2008年06月22日

何故、一定の割合で左利きが生まれるのか。

左利き

 遠い昔、新石器時代に11人の男が狩猟に行った。 右側の茂みの中からイノシシが突然飛び出し、猟師たちに向かって突進してきた。 みんな驚いて慌てている間、猟師の中の一番左側にいた男が右側に向かって槍を投げた。 槍は命中してイノシシは倒れた。 彼は11人の猟師の中で唯一の左利きだった。

サッカーチームでも猟師の集団でも左利きが一人いればはるかに強くなる。 実際、左利きの割合は東西古今を問わず、全体人口の約8−12%を維持している。 狩猟時代のこうした利点が、左利きの比率を一定に維持するよう遺伝子が作用した、ということだ(Leonard Shlain著『自然の選択−Gyna Sapiens』)。

一対一の戦いで有利になるために左利きの比率が一定に維持されるという仮説もある。剣での戦いやボクシングなどのスポーツで、右利きの人は右利きの相手に対応して準備しているため、左利きの攻撃には弱いということだ。 英語で左側を意味する「sinistral」には「欺まん的な」という意味が込められているのも、こうした理由と考えられる。

文化的な偏見のため、左利きを無理に右利きに変えようとする社会も多かった。 利き手を変えるのも9歳までは70%程度の成功率に達するが、9歳以降は20%へと急激に落ちる

左利きに関する秘密は現代科学でも完全には解けていない。 左利きは遺伝することはするが、メンデルの遺伝法則には従わない。父母ともに左利きの場合でも、子どもが左利きになる比率は多くて50%だ。 父母ともに右利きの場合にも、子どもの2−10%は左利きとなる(マーティン・バイマン著『手が支配する世界』)。

左利きが右利きに比べて賢いかどうかも解けていない疑問だ。 左手の動きは右脳が支配するため、左利きは右脳が担当する視空間的な機能が発達している、という主張もある。 レオネルド・ダヴィンチやミケランジェロのように建築家や芸術家に左利きの割合が相対的に多いのもこのためだ、という説明だ。 半面、右利きは左脳が発達し、言語領域が優れているという。

今年11月に行われる米国大統領選挙に候補として出る共和党のジョン・マケイン上院議員と民主党のバラック・オバマ上院議員はともに左利きだ。 歴代米国大統領のうち16%が左利きと知らされている。 少数の左利きが経験する問題を克服してきたことが、高い成就度をもたらす原因という

最近はコンピューターゲームや戦闘機の操縦のように速い情報処理が必要な作業には左利きがよい、という研究結果もある。 脳の右側と左側の連結が速いためだという。 こうした点を考えると、21世紀にはあえて左利きを右利きに変える必要はなさそうだ。



 やはり生まれてきた時に左利きだった場合は、直さないほうがいいかもしれませんね。日本では偏見はそんなにないでしょうけれど、左利きだと不便な点というのは物凄くあると思うので、そこは社会が左利きにあわせるべきだと思いますが。(駅の改札が一番不便そう)

 右脳が優れている人と左脳が優れている人、どの職場に行っても、お互いに協力しあえば良い結果が生まれると思います。医者は左利きの割合が結構いると聞きますが、実際どうなんでしょうね。空間把握能力が優れていれば何かと便利そうです。

 そういえば卓球の水谷隼選手は、両親が戦略的なことを考えて右利きから左利きに矯正したとか。幸いにも若くして日本の頂点に上りつめたので、両親の目論みは成功したわけです。

関連
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posted by さじ at 01:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | 生理

虫歯菌だけを溶かす酵素を使った歯磨き粉やガム

虫歯菌溶かす酵素で新事業

 広島大発ベンチャー企業のツーセル(広島市南区)は、虫歯の原因菌(虫歯菌)だけを溶かす新発見の酵素を活用したビジネスに乗り出す。すでに世界10カ国で特許を申請。使用権を家庭用品や食品のメーカーに販売し、歯磨き粉やガムに混入して虫歯予防補助剤としての商品化につなげる。

 酵素は、広島大大学院医歯薬学総合研究科の菅井基行教授(細菌学)のグループが2004年、世界で初めて発見した

 口内にあるサリバリウス菌などの「善玉菌」を残したまま、ミュータンス菌などの虫歯菌だけを溶かす性質を持つ。菅井教授らは遺伝子情報も解明し、06年にツーセルへ販売・使用権を譲渡した。これまでの研究で、酵素入りの水を与えたラットは通常の水を飲ませたラットに比べ、口内の虫歯菌が激減。20分の1のレベルまで虫歯菌数が減り、完全に死滅したケースも確認したという。

 ツーセルは、酵素の使用権を販売して商品化してもらうビジネスモデルを想定し、日本や欧米など10カ国で特許を申請。今年1月、オーストラリアで初の特許を取得した。13年の商品化を目指している。



 おお、これ凄いかも。むしろこんなん出たら歯科医激減の可能性も?

 虫歯菌だけを溶かす技術。凄いなぁ。完全に死滅させることができるならば、その間に善玉菌が繁殖して、二度と虫歯菌の付け入るスキがないような状態にもできるのでは?(いわゆる「虫歯になりにくい歯」のような)

 でも商品化に相当時間がかかっているのは何ででしょうね。やはり酵素を使った食品だと作るのもそうとう難しくなってるんでしょうかね。

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posted by さじ at 00:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | 歯科

慢性疲労症候群の特徴について

慢性疲労症候群 体と心のバランス崩れ重症化

 「疲れ」は体の危険信号−。異常に長引く疲れをほっておくと、「慢性疲労症候群(CFS)」に陥る。長年、「疲労回復外来」を行ってきた東京都多摩北部医療センターの高橋孝・内科部長に聞いた。

 −−どんな病気なのか

 「およそ20年前から明らかになってきた病気。休みを取っても回復せず生活を著しく損なう疲れが6カ月以上続くと病気の可能性が高い。うつ症状との鑑別が難しいが、身体と心の両方のバランスが崩れて重症化する。厚生労働省の設定した基準もあり、他の原因が見当たらずに微熱やのどの痛み、筋肉痛、物忘れ・集中力低下などの自覚症状、および身体所見では、リンパ腺の腫れがなかなか引かないのが特徴だ

 −−その発症機序は

 「疲れがたまると、まず体の抵抗力(免疫系)が弱りリンパ系の異常をきたす。それが修復できないと今度は脳(神経系)に影響してくる。慢性的に脳にもストレスがかかり、ホルモン分泌もおかしくなる。そういう3つの相互作用から常に脳が“心の疲れ”を感じ内臓系にも影響する」

 −−疲労外来の経験では

 「中等・重症の方がほとんど。どこの病院でも異常なしといわれてドクターショッピングを重ねることになる。厚生労働省のアンケート調査では、3人中1人は6カ月以上の慢性疲労を訴えているという結果が出ているが、CFSはまだよく知られていない。好発年齢は、高齢者よりも若い人(15〜34歳)で仕事を休職するケースも多い。今後、進む一方のストレス社会では患者も増加するのでは。実は朝起きられず不登校になってしまった子供をよく調べたらCFSだったというケースもある」

 −−病気の原因は?

 「ちょっとした感染症が最初のきっかけだが、リンパ腺が何かの刺激を受け、普通はリンパ腺がが腫れても治療ですぐに引いてくるものだが、いつまでも腫れが引かない。前述のごとく免疫系・中枢神経系・ホルモン系の3つのバランスが大きく崩れて元に戻らなくなってしまったと考えられる」

 −−感染症というのは

 「ブルセラ菌という人と家畜共通の感染症があってよく似た症状を呈する。この研究は今でも進められているが、例えば、インフルエンザや溶連菌などの細菌も原因となることが知られている」

 −−回復、治療には

 「2年間病気だった人は、回復するのに2年かかる。メンタルな症状の強い人には、心理療法やカウンセリングを施し、運動療法や気力を高める漢方薬を勧める。それと予防もかねて、早寝早起き、3食しっかりとる食生活、日光浴など人の体内時計に合わせた自然な生活のリズムを取り戻すことが肝心。体の元気のもとであるペプチドや、疲労回復のマウス実験でも効果が明らかになったビール酵母エキスなどの健康食品も役立つ」



 今のところ病態機序がよくわかっていないだけで、実際には確実に何か起こっているんでしょうねぇ。ただ、うつ病との違いや、病気と定義してよいのかどうかといった点で、日本全国どこでも診断できるかというと、難しいでしょうねぇ。定義そのものも把握できている人は少ないと思いますし。

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posted by さじ at 00:35 | Comment(1) | TrackBack(0) | 内分

2008年06月19日

ハーバード大学が慢性骨髄性白血病の根治療法を開発する。

慢性骨髄性白血病、根治へ治療法を開発 ハーバード大

 慢性骨髄性白血病の根治につながる治療法を、米ハーバード大医学部の伊藤圭介研究員らが開発した。異常な白血病細胞をつくりだす骨髄中のがん幹細胞をなくし、再発を防ぐことにマウスで成功した。人間の細胞でも同様の効果を確認した。19日付の英科学誌ネイチャーに発表する。

 同大はこの治療法の臨床試験の開始を、すでに決めた。イタリア・トリノ大からも臨床試験の依頼を受け、日本でも計画しているという。

 現在の抗がん剤治療で使われる薬は、白血病細胞のような増殖能力が高い細胞を標的にしている。このため、白血病細胞は殺せるが、増殖をしていないことが多いがん幹細胞には効きにくかった

 伊藤さんらは、まず「PML」という遺伝子が、がん幹細胞を休止期の状態にしていることを発見。さらに亜ヒ酸を抗がん剤と一緒に投与すると、このPMLの働きが落ちて、がん幹細胞の増殖が盛んになり、抗がん剤の効き目があがることを突き止めた。

 慢性骨髄性白血病は、国内では10万人に1〜2人の割合で発症し、成人の白血病の約2割を占めるとされる。



 慢性骨髄性白血病。いわゆるCMLです。フィラデルフィア染色体、BCR-ABL遺伝子、そして治療薬のグリベッグ(イマチニブ)。

 グリベッグの登場により、かなり効果を挙げて来ましたが、今回のこの発見によって、より助かる人が増える可能性が。血液のがんと言われている白血病でも、根治することができるようになる、かも。

参考:慢性骨髄性白血病

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医学処:適合した途端に辞退する骨髄ドナーの存在意義
医学処:白血病の再発を防ぐための画期的治療法を開発
posted by さじ at 01:50 | Comment(1) | TrackBack(0) | がん

医学部の定員を増加させる方針へ転換するのが遅すぎる。

医学部の定員増へ、医師不足解消目指す…厚労省方針

 深刻化する医師不足の解消に向け、厚生労働省は、これまで四半世紀にわたり抑制してきた医師養成数を増加に転じさせる方針を固めた。

 今後10年程度の医師不足対策を示す「安心と希望の医療確保ビジョン」に盛り込み、近く発表する。

 大学医学部の総定員は現在、ピーク時(約8300人)の9割強の約7600人(暫定措置を含めると約7800人)。同省は、関係省庁との調整で、ピーク時まで戻すことについてはおおむね同意を得ており、今後、さらに上積みする可能性を模索する。

 ビジョンでは当初、増員の数値目標を掲げる方針だったが、80年代のピーク時の8300人でも不十分との見方もあるほか、財源問題の調整も残るため、今回は数値の明記は見送った。

 ビジョンには、2004年度に導入された新臨床研修制度の見直しも盛り込む。新制度は、新人医師が原則として自由に研修先を選べるため、都市部に医師が集中するなどの混乱が生じたとされる。



医師養成数、増加へ転換 医療危機受け厚労省方針

 医師不足問題を受けて将来の医療のあり方を検討していた厚生労働省は18日、「安心と希望の医療確保ビジョン」をまとめた。82年以降初めて、医師総数が不足しているとの見解をとり、医師養成数の抑制方針を転換。中長期的に医師を増やす方針を打ち出した。看護師など他職種との連携強化、救急医療の充実なども盛り込んだ。

 1月に検討会を設置した舛添厚労相はこの日、「これからの新しい医療体制の構築に向け、一つの方向付けができると確信している」と述べた。

 医学部定員は、84年の8280人をピークに89年に8千人を割り、07年は7625人(文部科学省調べ)。減少は、養成数抑制の方針を打ち出した82年の閣議決定のため。97年の閣議決定でも維持された。国は06年以降、「地元枠」などとして一部で定員を増やす緊急対策をとったが、「地域、診療科ごとの偏在や不足」との立場。将来は医師が過剰になるという推計を根拠に、恒久的な医師総数の増加には消極的だった。

 ビジョンでは「総数が不足しているとの認識の下で、対策を行う必要がある」とこれまでの姿勢を修正。抑制策をやめ、「医師養成数を増加させる」とした。具体的な人数は今後議論する。

 ただ、医師が一人前になるには入学から約10年は必要。当面の策として、看護師や助産師、薬剤師ら関係職種との役割分担を進める▽過重勤務せずに、子育てをしながら働ける労働環境を整備する▽診療科別の医師数を適正にする方策を検討する――などとした。

 また、地域内の医師数には限りがあるため、病院ごとに得意分野に集中して治療分担する必要があるとした。例えば重症患者の搬送先探しが問題となっている救急分野では、受け入れ調整役となる「管制塔病院」を整備。症状に応じて地域内の病院に振り分ける役割をもたせる。

 さらに、患者側の意識転換の必要性にも触れ、軽い症状で夜間休日に受診することが病院の負担を増している、と指摘。時間外受診の減少には、急な症状について診療必要度を相談できる電話相談窓口などの拡充が必要とした。



 普通こういうことって、あらかじめ予測して動くものじゃないんですかね?そのための国家公務員なんだと思いますけれど。医師不足だと昔から言われ続けてきたにもかかわらず「医者は飽和状態」とか訳のわからないことを言われ続けてきました。

 で、コレだ。正直今更感があります。今増やしても、この効果が出てくるのは何十年後のことなんでしょうか。

 あと、科ごとに確実に入れたいのならば、選択性ではなくて、「定員制度」を設ければ良いのではないでしょうか。

 1医局に新規で入れる人数を2人ぐらいにすれば、医学部の定員を増加したときに懸念される「眼科や皮膚科が増えるだけ」という状況を確実に抑えることができます。

 そして、希望の医局にいけるかどうかは、在学時の成績または国家試験の成績や研修後に何らかの形で評価して、優秀順でどうでしょう。

 全体のレベルアップと共に、確実な入局が可能になる、と。要するに昔に戻すわけですが。医師たるもの社会の状況も考慮して、社会に還元していかなければいけない職ですので、それくらいの規制は構わないと思いますけどね。

 興味のある科に行くのはいいんですけど、「楽したい」とかそういう理由で科を選んでしまうと、どうしても偏りが生じてしまいますからね。研修医の「やる気」を信じるのか、それとも現実を重視するのか、といった問題です。
posted by さじ at 01:39 | Comment(1) | TrackBack(0) | 大学

メラニンの移動を阻害する物質を発見。新たな美白の手法に。

コーセー、色素の移動阻害物質発見・シミ防止効果に期待

 コーセーは東北大大学院の福田光則教授と共同で、メラニン色素を含んだ小胞(メラノソーム)の細胞内での移動を阻害する物質を発見した。肌表面のシミなどのもととなる色素の移動を阻害することで、シミを防ぐ新たな美白の手法となる可能性がある。今後、肌などで効果を実証したうえで商品化を目指す。

 肌の奥にある色素生成細胞(メラノサイト)では紫外線などにより酵素が活性化し、メラノソーム内でシミのもととなるメラニン色素が生成される。メラノソームは細胞内を移動し細胞膜まで到達。メラノソームの中で生成されたメラニン色素が細胞膜から放出されて、肌表面の表皮細胞(ケラチノサイト)に受け渡されシミとなる。



 シミを根底から防げるかも?

 実際これ商品化されたら爆発的人気間違いなしですよね。世の女性のほとんどが買うのでは?

 そういえば昔いたガングロって今どんな肌してるんでしょうか。追跡調査してる人とかいないかなぁ。

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posted by さじ at 00:47 | Comment(1) | TrackBack(0) | 皮膚

2008年06月18日

腎臓病患者向けのカレー丼と中華丼を販売する。

日清サイエンス、腎臓病患者向けインスタント丼2種

 日清オイリオグループ子会社で食事療法に適した食品の開発・販売を手掛ける日清サイエンス(横浜市)は、食事制限がある腎臓病患者向け食品「レナケアー」シリーズの新製品、「茶わんでカレー丼」と「同中華丼」を16日に発売する。いずれも1食あたりのエネルギーは約100キロカロリー、タンパク質は約3グラム、塩分は1グラム以下に抑えた。

 カレー丼はかつおだしをベースにした和風味で、中華丼はごま油を使って風味豊かに仕上げた。フリーズドライ式で、お湯で戻してからごはんにかけるだけで食べられる。

 希望小売価格はいずれも200円。病院などを通じて販売する。



 想像した感じ、1食あたりの量は少ないんでしょうけれども、カレー丼や中華丼を食べられるのであれば、値段もお手ごろですしカロリー的にも問題ないものですね。

 食事に制限があるとどうしても生活に質というかハリがなくなってしまいますから、こういった『食』への工夫も、ひとつの医療の側面として発展していってほしいと思います。

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2008年06月17日

全店に栄養士を配置したドラッグストアが誕生する。

カワチ薬品、全店に栄養士配置 ドラッグストア大手で初

 ドラッグストア大手のカワチ薬品は3年内に約200の全店舗に栄養士を配置する。無料で来店客の健康相談に応じ、食事指導をする。栄養士の全店配置は大手で初めて。ドラッグストアはセルフ式を基本としてきたが、特定健診・特定保健指導の開始で食事に関心を持つ消費者が増える中、健康相談を売り物とした対面販売で客を囲い込む。ウエルシア関東なども栄養士の活用を始めており、同様の動きが業界に広がりそうだ。

 カワチ薬品は栃木県や茨城県など北関東を中心に約170店を展開しており、年間10店程度の出店を続ける計画だ。すでに100店に栄養士を1人ずつ配置しており、これを全店に拡大する。

 各店に平均2人配置している薬剤師と組み、生活習慣病や育児をテーマにしたセミナーや相談会を店内で開いて、幅広い年代の固定客を確保する。健康増進に配慮した食用油や飲料茶といった特定保健用食品など、特に単価・利益率の高い商品の拡販につなげる。



 おっ、これはなかなか。薬剤師と違って、栄養士と触れ合う機会って案外ないですからね。

 それでいて、栄養のことって薬のこと以上に分からなかったりしますからねぇ。薬は1対1対応の「効果」が明確であっても、栄養は幅広く、生活に浸透していますから。

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山形大学病院が産科医に分娩リスク手当てを支給する。

産科医に「分娩リスク手当」 山形大病院が創設

 山形大病院(山形市)は12日、分娩に従事する医師に対し、一律に特別手当を支払う「分娩リスク手当」を創設したことを明らかにした。医師の仕事への意欲を高めるのが狙いで、深刻化している産科医不足の解消につなげたい考えだ。

 急変などのリスクを伴い、医師の負担が大きい分娩については、東北でも夜間の出産時などに手当を上乗せする病院が出ているが、山形大病院によると、勤務時間の内外を問わず分娩業務に手当を支払うのは、大学病院としては東北で初めて、全国でも3例目という。

 山形県内では他地域と同様、過酷な勤務と不十分な待遇、訴訟のリスクが高いことなどを理由に産科医が減少している。最上や置賜地方では医師一人で年間200件以上の分娩を扱う病院もある。

 山形大病院の分娩件数は、過去3年間の平均で136件。件数は決して多くはないが、母親が合併症を発症したり、胎児に異状が確認されるなど、3次救急で危険性の高い分娩を扱っている。産科医や分娩に立ち会う小児科医の肉体的、精神的な負担はより大きいと判断し、手当を支給することにした。

 手当は一件の分娩業務につき2万円。2人の医師が携わる場合は各1万円、3人の場合は各7000円を支給する。一人当たり年間20万円ほどの収入になる見込みという。

 嘉山孝正医学部長は「金の問題ではなく、それぞれの仕事を認めることで、若い医師のやる気を引き出すことができる」と説明。倉智博久産婦人科診療科長は「県内では妊婦の受け入れ拒否の例はなく必死に頑張っているが、それにも限界がある。産科医を確保するためにも、県内全体の病院にこうした動きが広がってほしい」と話した。

 一方で同病院は、夜間や休日など時間外に診療を受ける患者のうち、緊急性がないと判断される患者から、特別料金(一人8400円)を今月1日から徴収していることも明らかにした。緊急の処置が必要ではない患者が時間外に訪れるケースが増え、急病や重症の入院患者の診療に支障が出ているためだという。



 大学病院だからなのか、かなり安いですね。まぁ大学病院は儲けなど度外視でやっているようなものなので、年20万Upは嬉しいかも。

 しかも大学病院の場合、他のところじゃできないような超ハイリスクな分娩にも立ち向かわなければいけないわけです。それでも訴訟リスクは負っているわけですから、ホント頭の下がる思いです。命を与えるのは神様かもしれませんが、命をこの世に生み出すためには彼らのような産科医が必死に頑張っているということを、忘れてはなりませんね。

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2008年06月16日

富士市立中央病院の産科に数年勤めれば開業時に1億の助成。

産科開業時に1億助成 富士市 市立病院勤務が条件

 富士市立中央病院産婦人科の派遣医引き揚げ方針を受け、医師確保に奔走する同市は13日までに、医師誘致の基盤整備の一環として、同病院の産婦人科に一定期間勤務した医師が市内に分娩取り扱い医院を開設する場合に、最高1億円を助成する制度を設ける構想を固めた。

 勤務医の確保で富士地域の産科拠点の維持を図るとともに、中期的に通常分娩を担う開業医を増やし、地域の産科医療体制の拡充を目指すのが狙い。市は関係者の理解を得ながら、16日開会の6月議会で条例案を提出するとみられる。

 制度は県内初。全国では補助規定などで制度を設ける先行例はあるが、条例化はまれ。

 制度は同病院産婦人科の勤務期間が2年以上から5年以上の医師を対象に、分娩を扱う医療機関を独立・開業する場合に、勤務期間に応じて1億―7000万円を開設資金として助成する。5年の時限条例を構想している。

 市は、医師派遣元の東京慈恵会医科大に医師確保の協力要請を続けるとともに、市出身者などつてをたどって医師誘致に飛び回っている。現在の産婦人科部長はハイリスクや救急対応が継続できる現行4人体制の維持を条件に残留意思を示しているが、残る3人の確保はめどが立っていない。

 市は医師の確保活動の中で、病院内の環境整備とともに、独立・開業に至る将来への環境を整えることが勤務地選択の材料になりえると判断。病院産科医の分娩手当の新設に追加して、助成制度を構想したとみられる。

 人口24万人の同市で、分娩を扱う開業医は現在3院。病院産婦人科の閉鎖危機は、通常お産にも大きな影響が懸念されている。開業医の高齢化が進めば、分娩取り扱い機関がさらに減少する恐れもあり、開業医院の確保も望まれている。市の構想では、病院勤務を経ずに市内に分娩取り扱い医院を開業する場合にも、5000万円程度の助成制度を盛り込む方針。



 なかなかいい案・・・ですけど市側の負担もなかなかですね。それでも背に腹は変えられないというところなのでしょう・・・。無理解な国や役人、そして訳のわからない文句をつける一般人が招いた種が、こういうところで芽を出し、結果的に末端が苦しむわけです。

 しかし果たしてこの案を提示されて来る産婦人科医がいるのかどうか。そういうレベルで、不足しているんですよね、実際。

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遺伝子を注入するだけでβ細胞を作り出す技術。

遺伝子3種類で「インスリン」細胞を作り出す

 膵臓に3種類の遺伝子を入れるだけで、血糖値を下げるインスリンを分泌するベータ細胞を作り出すことに、米ハーバード大のダグラス・メルトン教授らのグループがマウスの実験で成功した。

 11日、当地で始まった国際幹細胞研究学会で発表した。様々な組織の細胞に変化する胚性幹細胞(ES細胞)や新型万能細胞(iPS細胞)を使わずに簡単につくることができ、ベータ細胞が破壊され、インスリンを作れない1型糖尿病の治療への応用が期待される。

 メルトン教授らは、遺伝子操作でベータ細胞を作れないようにしたマウスの膵臓に、ウイルスを運び役にして膵臓に関連した遺伝子を注入。1100種類を試し、受精卵から膵臓ができる過程で働いている3遺伝子がベータ細胞を効率よく作るのに欠かせないことを突き止めた。

 この3遺伝子を入れた2割のマウスで、膵臓の95%を占める外分泌細胞の一部が、ベータ細胞と極めて似た細胞に変わった。インスリンが分泌され、血糖値が下がるのも確認された。直接、ベータ細胞の状態に変わったとみられる。

 1型糖尿病患者は、インスリンを注射するしか血糖値を調節できないため、ベータ細胞をES細胞やiPS細胞などから作製する研究が世界中で行われている。メルトン教授は、「狙った細胞を体内の狙った場所に作れることが分かった。とてもミラクル。神経や肝臓細胞などにも応用できるのでは」と話している。



 ES細胞やiPS細胞すら使わず、ただ3種類の遺伝子を注入するだけでβ細胞が出来上がるとは…。うーん、すごいですね。

 画期的な治療法ですけど、遺伝子を注入する以上、何かの副作用がありそうな予感も。できるβ細胞の量とか、個人差がありそうですしね。

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医学処:膵臓のβ細胞の元になる幹細胞を発見する
医学処:糖尿病についてのまとめ
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2008年06月15日

秋葉原通り魔事件で救急トリアージは成功したのか。

惨劇のアキバ、救命最前線は…搬送順位、迫られた選別

 わずか5分の間に17人もの死傷者を出した東京・秋葉原の無差別殺傷事件には、東京消防庁の救急隊20隊に加え、複数の医療チームが初めて同時出動した。混乱する現場で迅速、適切に対応できたのか。

 発生直後に現場に居合わせた医師は、「横たわっている人のうち少なくとも2人は、既に心肺停止状態だった」と、当時の惨劇を振り返る。傷は深く、一目で肝臓などに達しているとみられるケースもあった。

 まさに“戦場”の中で、現場に先着した救急隊員らは、患者の負傷の程度によって搬送の優先順位を決める「トリアージ」を迫られた。トリアージとは「選別」の意味で、助かる可能性のある患者を優先的に搬送する行為だ

 「亡くなった方には気の毒だが、トリアージは機能したのでは」と語るのは、救急医療が専門の山本保博・東京臨海病院院長(66)。死亡した7人の搬送先を見ると、すべて1病院1人ずつになっており、山本院長は「1人の重篤者が搬入されるだけで多くの救急スタッフがかかり切りになる。トリアージの精度が高く、分散搬送ができたのではないか」とみている。

 重篤状態で搬送された男性(54)は、一命を取り留め、呼びかけに反応するまでに回復した。

 今回、災害以外では初めて複数のチームが投入された「DMAT(災害医療支援チーム)」も「比較的連携がスムーズにいった」(石原哲・白鬚橋病院長)との声もある。

 今回の事件では日本医科大付属病院(文京区)、白鬚橋病院(墨田区)、都立広尾病院(渋谷区)、東京医科大付属病院(新宿区)の4病院の4チームに出動要請がかかった。一番早く現場に着いたのは日医大のチームで、東京消防庁の要請から12分後。次いで東京医大が16分だった。

 昨年4月から12月の都内の平均DMAT到着時間は21分。事件発生が、交通量の少ない休日で、駆けつけやすい都心部だったとはいえ、平均よりかなり早かったといえる。一方で、都立広尾病院は28分、白鬚橋病院は30分かかった。

 一般人も救急活動に参加した。DMATの一員、日本医科大の横堀将司医師(33)は、「心臓マッサージや止血などの知識が広範囲に伝わっているのを実感した」と振り返る。

 DMAT(Disaster Medical Assistance Team)

 災害現場に駆けつけ、現場で救命措置を行う医師や看護師らのチーム。2004年8月に東京都が全国で初めて設置した。都内では現在17の指定病院に約550人がいる。これまで04年10月の新潟県中越地震や、07年6月の渋谷の温泉施設の爆発事故などに出動している。

現場で救助なら血液感染に注意
 
 今回の事件では、群衆が携帯電話のカメラで現場を撮影する場面がある一方、救命措置に積極的に協力する市民の姿も目立った。だが、被害者の一人がB型肝炎ウイルスの感染者だったことが判明し、救助にあたった人に感染の不安も出ている。同じような場面に出くわした時、どう対応すべきか――。

 「救助の際、血にはなるべく触れないで」とアドバイスするのは奥村徹・佐賀大学医学部教授(救急・災害医学)。B型肝炎は血液を通じて感染する病気で、C型肝炎より感染力が強い。ただ、「救助する人が手などに傷を負っていなければ、それほど心配する必要はない」とも。あればゴム手袋、なければスーパーの買い物袋で手を覆うだけでも感染防止に有効だ。

 救助のポイントは、「脳に血液を送り続けること」。負傷者が出血していても基本は同じだ。

 意識や呼吸がない場合は、人工呼吸や心臓マッサージが必要。心臓マッサージは、硬い床の上で、あおむけの負傷者の胸に両手を重ねて置き、両ひじを伸ばしたまま垂直に体重をかけて行う。心臓マッサージだけでも十分効果的だという。(十時武士)

 おおむね評価が高かった今回の救助活動だが、課題も残った。

 現場では止まった心臓に電気ショックを与える自動体外式除細動器(AED)も利用されたが、横堀医師によると、現場付近で見つからず、約200メートル離れたJR秋葉原駅付近まで走って取ってきてもらったケースもあったという。

 千代田区によると、AEDが街のどこに、どれだけ設置されているのか全体像はわからないのが実情だという。区が秋葉原地区で把握しているのは区の出張所と図書館、警視庁万世橋署の3か所だけ。地元の秋葉原電気街振興会も「個々の店で設置しているかもしれないが、詳細は知らない」という。

 秋葉原電気街振興会では2年前、通り魔などを想定して危険な目にあった子供などが駆け込める「110番の家」設置を検討したことがある。近年、オタク文化の発信地として知名度があがるにつれ、事件発生が増えるなど治安への不安が出てきたためだ。ところが、「追いかけてきた不審者に店員が襲われてケガをしたらどうするか」と制度導入に慎重な声も多く、実現できなかったという。

 大手家電量販店やアニメやゲームソフトを扱う店、飲食店などが増え、加盟率が「全体の5割以下」(同振興会)に落ち込んでいることも、地域ぐるみの取り組みを難しくしているという。



 わずか12分とは。さすがですね。見事なまでにトリアージが成功した点も、早期に導入した点も、評価できることだと思います。

 現場では市民が救命処置を行っていました。日本はほかの国より平和とはいえ、こういった事件や事故には誰でも遭遇する可能性を持っています。そのため、救命処置のマスターだけでなく、さらに一歩進んだ知識(血液に触れないようにするなど)の自己防衛の知識をも身につけてほしいと思います。その場に居合わせた人の力で、人は救われるのです。わずか12分といえどその間になにもしなければ、間違いなく亡くなっていたでしょうね。

 あとは秋葉原の街がどのように変わっていくのか、どうか。地域ぐるみの付き合いをしろとは強要しませんが、少なくとも街を担う一角である以上、AED設置や、事件発生時の対策などは一緒に話し合うべきだと思います。欲望を吐き出すだけの街で終わってもらいたくはないですね。

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posted by さじ at 23:06 | Comment(3) | TrackBack(1) | 救急

東大の吉川洋教授が医療費抑制には限界があると主張。

吉川洋・東大教授が講演「医療費抑制に限界との認識」

 政府の社会保障国民会議座長の吉川洋東大教授は13日、東京・大手町の経団連会館で開かれた読売国際経済懇話会(YIES)で講演し、医療費について「とにかく抑えるというのは正解ではない」と述べ、医療技術が進歩し、高額化する中で、医療費抑制には限界があるとの認識を示した。

 同時に、医療財政安定化のため、医療給付のあり方を検討する必要性を指摘。年金制度に関しては、「(給付水準を自動的に引き下げる)マクロ経済スライドが2004年改正で導入され、持続可能性が高まった」と評価した。

 また、政府・与党が改善策を決定した後期高齢者医療制度については「情緒的な議論が多く、残念だ。冷静に建設的に議論する必要がある」と述べた。

 吉川氏は社会保障制度改革全体の議論について「社会保障機能を強化する必要があり、財源を議論しないといけない」と強調した。



 有識者は皆、「医療費を抑制するのは正しいことではない」と言いますね。その裏の意味は「別の、無駄な公共事業費とかから捻出すべきだ」ということではないでしょうか。

 日本って戦争に負けて、民主主義になって、元々技術力とか応用力とかあったためにここまで大きく成長しましたけれど、急速に民主化したために政治についてはまだまだ未発達なんじゃないでしょうか。民意が反映されていないといいますか、結局自分の懐のことしか考えていない人によって国が動かされているような気がします。

 なんでもタクシー券の利用額が、1000分の1になったとか。問題が露呈した月だからというのもあるでしょうけれど、「やればできるんじゃん」という印象しかありませんね。

 例えば役人の給料を今の1.5倍にするかわりに、国のために献身的に働けといったらどうなんでしょうかね。というか国のために働いている人の給料(給料とは言わないんでしょうけれど)を下げろとかいう気持ちは毛頭なくって、天下りとか利権とかに関係なく動いてもらえるんだったら今の1.5倍ぐらいもらってもいいと思います。

 まぁそんなことは難しいんでしょうけれども…。最近多くの有識者が「このままだと医療はヤバイ」と言っています。今までもやばったのに、あえて露骨に言い出すってことは、本当に終息してしまうかもしれませんねぇ。危機感をもたず、自分の貯金額だけ増やすような人が大勢いるってのが哀しいことですが。

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posted by さじ at 21:33 | Comment(1) | TrackBack(0) | NEWS

2008年06月14日

副腎白質ジストロフィー「ロレンツォのオイル」モデル男性が死去

「ロレンツォのオイル」モデル男性が死去

 AP電によると、米映画「ロレンツォのオイル」のモデルとなった男性、ロレンツォ・オドーネ氏が30日、肺疾患のため米南部バージニア州の自宅で死去。30歳。父親のオーグスト氏が明かした。

 6歳の時に難病の副腎白質ジストロフィー(ALD)にかかり、医師から2年以内に死亡するとの宣告を受けたが、両親が自力でオリーブ油などによる治療に効果があることを発見。実話を基に映画「ロレンツォのオイル命の詩」(92年)がつくられ、世界中に感動を与えた。



 ロレンツォのオイル。懐かしいなぁ。もう16年も前の映画なんですね。

 あらすじとしては「副腎白質ジストロフィーになった息子を救うために、何も医学的知識のない素人の両親が、論文や学術書を読み漁り、なんと副腎白質ジストロフィーに効果のある特効薬を突き止めることに成功した」という、ウソのような実話を元に作られています。

 副腎白質ジストロフィーに効果のある、菜種油とオリーブオイルの主成分を抽出し、「ロレンツォのオイル」と名づけました。

 ロレンツォ自身は、投与されるのが遅かったため、症状が回復することはありませんでしたが、2年しか生きられないといわれていたにもかかわらず、30歳まで生きるという効果。しかもロレンツォのオイルを投与された他の副腎白質ジストロフィーの患者は命を救われ、元気に遊べるようになったとか(映画のエンドロールで実際に命を救われた人たちが登場しますが、まさに感動ものです)

 あー、書いてたらまた観たくなりましたね。十数年ぶりに。

参考:ロレンツォのオイル
posted by さじ at 20:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

東大病院が緑内障の手術で左右の目を取り違える。

緑内障手術、東大病院で左目と右目取り違える

 東京大医学部付属病院(東京都文京区)は11日、70歳代の男性患者の緑内障手術で、左目と右目を間違えるミスがあったと発表した。

 同病院によると、ミスがあったのは今月6日。医師が手術予定の左目を消毒した後間違って左目を布で覆い、右目のみを露出させていたため、執刀医が右目を手術したという。

 手術する目を間違えないように、男性患者の左のこめかみには印がつけられていたが、執刀医は印を確認しなかった

 7日朝になって、家族が申し出てミスが発覚。執刀医が謝罪し、同日中に左目の手術を行ったという。

 男性患者は左右両目が末期緑内障で、同病院では、「右目も手術の必要性はあった」としながらも、右目は未消毒で手術が行われたことから、感染症の危険性もあるとして、抗生剤を注射するなど対応をとった。

 同病院では現在、調査委員会を設置し、原因究明を進めており、服部雄幸総務課長は「大変申し訳なかった。病院をあげて再発予防策をとっていきたい」としている。



 こういうミスもあるんですねぇ…。左右を確認してはいても、消毒したほうを覆ってしまうというウッカリミス。ミスの防止はしてあっても、ミスをしてしまう、というのはまぁ考えられる話ですから、更に上乗せしてミス防止のための策を講じてほしいものです。

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posted by さじ at 14:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 眼科

多発性硬化症はNR4A2という遺伝子を抑制すれば症状が軽快する。

多発性硬化症の治療薬に道 発症の仕組み解明

 中枢神経の一部が炎症を起こし、視覚や運動などさまざまな障害が出る難病「多発性硬化症」は、特定の遺伝子の働きが高まることで炎症を起こす物質が放出されて発症するという仕組みを国立精神・神経センター神経研究所の山村隆部長らが解明、9日付の米科学アカデミー紀要(電子版)に発表した。

 この遺伝子を標的にすれば、病気の進行を抑える薬の開発につながるという。

 多発性硬化症は免疫機能の異常で、脳や脊髄の神経細胞を結ぶ細長い軸索を取り巻く「さや」の部分に炎症が起きて発症。リンパ球の一種、T細胞が中枢神経に入り、さやを攻撃することが原因とされるが、詳しい仕組みは不明だった。

 山村部長らは、多発性硬化症の患者で働きが活発になっている「NR4A2」という遺伝子に注目。マウス実験などで、この遺伝子がつくるタンパク質が、炎症を引き起こすサイトカインという物質の分泌に関与していることを突き止めた。

 この遺伝子の働きを弱めるとサイトカインの分泌が減り、病気のモデルマウスの症状が軽くなった。



 最近、人の「病気」に特異的な遺伝子などが色々と見つかっていますね。

 しかもその遺伝子を抑制すれば症状が軽減するという・・・。神経の疾患って、最も患者の生活力というか、自立力を奪うものだと思うので、こういった研究は是非とも臨床に体現していただきたいものです。吉報を。

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posted by さじ at 03:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

宮崎大学病院が順調に黒字経営を続けているらしい。

サービス向上し増益 宮崎大医学部付属病院

 全国各地の大学病院の3分の2が赤字にあえぐ中、宮崎大医学部付属病院(清武町、高崎眞弓病院長)が堅調に黒字経営を続けている。同大学が法人化され4年目を迎え、電話対応や入院患者案内などを担当する病棟クラーク(医療秘書)を新設したり宮崎市中心部へ診療所を開設したりと、さまざまな改革で効果を上げている。

 13人の病棟クラークは、医師や看護師の負担を軽くするため、2005年からベッド搬送係とともに配置した。カルテの準備や電話応対、入院患者の案内など、それまで医師や看護師が業務の合間にこなしていた仕事を引き受けている。医療秘書の資格を生かし、患者からの保険相談にも応じている。

 敷地外にも広げた患者サービスは歯科口腔外科。同病院の交通の便の悪さをカバーしようと、昨年12月下旬、同市橘通西3丁目のボンベルタ橘8階にクリニックを開設した。

 かかりつけ医の紹介状が必要だが、午後7時までと診療時間が長く、最新医療設備で口腔手術も受けることができ評判は上々。同大学の迫田隅男教授(歯科口腔外科)は「長年頭打ちだった外来患者の数が約2倍に増えた」と手応えを語る。



 ほう。

 宮崎大学っていうと、確かちょっと不思議な入試方法だったような気が。

 しかし大学病院で黒字経営は凄いですね。まぁ赤字の大学病院が「頑張ってない」かというと、そういうわけでもなくて、患者のこと中心で医療を行っていたらどうしても赤字になってしまうシステムで日本の医療は運営されとるのですから、仕方ないことです。

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posted by さじ at 02:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 大学

2008年06月13日

金沢大学が医学部の定員を増やすことに決定。

金沢大:医学類、09年度から定員5人増 学長が知事に報告

 深刻な医師不足を解消しようと、県が金沢大に要請した医学類(医学部)の定員増加について、同大学は5人増を決め、中村信一学長ら4人が9日、谷本正憲知事に報告した。

 国が各都道府県で医学生を増やすことを決めたことなどから、県は今年2月、同大学に上限の5人の定員増を要請。09年度の入学からの定員枠増が決まった。県内では能登北部が深刻で、02〜06年の厚生労働省の医師数調査では121〜111人で推移している。谷本知事は「地域医療のリーダーを育てる気概で。県も協力する」と述べた。



 金沢とか結構深刻そうですもんね、医師不足。金沢大学は順調ですが、私立の金沢医科大学などは毎年医師国家試験合格率も悪いですし、ここはひとつ金沢大学で優秀な医師を育て上げる方向で頑張ってもらえれば・・・!

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posted by さじ at 01:16 | Comment(1) | TrackBack(0) | 大学

「医師不足と深刻化する地域医療崩壊」を話し合う。

医師不足の現状知って!甲府で集い400人が参加

 医師不足の現状を認識してもらうことを目的とした「医師を増やし、地域医療を守ろう!6・7県民のつどい」が7日、甲府市内で開かれ、医師や医学部生、県職員ら約400人が参加した。

 県内の医療関係者や自治体首長らで作る準備会が主催。つどいでは、済生会栗橋病院(埼玉県)の本田宏副院長が「医師不足と深刻化する地域医療崩壊」と題した講演を行った。本田氏は、「日本の医療費は先進国で最も安いレベルで、質の高い医療が提供できていない」と国の医療政策を批判するとともに、医療に係る予算拡大を要求。さらに「勤務医は32時間連続で勤務するなど過重労働を余儀なくされている」として、医学部の定員増などで、医師不足を解消する必要性を訴えた

 また、山梨大医学部の学生は、学内で行った進路希望のアンケート結果を公表した。産婦人科と外科では「希望しない」が「希望する」を上回り、「厳しい労働環境を実習で目の当たりにするからだろう」と分析している。参加した医師らは県医務課の担当者に対して、「勤務医の過酷な労働環境を把握し、勤務医の減少を食い止めて欲しい」「県内の医師について年齢層別に、数や平均労働時間について調査して欲しい」などと要望した。



 山梨Good Job。医学生もやる気があっていいですねぇ。

 確かに産婦人科や外科は底抜けに忙しい。正直お金を稼ぎたいだけならもっといい職など腐るほどあります。

 しかし職場には、とてつもないほどの「やり甲斐」があります。もうここだけですね。この1点のみ、ですが、人が生きて死んでいく過程で、やり甲斐のある仕事をして人生を真っ当できたら、これほど幸せなことはないとも思います。

 確かに実習であまりの過酷さに「駄目だ」と思ってしまう学生も多いかと思いますが、その反面、「非常に面白い科だ」「自分もできることならやってみたい」と思った学生も多いんじゃないでしょうか。

 興味をもった若い芽を育てるためにも、労働環境の整備をお願いしたいところですね。

 医学生を1.5倍にするという案が一番「現実的」ですけれど、医学生1人あたりに何千万という補助金が国から出るわけですからね。国としてもお金使いたくない一心なのではないでしょうか。変な保養施設とか道路とか作るぐらいなら、医学生に『投資』したほうが国の将来のためだと私は思いますけどね。
posted by さじ at 01:03 | Comment(1) | TrackBack(0) | 大学

2008年06月12日

防衛医科大医学部五年生を強盗教唆容疑で逮捕する。

防衛医大生を逮捕=裏サイトで募集、教唆

 東京都台東区上野の貴金属店でネックレスなどが奪われた事件で、警視庁捜査1課は4日、強盗教唆容疑で、埼玉県所沢市並木、防衛医科大医学科5年容疑者(23)を逮捕し、強盗容疑で、首謀格の住所不詳、無職O容疑者(44)を指名手配した。

 同日までに、質店などに強奪品を売ったとして、盗品等処分あっせん容疑で、千葉県野田市山崎、介護助手O容疑者(41)も逮捕した。

 調べによると、S容疑者は3月27日午後、中央区の喫茶店で、携帯電話の裏サイトを見て応募した実行役として逮捕された男に「仲間を探している。報酬は300万円」と持ち掛け、強盗を教唆した疑い。容疑を否認しているという。

 O容疑者らは同月28日午後3時50分ごろ、貴金属店で、刃物で店員を脅迫し、計1300万円相当のネックレスなどを奪った疑い。



 国試合格率は高く、更に体力・頭脳ともに優秀な防衛医大の5年生ですよ。あと2年もすれば晴れて医者になれるというのに。たかだか1300万円ごときで逮捕。退学でしょうねぇ。

 アホですな〜。自分がそういう身分だということを自覚していないのでしょうか。確か防衛医大って、学生ではなく「国家公務員」扱いなんですよね。だから勉強しながらでも給料(給料とは言わないけど)が出る。しかも衣食住完備。まぁ防衛大っぽく訓練もやるみたいですけれど、それでも6年間学んで医者になれるのですから、ありがたい限りですよね。

 しかしそのエリートコースを蹴り、わざわざ1300万円ごときで自分の人生を破滅へと導くあたり、鈴木裕三容疑者は何を考えてるんだからホントわかりませんね。

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posted by さじ at 22:47 | Comment(1) | TrackBack(0) | 大学