィブリン糊は、フィブリノゲンに他の薬剤を調合して作られ、手術時などに縫合用接着剤として使われた。1980年代に約7万9000人に使用されたとされるが、止血剤として静脈注射で使われたフィブリノゲンとは違い、「糊」は傷口に塗る方法で使われており、国は「直接血管に注射しているわけではないので、感染率が不明」として、因果関係が明白な人を除き和解を留保している。

 厚生労働省は「来年3月をめどに科学的なデータを集め、和解に対する一定の目安を設けたい。因果関係が解明されれば、速やかに和解手続きに入りたい」としている。弁護団は微量の「糊」を使ったケースでも感染を確認しており、今月26日、訴訟が続いている東京、大阪、名古屋、福岡、仙台の5地裁に、「糊の危険は明らかで、一刻も早く和解を進めるべきだ」との要望書を提出した。



 おそらく和解されるのでしょうけれども。確かに傷口に塗るだけのフィブリン糊の場合、因果関係は証明しづらいですね。でも、因果関係が証明されなくとも和解すべき内容だと思うので。ここらへん微妙なところですけどね。じゃあ他の疾患についてはどうなんだと言われるとなんとも。薬害関係なので進みやすいってのもあるでしょうけど。

関連:フィブリン糊を使用しただけで、C型肝炎ウイルスに感染する
posted by さじ at 02:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 感染

軽症者の救急患者から時間外加算金を徴収する

救急外来「軽症者に加算金」拡大、夜間・休日医師の負担軽減

 緊急性がないのに夜間・休日に救急外来を受診する軽症患者から、全額自費の時間外加算金を徴収することを地方厚生局に届け出ている病院が、123施設に上ることが読売新聞の調査で分かった。

 制度は1992年に始まったが、最近5年間で76施設も増加。このうち最も多かった理由は軽症患者の抑制で、44施設と6割近くに上る。

 医師不足などで患者の「たらい回し」が相次いでいるほか、軽症患者が安易に病院に行く「コンビニ受診」が問題になっているが、勤務医の負担を軽減するための“自衛策”が広まりつつある。

 時間外加算金は、例外として保険適用外が認められた制度。医療機関は、管轄の地方厚生局に届け出れば、緊急性がないと判断した患者から徴収できる。

 本社が12月1日時点で調べた。過去5年間に届け出た病院の設定額は8400円〜300円。7施設は徴収を始めていない。

 夜間・休日の軽症患者の受け皿としては、地域の夜間診療所や当番医がある。時間外加算金を徴収している複数の病院によると、軽症患者が「病院の方が安心でき、夜だと待ち時間が短い」「当番医は毎日変わるので、分かりにくい」などとして、病院に来るという。

 最高額8400円を徴収しているのは、山形大医学部付属病院(山形市)。今年5月には840人いた時間外の患者は、徴収を始めた6月以降、毎月600人台に減少。一方で、このうち入院した重症患者は、5月の119人から128〜156人と増加した

 同大は「金額は、大学病院としての役割、医師の人件費などを勘案した。入院患者が増えたのは、医師に余力が生まれたからではないか」(医事課)としている。

 静岡県の志太榛原地域では、焼津市立総合病院など4自治体病院が、足並みをそろえて今年4〜6月にかけて導入。いずれの病院も時間外の受診者数が前年比で1〜3割減った。

 患者にすれば時間外加算金など、ない方がいい。それでも徴収する救急病院が急増している背景には、軽症にもかかわらず、夜間・休日に気軽に来院する“コンビニ受診”が、勤務医を疲弊させている事情がある。

 軽症患者が増えると、重症患者への診療に支障をきたしかねない。保険証一枚で自由に診療先を選べる「フリーアクセス」が認められているとはいえ、病院での専門的な治療を求めようとする軽症患者に、病院側が待ったをかけた格好だ。

 徴収を始めた病院では、時間外の患者が減る一方、重症患者が増加するなど、効果が出ている。目立ったトラブルもないが、緊急性や症状の軽重など徴収の条件を巡って、一部の患者から、戸惑いや不満の声も出ているという。



 ニュアンスのすごいと思うところはあれですかね、軽症患者の夜間のお金を多くするというのが、完全に「自制目的」で行われているという点でしょうか。

 利益がどうのこうの、ではなく、料金を高く設定することで「おいおいちょっと考えろよ。」と国民を抑制するためだけに生まれた制度。なんか生まれること自体が情けないっちゃ情けないですけどね。

 日本の医療は世界的に見ても高品質で安い。しかしそれを当たり前のように感じてしまっているのがまた。日本以外の、たとえば東南アジアとか、アフリカとか、アメリカなどに行ってみれば、いかに医療というものが金のかかるものか、わかるでしょう。

関連:「或る病院の一生」から、病院というものについて考える
posted by さじ at 02:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | 救急

2008年12月29日

第37回医療功労賞に酒井病院の精神科医、酒井保之さん

医療功労賞…精神科医酒井氏が受賞

 長年、地域医療に貢献してきた人に贈られる「第37回医療功労賞」(読売新聞社主催、厚生労働省など後援、エーザイ協賛)に、県内から天草市本町、医療法人啓正会「酒井病院」理事長で精神科医の酒井保之さん(66)が選ばれた。

 幼い頃から、父が開業していた精神科の診療所で患者と接する機会が多かった。その中で患者の優しさに触れ、「将来、力になりたい」と精神科医を志した

 診療所は1959年に「酒井病院」となり、酒井さんは75年から同病院に勤務している。「患者と触れ合うことが精神疾患への正しい理解につながる」を信条に、病院を開放するイベントを次々に企画。文化祭や体育祭のほか、夏祭りは約800人の住民でにぎわい、地域のイベントとして定着している。

 病院を開放した治療を行うには、病院職員の理解が欠かせない。「患者に何かあったら」と不安を感じる職員に対しては、「責任は私が取る」と根気強く説得した。約20年前には、日常的に住民と交流できるように体育館を建設。入院病棟の鉄格子も撤去した。

 こうした取り組みが、地域に開かれた精神科病院を築き上げたとして評価された。受賞について、「地域住民や関係者の支えのおかげ。私一人の力ではない」と謙虚に喜ぶ。

 今後は、訪問診療や気軽に悩み相談ができる環境を整え、より地域に根差した病院づくりを進める考え。天草郡市医師会長でもあり、深刻化する医師不足への対応にも力を注ぐ。

 酒井さんは「病院を開放することで、精神疾患への偏見をなくし、病気の再発防止にもつながる。これからも患者の立場に立った地域医療に率先して取り組みたい」と意欲を語った。



 立派ですねぇ。精神科の病院というのは、地域の住人との確執が出たりするものです。

 その地域の人とどう接していくか、という問題を、時間とアイディアで解決してしまった、と。

 日本ではいまだに精神科に対する偏見が強く残っています。地域でもいまだに、精神科の病院を設立するのに反対が起こる始末です。病院をよりオープンにするということは、患者のためにもなり、地域のかたがたに理解してもらうきっかけにもなります。

 こういう1つの病院をきっかけに、地域全体を変えることができるというのは、すごいことだと思います。

医学処:2008年度の慶應医学賞に京都大学の坂口志文教授ら
posted by さじ at 05:11 | Comment(1) | TrackBack(0) | 精神

サルモネラ菌に感染した豚をそのまま出荷してしまう

サルモネラ症の豚出荷=検査で「保留」札外れる−沖縄

 沖縄県は28日、県食肉センター(南城市)でサルモネラ菌の一種に感染した疑いのある豚1頭が、検査の手違いで県内に出荷されたと発表した。県は食肉として販売したスーパーに自主回収を依頼した。

 県によると、この豚は同センターで24日に処理された際、内臓検査でサルモネラ・コレラエスイスに感染している疑いが判明。職員が「保留」と書かれた札を掛けていた。

 しかし27日、この豚を含む約4.5トンの食肉が県内のスーパー向け出荷されていた。県は、検査の過程で札が外れ、そのまま出荷されたとみている。

 大部分は販売前に回収されたが、21店舗で計703パックが約500人に販売されていた



 こわ。

医学処:爬虫類ペットによる乳幼児のサルモネラ菌感染が相次ぐ
医学処:サルモネラ菌が宇宙にいくと毒性が増す
医学処:食中毒菌を3分で検出する手のひらサイズの装置を開発。
posted by さじ at 04:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 感染

有酸素運動をすると食欲抑制ホルモン「ペプチドYY」が分泌される

有酸素運動で食欲抑制ホルモン増=効率的ダイエットに期待−英大学

 ジョギングや水泳などの有酸素運動は、短距離走や重量挙げなどの無酸素運動に比べ、胃から分泌される食欲刺激ホルモン「グレリン」を減らすのは同じだが、腸管から分泌される食欲抑制ホルモン「ペプチドYY」をより増やすことが分かった。英ラフバラ大の研究チームが28日までに実験結果を米生理学会の専門誌電子版に発表した。

 有酸素運動は空腹感を一時的に抑える効果が高いことが知られるが、そのメカニズムの解明につながる成果。無酸素運動には筋肉を増やしてエネルギー消費を高める効果があり、研究が進めば、体重をコントロールするのにより効率的な運動法の開発が期待される



 へー。グレリンは有名ですが、食欲抑制ホルモン、ペプチドYY。これは流行しそうな予感です。

 確かに有酸素運動をした後は食欲どころじゃないですからねぇ。ペプチドYYの効果だったんですね。

 ペプチドYYを刺激する物質をみつけられれば、ダイエットに役立つかも。過食の治療にもつながる可能性もありますしね。
posted by さじ at 04:31 | Comment(2) | TrackBack(0) | 生理