妊婦受け入れ拒否、夫が再発防止訴え 東京都内で相次いで明らかになった、妊婦の受け入れ拒否。三鷹市の杏林病院から受け入れを拒否された妊婦の夫がインタビューにこたえ、「二度とこうしたことが起きてはならない」と訴えました。
先週金曜日。東京の都立墨東病院には、意識不明となっている妻を見舞う男性の姿がありました。
「心配ですし、会いたいので来てるんですけど。『うん』とか言ってくれればうれしいが、(返事は)まだない・・・」(搬送拒否された妊婦の夫)
出産を間近に控えた男性の妻(32)が、異変を訴えたのは9月23日午前0時過ぎ。突然、嘔吐や右半身が動かなくなるなどの症状が出たといいます。
「(妻の体の)右側が全部、動かないような感じになってきていた。(医師は)脳の障害の可能性があると言っていた」(搬送拒否された妊婦の夫)
入院していた調布市の飯野病院の医師は脳出血の疑いがあると判断、午前3時ごろ、三鷹市の杏林大学病院に救急搬送を要請しました。
しかし、
杏林大学病院は産科医が手術中だったことなどを理由に、受け入れを拒否。女性はその後、都内の5つの病院からも受け入れを断られ、4時間後、ようやくおよそ25キロも離れた都立墨東病院に搬送されました。
「(救急車の中では)早く着いてくれ、早く着いてくれと。体がなんとかもってくれと思っているだけでした。とにかく長く感じました。(病院に)着くまでは」(搬送拒否された妊婦の夫)
妻は病院で男の子を出産、その後、脳の手術を受けましたが、現在も意識が戻っていません。
「(妻に)一番最初に(息子を)抱かせてやりたかった。頑張った本人にはね」(搬送拒否された妊婦の夫)
今回のケースでは、最初に搬送を断った杏林大学病院側が「切迫感が伝わってこなかった」としているのに対し、飯野病院側は「脳障害であることは伝えており、切迫感は伝わっていた」と病院間での言い分が食い違っています。
また先月4日、墨東病院など都内の8つの病院に搬送を断られた36歳の妊婦が死亡したケースでも、病院の間で言い分が食い違っています。
病院同士の主張が食い違う今回の問題。舛添大臣はコミュニケーションがうまくいかない現状を、IT技術を駆使して解決できないかと、二階経済産業大臣と急遽、会談しました。
「お医者さん同士のコミュニケーションがうまくいっていない。IT技術を活用した形で、両省で協力しながら国民のためになる仕事をしたい」(舛添要一厚労相)
「政治の立場で申し上げるなら、
何よりも医者のモラルの問題だと思いますよ。忙しいだの、人が足りないだのというのは言い訳にすぎない」(
二階俊博経産相)
二階経産相も失言 「医者のモラルの問題」発言撤回 東京都内で脳内出血の妊婦が相次いで救急搬送を拒否された問題で、二階俊博経済産業相が「
医者のモラルの問題」と発言したことから、医師などの団体から抗議が相次いだ。二階経産相は13日、謝罪した上で発言を撤回した。
発言は10日、二階経産相が舛添要一厚生労働相とともに、病院の情報伝達システム開発を両省で強力して行うことを表明した際に飛び出した。
二階経産相は搬送拒否の問題に触れ、「医者のモラルの問題だ。
相当の決意を持ってなったのだろうから、忙しいだの、人が足りないだのということは言い訳に過ぎない」と、発言した。
これに対し、全国医師連盟が「産科救急の問題は、基本的に人員や施設の不足に起因」とした上で、「発言でモチベーションが下がり、さらに離職する産科医が増える」と抗議声明を発表。他にも2つの市民団体から抗議の声が挙がった。
13日の参院厚労委員会でも足立信也議員(民主)が発言の真意を質問したところ、二階経産相は「発言が医療に携わるみなさまに誤解を与えたことをおわび申し上げ、発言を撤回する」という回答を寄せた。
経産相発言は「責任転嫁」―日医 日本医師会の中川俊男常任理事は11月12日の定例記者会見で、二階俊博経済産業相が救急医療機関で妊婦の受け入れができない事例が相次いで明らかになっているのを受けて、「医者のモラルの問題」などと発言したとされる問題について、「
システム上の問題を医師のモラルの問題に責任転嫁するのは大問題だ」と非難した。
この中で、中川氏は「過酷な医療現場で疲弊している医師に対して、石を投げるようなもの。あまりにも現場を見ていないと言わざるを得ない」と経産相を厳しく批判。
救急医療機関で妊婦の受け入れができない事例が相次いでいることについては、「
小泉政権下から特に強まった医療費抑制政策の結果というシステム上の問題」との見方を示した。
まぁ失言を謝罪し、撤回したことに対して何か言うのもアレですけれど。
今回の失言は、まさにトップが、現場の医療を全く理解していないがために出てしまったものですよね。大学病院や大きな病院で働いている医師の多くは、二階経産相のおっしゃるとおり、「相当の決意をもってなった」でしょうし、自身の限界の限りを尽くしてやっています。
しかしですね、何事も限界はあるのです。その人が出しつくせるだけの全てを出して患者に向き合ったとしても、向き合えるのはただ一人だけで。二階経産相は、医師が忙しいということはご存知なのかもしれませんけれど、その「忙しい」というのは自分の忙しさと同等のように捉えているのかもしれませんね。人間、同じ形容詞を使っていても、その人その人によってニュアンスが異なりますから。
ただ、この杏林大の先生の「忙しい」は、日本の中でもトップクラスの忙しさであっただろうことは、想像に難くありません。